Oracle、Virtual Ironの買収で仮想化市場がおもしろくなる。
5月13日付でOracleによる仮想化ベンダーVirtual Ironの買収が発表されました。2月のアプリケーション構成管理のmValent買収、4月のSun買収に引き続き、今年に入ってから3社目の買収となります。これによりOracleは、同社の仮想化ソリューションをさらに拡充することになり、仮想化市場を牽引しているVMware、Citrix-MicroSoft連合の2強に対して、第3の勢力として新たな戦いを挑むことになります。
尚、両者が完全統合されるまでは、従来通りに並行したオペレーションを行い統合後により詳細な情報を発表することになっています。(完全統合はこの夏を予定とのこと)
Virtual Ironは、ボストンからルート3を北上すること30分、マサチューセッツ州ローウェルを本拠とするエンタープライズクラスの仮想化ソリューションを提供するベンダーです。オープンソースのXenハイパーバイザで設計された仮想化ソフトと、仮想化管理ソフトを提供し、仮想環境における運用管理コストを従来製品の3分の1と大幅に軽減するものです。特に、仮想サーバの迅速な配備を実現するプロビジョニングやキャパシティ管理の提供、Intelの開発した消費電力管理技術「Dynamic Power Node Manager」を世界初で、仮想化環境に実装し消費電力の最適化や自動化を提供するなど、いわゆる「動的資源管理(Dynamic Resource Management)」の技術力にはコア・ユーザから高い評価を得ていました。
今後、このテクノロジーはOracle VM"とOracle Enterprise Manager製品群に組み込まれ、Oracleが提供できていなかった動的資源管理と自動化をVirtual Ironテクノロジーが補完することで既存OracleユーザにとってもVirtual Ironユーザにとってもメリットあるソリューションとして進化してゆくことになります。
Oracle社Virtual Iron買収発表資料より一部引用
また、同社はこれまでの5回投資ラウンドで、東海岸のベンチャーキャピタルを代表するHigh Land Capital、Matrix Partnersなどから合計 $65Mの投資を受けており、数ある仮想化ベンダーの中で最も資金調達に成功している会社の1社と言えます。そして、2008年Q4は前年同比で130%up、2009年Q1は65%upと好調で、顧客基盤は世界で2,500社を超えています。
何故、この両社の買収が成立したのかをを少し考察してみましょう。
Oracle側からすると、CitrixやVirtual Iron同様にXenベースの仮想化ソフトOralc VMを提供する中で、オープンソースのXenロードマップに影響を与えたいとの意向があったのではないかと考えられます。つまり、その開発コントロールをCitrixに持っていかれている状況を回避したいからです。一方でVirtual Ironは、カッティング・エッジな尖ったテクノロジーを持ちながらも、ブランディング面では競合他社に太刀打ちできるほどの成功に至っていなかったというのが実情でしょう。
仮想化を巡るベンダー勢力図は、刻々と変化しています。2月にはCitrixによるXen Server無償化を宣言し、MicroSoftとの更なる提携を発表し、RedHatは、昨年末に買収したQumranetをテクノロジーを統合したKVMベースの戦略を発表しています。これに負けじと、4月にはVMwareがプライベートクラウドとパブリッククラウドの連携を可能にする業界初のクラウドOSを発表しています。そして、OracleはSun買収によりSun xVMを統合し、新たにVirtual Ironのテクノロジー統合をするとともに2,500社の顧客基盤を手に入れることになります。
これにより、従来のVMwareの独壇場の勢力図から、VMware vs Xen vs KVMという勢力図が成り立ち、Xenベースの戦いではCitrix-MicroSoft連合 vs Oracle-Sun-Virtual Ironという形になっていきます。いずれにしても、今回の買収は、両社にとってもユーザにとっても良い方向に傾くのではないかと期待しています。
ちなみに、ちょっと宣伝で恐縮ですが、日商エレクトロニクスでは仮想化マルチベンダー・ソリューションセンター(VMSC)を擁し、Virtual Iron製品をはじめ、「VMware vSphere」、「Citrix XenServer」、「MicroSoft Hyper-V」の4製品の比較検証環境を用意して、お客さまにとってのベスト・プラクティスを提供していますので是非ご活用ください!