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シリコンバレー駐在のIT商社マン、榎本瑞樹(ENO)が綴る米国最新ICTトレンド

【速報】Enterprise Cloud Summit in Las Vegas(1)

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本日から始まった「Enterprise Cloud Summit」と明日から始まる「Interop Las Vegas」に参加するため眠らない街ラスベガスに来ています。インフルの影響で出張を取りやめになった方も多いのではないでしょうか。

っということで、これから3日間カンファレンスの様子を現地からレポートしてゆきたいと思います。

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「Enterprise Cloud Summit」は、5月18日-19日の2日間、マッカラン空港から車で10分のラスベガス大通りの一番南に位置する「Mandaley Bay Hotel」で行われ、今回が初回の開催となります。有償カンファレンスにも拘わらず世界中から300名以上の参加者が集結していました。

初日の目玉は、Werner Vologs氏(Amazon, CTO)、Mike Repass氏(Google, Product manager)、James Staten氏(Forrester Research, Principal Analyst)といったところでしょうか。明日の基調講演では、Russ Daniels氏(VP and CTO, HP)、Vishal Sikka氏(CTO, SAP)、Ric Telford氏(VP, IBM)と蒼々たるメンバーが登壇する予定になっています。

今回のカンファレンスは、「エンタープライズ企業は、どのようにクラウドコンピューティングを適用してゆくか?」ということに焦点を当て、もはや「クラウドとは何ぞや?」という議論は少なく、「クラウドを適用する時の課題は何なのか?」「その時のリスクは何なのか?」「それらをどのように解決するのか?」といった視点での議論が数多く繰り広げられました。

 それでは、AmazonのCTO、Werner Volgs 氏のセッションを振り返ってみたいと思います。このセッションは、モデレータからの質問に回答するという形で進められました。

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コンシュマーには良いが、エンタープライズには向いていないのでは?

 NASDAQが提供するMarket Replayでの実績を披露しながらエンタープライズでも十分利用できることを解説した。Market Replayは、株式市場の過去の動向のリプレイとその分析を提供しているアプリケーションで、市場データの履歴の保存にAmazon S3を利用している。コンセプト立案から実際の稼働までわずか6ヵ月でサービスインができたとのことで、マーケットインまでのスピードとコストパフォーマンスを強調。

McKinseyは、クラウド化すると2倍のコストがかかるとレポートしているが?

 議論は、4月に発表されたMcKinseyが発表した"Clearing the Air on Cloud"(クラウドコンピューティングの真実)と題するレポートに及んだ。本レポートを要約すると、クラウドコンピューティングは中小企業には向いているが、大企業が採用するのには適していない。具体的にはデータセンターを活用して、オンプレミス型で構築した場合のコストは、1CPUあたり$150/月に対して、Amazon Web Serviceを利用した場合には1CPUあたり$366/月と2倍以上に膨れ上がるというもの。更に、企業がハードを保持することは減価償却の計上によるメリットを享受できることからも、オンプレミス型の方が得策であると結論付けている。

 この質問に対してWerner氏は、「単一のハードウェアだけではなく、ビジネス回復力を含めたTCOを考える必要がある。」と回答し、The Indy 500の例を引き合いに出して解説した。同Webサイトは、レース中のドライバーのコックピットからの映像など複数のビデオストリームを配信するなどフラッシュ環境で構築されている。ピーク時は非常にロードの高いアプリケーションであり、それをメンテナンスするために多くのエンジニアをデータセンターに送り込んでいるとのこと。しかしながら、このアプリケーションは年間3回しか利用しないというもので、これらをAmazon Web Serviceに移行することで、75%のコスト削減に成功した。つまり、スケールダウンも含めたフレキシビリティが重要である。

PaaS vs IaaS、どちらがエンタープライズに適している?

 Googleの提供するPaaSはPython言語で縛られており、ベンダーロックインされているのが現状であり、「我々は、開発エンジニアに特定のプログラミング言語で縛り、その技術を強いるようなことはしたくない。ベスト・オブ・ブリードでテクノロジーを選択してゆくべきである。」と、たとえ自分自身が犠牲になったとしても、大切なことは何でもオープンに開放してゆくとの見解を示し、特定ベンダーにロックインされるようなクラウド環境は好ましくないと強調した。

エコシステムを提供するスタートアップに積極的に投資してゆく?

 Amazon EC2上でJ2EEのプラットフォームを提供しているStax Networksを例に出しながら、エコシステムを提供するスタートアップ企業の重要性を語った。これを利用することにより、J2EE標準アプリケーションは、再コーディングすることなくクラウド環境に移行することが可能になる。このような企業には戦略的に投資をしてゆくとのこと。

 しかしながら、ロードバランシング機能や自動スケーリング、モニタリング機能などの機能を同社の提供するEC2に機能追加してきており、Amazonエコシステムの代表格であるRight Scale社などと競合する一面も出てきているというのも事実。

エンタープライズにクラウドは適しているか?

 「エンタープライズ企業のIT部門にクラウドを適用することは、避けられないだろう。」「コンシュマーは、自分自身でデータを保存するよりもクラウドに預けた方が安心だと思っている。」と、同じことがエンタープライズ企業においても起こりえると推測している。例えば、ニューヨークのウォール・ストリートには、データセンターが建設できるスペースがないとのことで、いずれはクラウドに預けることになるだろうとのこと。

 最後に「今はクラウド時代の幕開けであり、顧客の意見に耳を傾け、我々のサービスを顧客からのニーズに合わせてゆきたい。」と締め括った。

 その他の講演者より、SLAやセキュリティ、データのポータビリティ、SOXやPCIなどの法規制への対応、アグリゲーション問題などのクラウドの課題やソリューションの話があり内容の濃いカンファレンスでした。その辺りの情報も、順次アップデートしてゆきたいと思います。

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