関西弁の処方箋
関西弁とひとことで言っても、実はたくさんの種類があります。大阪弁、京言葉、神戸弁、紀州弁など多種多様な方言があります。また、大阪だけでも、摂津弁・河内弁・泉州弁・船場言葉(ほぼ上方落語に残るのみ)など地域により特徴があります。また、それぞれ伝統があるものですから、他の方言とは「一緒にせんといて!」という意識が強く、「関西弁」でひとくくりにするには難しいところもあるのですが、今回のテーマでは、1.関西地方で話されている言葉 2.標準語に比べて独特の語尾を持つ 3.音の母音が強い 4.微妙な間や音の上げ下げでニュアンスを伝える などの特徴を持つ言葉を「関西弁」と総称して話を進めてゆきます。
さて、大阪で生まれ育った私は普通に関西弁を使って生活している訳ですが、この東京一極化が進む現在においても、年端のいかない子供たちが、「今日は暑いなあ」「せやなあ」などと関西弁を駆使して会話しているのを耳にすると、この言葉は脈々と受け継がれていることを感じます。それには、大阪を中心としたお笑いの力を無視することが出来ません。漫才にしろ吉本新喜劇にしろ関西弁でやってますから、幼いころからそれらを見て来た人達は、このイントネーションが"標準"なんだと感じながら育ってゆきます。また、関西のお笑いが全国に浸透していますから、日本全国どこへ行っても関西弁が通じる、あるいは使えるようになりました。かつては関西弁で話すとクスッと笑われる地域もあったのですが、それを考えると吉本興業の力は偉大だなと思います。
しかしながら、全国津々浦々で通じる、使えると好意的に思ってもらえるは話が別です。確かにこれまでの各種調査結果をみても、関西弁は親しみやすく、感情豊かでユーモラス、温かみがあるなどのプラス評価が多数を占めています。しかし、逆に関西弁は嫌いだという割合も一定数ありますし、きつい、威圧的ととらえられている面も無視出来ません。また、私見ですが、関西人はなんでも笑いに結び付けるところがあり、さらに冗談をいう際には、4.で示したように微妙な間や音の上げ下げでニュアンスを伝えることが多いので、おそらく他の地域の人では完全にはその意図を理解することは出来ないだろうと思われます。そこで、冗談を言っているにも関わらず、それが威圧的に聞こえたり、他人を侮辱しているかのように聞こえることも起こり得るのではないでしょうか。
ちょっと政界に目を向けてみます。
とある政党の党首選挙で、関西弁を使う候補が惜しいところで敗れました。この方は、党首選挙にむけて親しみをアピールするためかあえて関西弁を使っているように見えました。私は止めた方がいいのになと見ていましたが、やはり結果は落選となりました。現在、この方は関西弁を使うことを控えているように見えます。
また、別の政党の関西出身の党首は、どんな時も関西弁で通していましたが、同じ党の同僚議員から標準語を使うべきではないかと指摘されていました。その後も標準語を使う様子はなかったのですが、そのうちにこの方は党首の座を追われることとなりました。
また、別の政党の党首は、歯に歯を着せぬ関西弁で主張を繰り返していますが、熱烈な支持者とともに反支持者も同時に増やしているように見えます。
つまり、関西弁を駆使する人々は、外の地域に出た場合に、通じる、使えると思って調子に乗らないことが大切だと思います。出来れば、外の地域の方々と話す際は、出来るだけ標準語ぽく話す事が無難です。とはいえ、関西人が標準語を話すのは、イントネーションの違いからかなり骨の折れることです。そこで、関西人は「エセ標準語」をなんとなくマスターしておくことを勧めます。参考にするサンプルは、タレントの今田耕司、東野幸治です。関西出身の彼らですが、全国放送ではうまく標準語ぽく話しています。彼らぐらいの「エセ標準語」であれば、普通の関西人でもそれほど苦労なく使えることでしょう。
関西人の皆さん、外の地域の方々との真面目な話、真剣な商談には「エセ標準語」がお勧めです!
(イラスト:ACworks)