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日本の未来について悲観的な情報ばかりが飛び交う昨今ですが、一筋の光が明滅するのを最近実感します。それは成功企業の中に、アメリカ型経営とは一線を画す日本古来の伝統経営哲学がしばしば見出されるようになったことです。数百年の風雪に耐えて今なお顧客や社会に支持される老舗企業に特有な哲学や経営姿勢が、図らずも若いベンチャー企業群に見出される――その経営の在り方を「主客一如型経営」と名づけ、今後の日本の産業界をリードし、再生に導く存在になり得るものと期待しています。本ブログではこの主客一如型経営に関し、その原動力となる「不変と革新」というキーワードから解明してゆきたいと思います。

レストラン・マネジメント~不変の本物に個性の味付け

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「不変と革新」について、芸術団体、スポーツ競技を例に、欧米のケースを4回にわたってご紹介しました。

 

前回のサイクル・ロード・レースのケースでは、100年を超す歴史において、その運営システム/プロセスがいかに変わろうとも、チムに対する個々の選手の「滅私奉公」という在り方だけは、今に至るも断固貫徹されている点が、とても印象的でしたね。

 

今回からは、日本の歴史・社会・産業界・個々の企業・個人という各レベルにおいて、「不変」の貫徹と、「革新」の断行を実現しているケース、さらには、今後、それをすべきであると思われるケースについて、順次、ご紹介し、検討してみたいと思います。

 

きょうは、ビジネスメディア誠で、私が「嶋田淑之の"この人に逢いたい"」という連載を持たせて頂いた時の、記念すべき最初の取材対象であるマルハレストランシステムズ(現在のMRS)社長の小島由夫(よしお)氏の経営を見てみましょう!(2007年12月末に取材)。

「海パン一丁のお笑い芸人さんとよく間違えられるんですよ」と言って微笑んでいる同氏の温顔が今も思い出されます(笑)

その時の取材記事は、こちらです↓

http://bizmakoto.jp/makoto/articles/0801/18/news069.html

 

しかし、これは(前編)(中編)(後編)に及ぶたいへん長いものなので、ここでは、フジサンケイビジネスアイで担当させていただいた全44回の連載の中の、第11回として2008年1月22日に掲載された記事をご紹介しましょう。

 

 

不変の本物に個性の味付け

 

「食」への信頼が失われている昨今だが、最近、ひとりの素晴らしい経営者との出会いがあった。その名は小島由夫氏。マルハレストランシステムズの代表取締役だ。

 

「コカレストラン」「マンゴツリー」「ニルヴァーナ・ニューヨーク」を初めとする海外の老舗レストランを日本に誘致・運営して顧客から絶大な信頼を得てきた経営者である。

 

実は、私は前々から、海外レストランの日本での展開について何となく釈然としないものを感じていた。

食事というのは、その土地の気候風土や人情と不可分一体をなすものであって、それをそのまま日本に"移植"してもうまくはいかないのではないか。

たとえば、高温多湿な東南アジアで大汗をかきながら食べてこそおいしい料理を、氷雨降る肌寒い冬の東京で食べても決して同じ感動は得られない。

だからと言って、日本に合うようにアレンジしてしまっては、「~風料理」にはなり得ても、「本物志向」からはほど遠くなってしまう。実際、そうやって「変質」させて営業している店も多い。

 

そうした私の疑問を「不変」と「革新」の視点から氷解してくれたのが小島氏だった。

 

その小島氏が語る。

「海外の老舗レストランを日本に誘致する際に考慮すべきこと。それは、何があっても決して『変えてはいけないこと』と、大胆に『変えるべきこと』があるということです。

その両者の『識別』を的確に行うことが大切。

お客様から見て『愛情の対象』になってきた部分は決して変えてはいけません」。

 

「たとえば『ニルヴァーナ』であれば、多くのセレブから愛されてきた『ニューヨークならではのインド料理』『ノスタルジックな非日常空間』という部分は変えてはいけないのです。これが私の考える『本物志向』です」。

 

一方で、変えなければいけないものもある。

「海外現地と日本とでは気候風土も顧客ニーズもまったく異なるわけですから、たとえば『コカレストラン』では、タイスキに入れる野菜などは日本の四季の季節感に合わせたものに変えています。

さらに、同じ東京でも出店地域によってメニュー構成、味付け、ボリュームを変えています。それは、国や地域の土地柄・人情に根ざした『個性』を持つことが大切だからです。

変えることを通じて、そのレストラン本来の魅力がより的確にお客様に伝わると考えています」。

 

「不変」と「革新」の適切な識別を通じて、海外の現地レストランの「魅力」がより一層の輝きを持って日本の生活者に伝わることは、素晴らしいことである。

こうした経営者が一人でも多く現れることを願わずにはいられない。

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