夢のクラウド対談!「小池良次」x「城田真琴」
クラウド・ウォッチャーにはお馴染みの御両名。『クラウド〜グーグルの次世代戦略で読み解く2015年のIT産業地図〜』の著者である小池良次氏と『クラウドの衝撃〜IT史上最大の創造的破壊が始まった』の著者である城田真琴氏の夢の対談が、サンフランシスコ某所で実現した!
小池氏は、米国インターネット、通信業界を専門とするサンフランシスコ在住のフリーランス・ジャーナリスト。日経ネット(日本経済新聞社)、インターネット・マガジン(インプレス社)に連載を持つ他、多数の調査レポート、セミナー講演で活躍中だ。米国内で開催されるカンファレンスでよくお会いさせていただきますが、いつも一番前の席を陣取り、講演者に鋭い視線を注ぐ姿は、何故か近寄りがたいオーラを感じさせる。
一方、日本から出張でいらっしゃった城田氏は、野村総合研究所(NRI)の上級研究員。ITアナリストとして、先端テクノロジーの動向調査、ベンダー戦略の分析、ユーザー企業のIT利用動向調査を推進。SaaS、SOA、オープンソース、仮想化などのITサービス、IT基盤技術を専門領域として、国内のセミナー・講演では引っ張りダコ状態でご多忙な日々を過ごしている。12月にサンノゼで開催されたクラウド関連カンファレンスで知り合い、今回の出張でお時間いただくことができた。
小池さんは、いつも通りに親しみのある気さくな雰囲気で話をリードし、城田さんは、多少貴重気味だったようだ。日米におけるクラウドの話題から、サンマイクロシステムズの共同創設者スコット・マクニーリ氏の従業員向け最後の手紙、iPadを発表したアップル社の狙い、日本のデータセンターの国際競争力、日米経営層の意思決定プロセスの違いなどなど多岐にわたった。言える話、言えない話など盛り沢山であった。それでは、対談の様子を少しだけ紹介しよう。
対談の当日、NRIは、クラウドサービスの拠点となる新データセンター建設に200億円の投資を発表するなど、実績では先行するAmazonやSalesforce、Googleなどの米国クラウドサービス事業者に負けじと、日本国内においても、大手システムインテグレータ、 通信事業者、データセンター事業者などのクラウドサービス事業への参入が活発化している。クラウド・サービスの進展とともに混沌とする日本のIT産業であるが、「果たして、エンタープライズ向けパブリック・クラウド・サービスは、どこが勝ち組となるのだろうか?」という質問をぶつけてみた。
「そんなの分かったら自分で会社を設立して大儲けしてますよ(笑)」ということで、直接的な回答を控えた形になったが、いくつかヒントを戴いたような気がする。
コミュニケーション・クラウド(通信業界クラウド)に注力している小池氏は、「もはやデーターセンター内部の技術動向には注目していない。」という。つまり、「データセンター内部の仮想化、自動化などは各社同じような技術を利用しているが、大切なことは、エンド・ツー・エンドの利便性であり、データセンターの外側に目を向けている。」と続けた。データセンターの外側(足回りのネットワークやクライアント端末)の技術革新をいち早くキャッチし、それらの進化に追従できるサービスを提供できるものが、混沌とするクラウド業界を制するのだろう。そして、それは通信事業者に分があるというように理解した。
米国通信業者のクラウドへの取り組みに目を向けると、Verizonは若干遅れを取るも、AT&Tは、昨年5月にクラウド・ベースのストレージサービス「AT&T Synaptic Storage as a Service」を発表、11月には「AT&T Synaptic Compute as a Service」を発表している。これらのサービスは、EMCやVMware、Sun Microsystemsなどの技術を採用されている。セキュアで拡張性の高いクラウドサービスを売りに展開し、大規模エンタープライズ市場に受けいられそうだ。
また、欧州員会が先週、OracleによるSunの買収を承認したことを受け、スコット・マクリーニ氏が、従業員向けに送ったメッセージが公開された。このメッセージをプリントアウトし、小脇にしたためてきた小池さんは、「この手紙にはマクリーニの人格が滲みでているね。2006年にCEOの座を渡したのは最大の誤りだった。」と、これまでマクリーニ氏と数多くの取材経験のある同氏ならではの想いがあるようで、感慨深い様子で思い出話を披露いただいた。
っということで、
私からみたお二方の印象は、フットワークの軽さとマクロ的なトレンド分析力を武器に、経営者の心に突き刺さるメッセージで人の心を揺さぶる小池さんと、口数は少ないながらも、丁寧で分かりやすい解説と抉るような質問で突っ込む城田さんという感じでしょうか。自分の浅い分析力が恥ずかしい想いにもなり多少凹むこともありましたが、いろんな刺激を受けました。その他、本出版のノウハウ?もお聞きして、各々のサインもいただき大満足でした。
小池さん、城田さん、お時間をいただき、ありがとうございました!