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経営革新の新潮流 フレデリック・ラルーが提唱するティール組織

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前回のブログで記したように「Reinventing Organizations」と世界の大きな潮流について簡単に書いてみたい。

組織を再発明する意の「Reinventing Organizations: A Guide to Creating Organizations Inspired by the Next Stage of Human Consciousness」なるタイトルの書籍を2014年に出版した著者フレデリック・ラルー Frederic Laloux は、その新たな組織・経営論とともに世界の注目を集めている。

ラルーらは、年に二度ギリシアのロードス島でNEXT STAGE WORLDなる数日のプログラムを開いており、THE GLOBAL GATHERING FOR NEXT-STAGE LEADERSHIP AND PRACTICEと言うように、世界から組織・経営のイノベーターが集まっている。For practitioners and teams inspired by Teal: transforming themselves, their work, their organizationなる副題が示すように、「ティール」という新たな組織概念を志向する人たちだ。

ティール=Tealとは青緑色のこと。以下の組織パラダイムのチャートのように、組織のあり方は進化を続けており、既存組織の多くはOrangeやAmber にとどまっているが、一部はGreenに進化しており、さらに最近見られる予兆としてTealをこれからの組織増として提唱している。

Human-Development-Reinventing-Organizations-chart-800x539.png (1).png
Source

現在の組織をRedからTealまで5つに区分したのが下の図。
Red赤色 狼、力と恐れ、短期志向 マフィアやギャング
Amberこはく色 階層、安定、コントロール、形式、手続き 政府、協会、公立校
Orangeオレンジ マシーン、競争、利益、イノベーション、責任 大企業
Green緑色 顧客の喜び、価値観、企業文化、エンパワーメント 例)サウスウエスト航空、ベン&ジェリー
Teal青緑色 崇高な目的、意思決定の分散、個人の全体性、自己管理、進化を続ける目的 例)パタゴニア、モーニングスター

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Image source: Lean and Agile Adoption with the Laloux Culture Model by Peter Green

ほとんどの企業組織はOrange、そして一部はAmberにとどまっている。先進的な企業は、Greenであり、数限られた革新的な企業がTealと認められる。また、GreenとTealには、AgileとLeanの性格が加わる。前回のブログで取り上げたザッポス(米トップのオンライン靴小売)は、GreenからTealに進化途上と言えよう。

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これらの簡潔な解説動画(8分)を以下に(上の図もそこから)

Lean and Agile Adoption with the Laloux Culture Model from Agile For All on Vimeo.

では、どうずれば Teal Organization ティール組織を実現できるのか?

フレデリック・ラルーは、ティール組織には、マネジメントにおける三つのブレークスルーがあると指摘する:
・セルフマネジメント 上司ー部下の関係なし、管理職ナシの組織運営。(言い換えると)自己管理する自立した個人とともに、セルフマネジメントされたチーム群からなる組織。
・個人の全体性 一人一人が自我や自己の深い部分を隠さず併せ持つ。(言い換えると)機械の部品のようにでなく、ハートやスピリット、クリエイティビティなどをもった人としてとらえ、ケアする。
・進化する目的 組織の生命力に人々が力と知恵を合わせる。(言い換えると)一人のトップが組織の目的を決めるのでなく、新たに人が加わったり組織が変化したら、目的も進化させる。

進化する目的について補足したい。よくある目的は、利益や雇用、株主へのリターンなどだが、一方、社会や人間性のため、というより大きな視点がある。誰かの意図により目的を設けるのでなく、あるべき組織の成長・進化は何か、どうすればよいのか、と考え協同するのが、「進化する目的」。大きなソウルに基づく意義にフォーカスすると、利益はもたらされる、という研究結果もある。

参考記事 Adopting Innovative Ways to Manage Organizations

下の図は、ティール組織を実現するポイントをまとめたものだ。

Reinventing-Organizations-Teal.png

Source: Teal Organization - Future of Work | agilitrix

なお、日本の嘉村賢州氏(home's vi 代表理事)らは、冒頭に記したNEXT STAGE WORLDに複数回参加し、日本で報告会などを開いている(参考ブログ)。小生も一度参加したが、前回のブログでも紹介したリカルド・セムラー氏がフレデリック・ラルー氏と意気投合していることなど、興味深くうかがえた。

嘉村氏らは、日本でのTeal, Holacracy等の情報共有を図る約200名参加のFacebookクローズドグループ「Org Lab-組織の進化に向けての実践型ラーニングコミュニティ」を運営し、2017年10月16~20日にギリシャのロードス島にて開催される次回NEXT STAGE WORLD の日本からの通訳付きのツアー・コーディネートや、日本で開催する海外Teal型経営実践者を招聘したワークショップの告知などをしている(10月ギリシャへの参加者を募集中→問合せは嘉村氏 kamurakenshu@gmail.com まで)。嘉村氏らと先月のNEXT STAGE WORLDに参加したベルリン在住のNaho Iguchiさんは、「ザッポスteal化を牽引した1人のコンサルタントからギリシャでたーーーーくさんのことを教えていただきました。」と語っている。

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