ビッグデータとアマビエ
コロナ禍の第2波の到来が心配される今日この頃(すでに第2波に入っているのかもしれないが)、ふたたびビッグデータを利用した感染防止策が注目されている。すでに行われていることでは、スマホ・携帯のデータを利用した繁華街での人出の集計や流れの傾向分析などである。また、6月19日からは厚生労働省の新型コロナウイルス接触確認アプリCOCOAの運用が開始され、このアプリをスマホにセットアップしていれば互いにBlueturth通信を行い、コロナ陽性者と接触した場合に通知が届くシステムが構築された。さらに進めば、プライバシーの問題はあるが、韓国で実施されたように陽性者のGPSデータを使って移動経路を公開し、その場所には近づかないように警告するシステムの構築も可能であろう。
このようにビッグデータの利用は、コロナ対策の一環としてなくてはならないものになっているが、それと並行して「アマビエ」のお守りをよく見かけるようになった。アマビエとは、江戸時代から語り始められた妖怪のことで、海から現れて「これから6年間は豊作だが、疫病が流行するので自分の姿を描いた絵を人々に見せよ(自分の姿を見たものは感染予防になるの意)」と言い残して去って行ったなんとも心優しい奴である。
ビッグデータを用いた最新のIT技術と迷信に近いアマビエ伝説が同時に注目を集めることは、人々の不安な心情の表れだと思われるのだが、これを別の視点から見ると大変興味深いところでもある。どうやら人間という生き物は、はっきり科学的に理解できるものも非科学的な精神世界で捉えたいようである。つまりは、物事を論理だけでは把握できず感情での理解が必要なのだ。この感情的な理解の部分が個人個人の心の余裕であり社会全体の潤滑油ともなるのであろう。
これらのことを今ビジネスの世界で応用して考えると、安くてうまい飲食店を作ったとしても流行るかどうかは別問題ということである。また、大変便利で安い電化製品を販売したとしても売れるかどうかは判らない。無料で利用できる便利なインターネットサービスを開始しても利用者が増えるかどうかははっきりしないということである。つまりは、それらのサービスや製品を利用して感情的に満足できるのかがビジネス成功の大きな要因となるのである。当たり前といえば当たり前だが、これが出来ていないビジネスモデルを見かけることが少なくない。
また、これはフリーランスで活躍する人も同じである。その分野で十分な能力があったとしても、どんどん仕事が入るかは別問題である。その人に依頼をして感情的に気持ちが良いか、その人と仕事をして楽しいかどうかが重要なのだ。
しかしながら、この感情的な部分が重要な政治的な決定を下す際に全面的に出てくるとろくなことにならない。いまなお世界各地で続く紛争を見ても、主要な原因は経済的格差の問題にあるにせよ感情的なもつれが多々あるように見える。また、某国の日本に対する対応も感情的に過ぎるきらいがある。
さらに我が国の政治的論争に関しても、いたって感情的なことが少なくない。有権者ひとりひとりが政治的テーマに関しては感情を捨て論理的に判断する必要があるのだろう。
ともかく、ビッグデータの活用とアマビエに頼りながらコロナ禍の早期終息を祈りたい。