ケリをつける
昼間自宅で作業をしていたときのこと。
家の前で激しく長いクラクションが鳴り、その後車の急ブレーキがかかる音がした。つづいて男の激しい口論の声。
事故・・? なにごとか、と思わず窓から状況を確認(至近距離だったので怖くて外に出られず)。車が2台前後に停車し前の車から男が後続の車の運転手(これも男性)にものすごい勢いで怒鳴り散らしている。後続運転手も負けてはいない。
「だから悪かったって言ってるだろう!!」
どうやら、後続の車に前の車があおられながらしばらく走っていた様子で、後続車が急接近してクラクションを鳴らしたらしい。前の車はスピードが出なそうな作業トラックで、後続車はスポーツタイプのメルセデス。
前の車の運転手
「あおるな! スピードが出ないんだから。しかも危ないだろう!」 (実際はかなりガラの悪い口論でした)
「しかもあんなにクラクションを鳴らすとはどういうことだ!」
後続運転手
「もたもた走ってるからだろう! 鳴らしすぎたことは悪かった!」
ものすごい剣幕でお互いに怒鳴り散らしていた。
口論は2~3分続いた。次第に双方が発する言葉は単調になっていった。
「だからあおるな」
「だから悪かったと言ってるだろう。謝る」
一瞬沈黙のあと、前の車の運転手は、バツの悪い照れ笑いを浮かべながら会釈を数回し手を挙げて「了解」のポーズをとった。後続運転手も会釈をして「すんません」との合図。
お互いすっきりした顔で車に乗りその場を去っていった。
振り上げたこぶしの降ろし先を探していた、といった様子。
この口論の終息の仕方に、なぜだかオトナの対応を感じた。
何事もなくおさまってよかったのと、お互い最後に受け入れあったことが、見ていて気持ちよかった。
電車などの大衆の中ではいざこざが起きやすいが、ここには周囲に人影はなかった。そんな環境の違いも影響したのだろうか。
人間、誰でも気持ちをぶつけあえばいつかは理解しあえるのだ。
それを最速で示してくれた一件であった。