アーバントレッキングのすすめ~街を探検しよう!

前回に引き続き、ウォーキングのお話です。
今回は、ウォーキングを一歩進めた「アーバントレッキング」のススメです。
〇 ウォーキングからアーバントレッキングへ
健康のため、
減量のため、
あるいは気分転換のために歩いている方は、世代を問わず多いでしょう。
いつも決まったコースや、近所の公園を歩くのも楽しいのですが、
たまには思い切って"街を冒険"してみませんか?
それが、今回のテーマである 「アーバントレッキング」 です。
〇 アーバントレッキングとは?
アーバントレッキングとは、
『街をまるごとフィールドにして楽しむウォーキング』
のことです。
・観光でもなく
・散歩でもなく
・登山でもない
街の地形を楽しみ、
ゆっくりでも速くてもよく、
自由なルートで歩き回る"都市型トレッキング"。
大切なのは、
街そのものをフィールドとして歩く という視点です。
歩くことを楽しみながら、
都市の地形や景色を味わい、
自分の心と体を調律する──
そんな、シンプルで奥深いスタイルを目指します。
〇 なぜ今、アーバントレッキングなのか?
私たちの多くは都市に生きています。
しかし、その都市は意外と「歩かれていない」のです。
・坂道は気づかれず
・橋は通過されるだけ
・海沿いの風景は"眺めるもの"として終わる
アーバントレッキングは、
そんな日常に "冒険の余白" を取り戻します。
歩くだけで街は驚くほど表情を変え、どんどん面白くなっていきます。
さらに、街を歩くわけですから山と違って危険が少ないのです。
疲れたらカフェにも寄れますし、
どうしても無理ならタクシーを呼んだってOK。
これも都市を「冒険」する大きな利点です。
〇 アーバントレッキングに出掛けよう!
では実際に、どのように始めればよいのか。
ここでは3つの代表的コースと6つの実践ポイントをご紹介します。
■ ポイント1:街を「地形」として見る
アーバントレッキングの第一歩は、
街を"地形"として捉えること。
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坂道 → 稜線
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橋 → 尾根
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高層ビル → 渓谷
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公園 → 草原地帯
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海沿い → 海岸線ルート
こうして認識するだけで、ただの街並みが
ユニークな"都市地形"の連続 に変わります。
<坂道を利用したコース>
大阪市中心部には、ナマコ状に南北へ伸びる 上町台地 があります。
その南部に「天王寺七坂」と呼ばれる、歴史ある七本の坂が連続しています。
7本の坂を一気に歩くと、短いながらもアップダウンがあり、
十分に"稜線歩き"気分を味わえるアーバントレッキングになります。
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往復:距離6.7km/アップ110m/ダウン110m
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片道:距離3.35km/アップ55m/ダウン55m
歴史と地形の両方を楽しめる、絶好の入門コースです。
天王寺七坂のルート図
天王寺七坂・源聖坂
天王寺七坂・清水坂
天王寺七坂・口縄坂
<大橋を渡るコース>
海沿いには、大きな橋が架かっていることが多いですが、
実は「徒歩で渡れる橋」もかなり多いものです。
橋の上から眺める景色は、
都市のスカイラインと海が重なり、
アーバントレッキングの醍醐味である"都市の絶景"を堪能できます。
一例として、神戸方面の橋を紹介します。
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舞洲・夢洲を結ぶ 夢舞大橋
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神戸・六甲アイランドと本土を結ぶ 六甲大橋
どちらも徒歩で渡れ、黄昏時は絶景です。
黄昏時の舞洲・夢洲を結ぶ夢舞大橋
神戸・六甲アイランドに掛かる六甲大橋
六甲大橋の歩道
<旧街道を歩いてみる>
江戸時代、全国に張り巡らされた街道。
その多くは消えましたが、いまでも一部が残り、
歴史を感じながら歩ける"地形と文化のルート"になっています。
たとえば、大阪〜奈良を結ぶ 暗越奈良街道(くらがりごえ)。
時代の痕跡がそのまま残り、歩いていて楽しいルートです。
暗越奈良街道・案内標識
暗越奈良街道・松原宿跡
暗越奈良街道・昔の風情が残る道
その他、色々探せば、
いくらでもアーバントレッキングコースは発見出来ることでしょう。
■ ポイント2:装備は「最小限で快適」
アーバントレッキングは、
山のフル装備ではなく、街に溶け込むスマートな装備 が正解です。
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薄手のシェルジャケット
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速乾シャツ
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軽量パンツ
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10〜20Lバックパック
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街に馴染む色(オリーブ/ネイビー/ベージュ)
このスタイルなら、橋を越えて海まで歩いても、
そのまま洒落たカフェに入っても違和感がありません。
■ ポイント3:歩き方は自由
速く歩いても、ゆっくりでも構いません。
アーバントレッキングは 自由なウォーキング です。
ただひとつ大切なのは「心拍」。
無理せず、自分のペースで歩くことが大切です。
簡単なスマートウォッチでも、
心拍は簡易に測れますので利用するのも一案です。
歩くことは"運動"であると同時に、
"自分との対話"でもあるのです。
■ ポイント4:目的地はゆるく設定する
・行けるところまで行く
・海が見たくなったら海へ
・橋があれば渡る
・疲れたら、迷わずカフェへ
この 曖昧さ が、街を冒険するアーバントレッキングの魅力です。
帰りは駅やバスに乗ってしまってOK。
山とは違う、街ならではの"自由さ"です。
■ ポイント5:都市の境界を越えてゆく
住宅街から海沿いへ、
旧市街から高層ビル街へ、
川沿いから湾岸へ。
都市には驚くほど豊かな地形の変化があります。
その境界を越えて歩くと、街の見え方はまったく変わります。
■ ポイント6:観察する習慣が街を変える
アーバントレッキングの醍醐味のひとつが 観察。
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高架下で変わる風
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工場の煙のゆらぎ
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夕陽に染まる倉庫街
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川面に映る街の光
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古い看板の歴史
歩くほど街は語りはじめ、
いつもの景色に"深み"が生まれます。
〇 まとめ
アーバントレッキングは「誰でも始められる冒険」です。
特別な装備も、山の知識もいりません。
必要なのは、ただひとつ。
「歩いてみるか」
その気持ちだけです。
歩き出した瞬間、街は別の姿を見せ始めます。
そしてあなた自身も、
気づけば心が少し軽くなっていることでしょう。
ある意味、ウォーキングが続かない人にもおすすめです。
ぜひお気軽に、アーバントレッキングを楽しんでください!