買いだめ現象 人の心理と示唆
東京・下北沢では、スーパーなどの品薄は、3/15-16あたりがピーク(商品・地域による)で、昨日土曜は目に見えて商品が入ってきた。
さて、この「買いだめ」現象は、いまも終わっていないが、これから先のことを考える上でも分かりやすいテーマと思い、どんなことが起こっていたか、一体どういうことか、少しまとめてみた。
■何が起こったか
いまでもガソリンスタンドは長蛇の列だし、一部の商品はまだ品薄。で、誰がどういう行動をして、マクロで何が起こったのか?
買いあさりのピークの3/15のツイートをまとめてあるTogetter - 「トイレットペーパーは御神体、あるいは、日本の伝統文化」
をみてみると、これには、
「母から「オムツ4パック送った」と言われたので、何でそんなに?と言ったら「あんたはオイルショックを知らないからそんな事が言えるのよ!」と言われた。つまり、買い占め工作のトリガーを引いたのはこの世代である可能性が高い。」
「いやあ近所のじいさんばあさんがトイレットペーパー2つも3つも買ってんのにはあきれて笑えたわ」
「隣のおじいちゃんはあの12ロールもあるトイレットペーパーを三つお買い上げ。」
「私が見た限り、買い占めてるのは50代以降が中心。」
とあり、年配の層が「買い」に走った中心のようだ。
ちなみに、
「トイレットペーパー買い占めをそろそろ「伝統芸能」入りさせるべきですよ。きっと、未来の博物館では「20世紀や21世紀の人々は、何かがあるとトイレットペーパーを買い占めるという現在では理解できない行動に走っており・・・」という感じになっているはずだ。」
「なにかあるとトイレットペーパーを買い占めるのはオイルショック以来の伝統行事みたいなものか」
「トイレットペーパーを買い占めるとストレスが緩和されることを脳が学習しちゃったのでは。」
との分析?も。
もちろん、トイレットペーパー以外でも非常食、納豆、卵、豆腐、パン、水ほか、色々と買われた。
@kkkkkou「新宿のスーパーではコンドームが全て売り切れてましたよ…RT @sasakitoshinao: 砂糖や塩…いったいどんな事態を想定してるのか。@0chocolat: @sasakitoshinao @gyouzaninngenn スーパーが家の前なので毎日見てますが、爆買いしてい(るのは60才代の以上の人々です。砂糖や塩を買いだめって発想は斬新すぎ。)」というツイートも。
■流通側の声
@chicken913 「【関東の皆様!】コンビニの話ですが、物流は止まっていません!納品も数はまちまちですが毎日来ています!必要数だけのご購入を心掛けていただければまた、充実した品揃えで皆様をお迎えできます!被災地にもしっかり物資が届きます!どうか、過度な買い溜めはせず、今まで通り必要数だけの購入を…!」といったツイートや、
コンビニ店のレポート、3/15のブログ「商品はちゃんと入荷してます」 がある
(この方の3/13のブログは震災直後のドタバタをリアルに描いてます/「[しごと]とあるコンビニの金曜日から土曜日にかけて」)。
しかし、3/12からの買いあさりを書いた、3/14のブログ「東京都下某スーパーの店員のグチ」 が言うように、Tweetしてもリテラシーの高い冷静な人にしか声は届かない、つまりメインの買いあさり層は、ツイッターとは縁のない人が多いからソーシャルウェブは無力と。
すると、マスメディアはメッセージが遅かったし、いったんできた認識や心理が転換するほどのコンテンツでもなかった(この後も不安を煽る調子は続いた)。
■なぜそこまで買うか?
例えば、「買いだめしてる人の言い分」には、食べ物さえあればなんとか生き残れる気がする/いつなくなるか分からない/ストレス解消/安心/落ち着く、といった言葉がみられる。
基本的には、[有事ゆえ物資を確保、品薄になるのを心配して先に動く]という物理的な理由もあるが、[不安ゆえ]という心理的な理由が大きいだろう。そして、リアルに効いたと思われるのが、[まわりがそうしてる]ということだ。
311災害に加え、不安を煽るマスメディアにより、[不安]がかなり高まっていただろう。すると不安の解消であり、まわりと同じコトをして安心感を得ようとしたと思われる(自分自身の心を、さまざまな方法で守る「防衛機制」という行動があるが、その一種かもしれない)。あるいは、ストレス貯まると食べてしまう、というのと同様かも。
参考:不安について考察したブログ「「安心」を買い漁る人々」
なお、3/15にある大企業の立派なミドルと話した際に、他の方とトイレットペーパー買いについて笑っていると、自分は奥さんに言われて3/14午後にスーパーに行ったらみんなマジで、これ(買うこと)は重要なことなんですよ、と真顔で力説された。人間の心理はそういうものだ。目の前で多数の人が同じことに懸命だと、それと違う行動をとりにくいし、それが当然と思いがちだ。
こういうツイートも、
@HitomiHase: 「@sasakitoshinao 関東の小売りでバイト的な仕事してます。カゴいっぱいにカップ麺やパン、水を買うお客さんには、どうして買うのか感じよく(苦笑)きいています。答えは大抵、皆が買ってるから。なにかあると怖いから。そして、買うものがなく困っているお年寄りを何度も見ました。」
@HitomiHase: 「@sasakitoshinao つづきます。「皆が買ってるのでティッシュがない、ここにはあった」と5箱すべてを買う人に、「皆が買い占めちゃうからないんですよ、5箱いりますか?」と冗談ぽく言ったら、「ほんと困るのよね、買い占められちゃうとねえ」と。その人を皮肉ったのに、伝わらない。」
みなさん心の余裕がなかった。
■買いだめへの対応
ツイッター上では、3/11金その日のうちに節電しようという声が広がり、「ヤシマ作戦」なる運動も生まれた。このヤシマ作戦に続き「どうぞどうぞ」と物資を譲り合う「ウエシマ作戦」も生まれた。モノを奪い合うように買う人が増えている様子は、ツイッターやブログでも広まり、早くから被災地にためにも譲り合おうという呼びかけがされた。
政府はやっと、3/14月曜に動く。
消費者庁は3月14日、物価担当官会議の概要と消費者担当大臣のコメントを発表、「食料品など生活関連物資は安定供給が可能。買い占めが広がると、結果として被災地に必要なものがうまく回らなくなってしまう」。蓮舫消費者・食品安全担当相は15日午前の記者会見で、都内の小売店で食料品などが品薄になっていることに関し「東日本大震災の被災地に支援物資が回らない可能性も出てくる。買い占めないでほしい」と述べ、消費者に冷静に行動するよう求めた。そして、イトーヨーカドーなど店舗を視察(みてどうするんだろう?)。
鹿野農林水産大臣が3/15に「食料は十分ある買い占めないでください」とメッセージを出し、3/16から新聞やテレビは冷静にと言うようになった。が、不安を煽るようなトーン、コンテンツは続く。
また、[不安]が大きな原因とすると、以下のような論理的な呼びかけだけでは問題は解決し難い(もちろん一部の人には効果もあるだろうが)。
「ニコニコニュース〔猪瀬氏「買い占め自粛」を呼びかけ、「部屋在庫」よりも「外食」を〕」
「水やガソリン…首都圏で買いだめ 被災地に届かぬ恐れ」
つまり、遅かったし、いまさら言われてもだし、パニックになるなと声高に言われるとパニックを煽る面もあり、なにより不安を煽るようなコミュニケーションが継続しているのが問題かと。買い占め問題に限らず、大きな視野で、不安がおさまるようにコミュニケーションしていくのが最も重要なことだと思う。
■買いだめに関するユーモア、ウィット
と、ここで終わるといまひとつなので、買い占めに関するユーモア、ウィットをいくつか。
@kendrix3103 「@takapon_jp 拡散熱望!→RT:大抵のお店が品切れの時に「申し訳ありません」というお知らせを貼っているけど、うちの近所には「そんなに必要ですか?皆が最低限買えるようにしませんか?」と貼っているお店がある。みんなそれを読んで我に返っている。他の店もできませんか?」
「買いだめ防止ポスターから始まったソーシャルアクション」というのも起こり、3/16から呼びかけが広がりました。
それから、被災者でもある会社社長のブログ「復活の「買い占めするならカネ送れ」」 にある動画が面白い!
なお、YouTube動画はいずれ削除されるでしょうが、こちらでニコニコ動画見れます。また味が違ってこれもいい。
冒頭に書いたように、ピークは過ぎたが解消はしておらず、これから長期戦でもある。燃料など被災地救援のネックになっているものもある。
まずは、心の平静が持てるように、お互いに助け合いましょう。つながり合い、言葉を交わすこと。そして「どうぞどうぞ」と譲り合おう。
(参考:こういうブログもあり→「都内でトイレットペーパーなどの買い占めが起こった原因は何なのか」)