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ジェレミー・リフキン著「限界費用ゼロ社会」 シェアリングエコノミーと技術革新の未来を読み解く

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これは、日本マーケティング協会の月刊HORIZONの2016年第6号(シェアリングエコノミー特集)に小生が寄稿したものです。

書評 「限界費用ゼロ社会」 ジェレミー・リフキン 著、柴田裕之 訳、NHK出版

 シェアリングエコノミーを捉えるときに、その現象面に目を奪われるか、本質的な変化と論理を理解するかで、大きな差がつくだろう。

 「モノのインターネットと共有型経済の台頭」なる副題が邦訳に付く本書は、10年前から独メルケル首相のアドバイザーとして、いまや日本でも話題の「インダストリー4.0」へと導いた文明評論家でありウォートンスクール講師も務めるジェレミー・リフキンの最新著だ。

 著者は、技術革新により資本主義が進化・変貌すると将来像を予言する。

 効率が極限まで高められると、モノやサービスを追加で生み出すコスト(限界費用)は限りなくゼロに近づく。やがて多くのモノやサービスは無料になり、企業の利益は消失し資本主義は衰退を免れない、と説く。

 代わって台頭するのが、共有型経済=シェアリングエコノミーだ。人々が協働でモノやサービスを生産し、共有し、管理する、協働型の新しい社会=コモンズが実現する、という。

 IoT、3Dプリンティング、MOOC、クラウドファンディングなど、様々なテクノロジーと新たなシステムが紹介されているとともに、実際の動向、歴史、思想家や経済学者ほか識者の見解を踏まえて著者の洞察が示されている。

 つまり、シリコンバレーやIT系のエヴァンジェリストが声高に革新を唱えるものではなく、以前からの流れをくみ、体制側やこれまでの主役たちと将来を橋渡しする書だと言えよう。

 日本語版には特別に「岐路に立つ日本」が加えられている。日本は立ち遅れているが、日本が起業の才を発揮し、技術と文化的資産を活かせれば、限界費用ゼロの時代において、世界のリーダーとして貢献できるかもしれない、という。激励であり、このままではダメだという警告だ。

 ちなみに、著者の前著「第三次産業革命」は、中国政府が将来の経済アジェンダの核心として称揚している。置いてけぼりになる前に、本書を手にとり、将来に向けての本質論を考えてみてはいかがだろう。

アマゾン → 限界費用ゼロ社会―<モノのインターネット>と共有型経済の台頭 2015/10/27 ジェレミー・リフキン (著), 柴田裕之 (翻訳)

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