ニューヨークのCloudはCrowdだった!
Cloud Computing Conference & Expoが開催されていたニューヨークに行ってきました。
このカンファレンスは、3月30日-4月1日の3日間、45th streetとMasison Aveにある伝統あるRoosevelt Hotelで開催され、今回で2回目を迎えます。前回サンノゼで開催された第1回と比較して出展者数、参加者ともに格段と増えており、関係者の話によると37カ国1,500名の参加がありました。
IBM、Microsoftがプラチナスポンサーを飾りSun Microsystems, CA, EMC, Rack Spaceと大手ベンダーが続き、3Tera, Right Scaleなどスタートアップ企業も多数参加が見られました。
初日の基調講演はDr.Werner Volgels氏(Amazon, CTO)が、そして翌日にはDr.Kristof Kloeckner氏(IBM, Cloud CTO、3日目にはDavid Dougleas氏(Sun Micro Systems, Cloud SVP)と蒼々たるメンバーが登壇し会場を盛り上げた形となりました。
メイン会場は満席で、隣の会場からから急遽椅子を持って来ましたがそれでも足りずに立ち見がでるほど盛況ぶり
Dr.Werner氏は、冒頭に同社の事例であるANIMOTOで作成したビデオを流しながら、NY Times、Washington Postなど、いくつか事例を披露したのでここで紹介しておきたいと思います。(多少語りつくされている感はありますが、やっぱり直接聞くと説得力ありますね。)
<ANIMOTO>
デジカメの写真(イメージ)と音楽をアップロードすると、自動的に写真を分析し組み合わせユニークでかっこいいスライドショーを作成してくれる。この動画をYoutubeに変換してユーザ同士で共有することができるというもの。このサイトは50台のサーバで運用してきたそうですが、Facebookと連携することにより3日間でユーザ数が10倍になり、サーバを3,500台に即座にスケールアウトしたというお話です。Amazon EC2、S3、SQSを活用したからこそ、耐えられたという非常に分かりやすい事例。
<New York Times>
1851年から1980年までの過去の記事をオンライン公開しようというプロジェクト。1100万枚のスキャンされた画像4TBをPDF化する必要があった。1100万枚の画像をバッチ処理するのに100台のサーバと4TBのストレージ容量が必要になり、Amazon EC2、S3を利用することになった。従来であれば1ヵ月かかる作業をたった1日で完了し、かかったコストはわずか$240という事例。
<Washington Post>
1993年から2001年までの間、ファーストレディを務めたヒラリー・クリントンの毎日の行動を公開するというプロジェクト。17,000ページにも及ぶ検索不可能な質の低いPDFファイルをWebベースで公開するのに、Amazon EC2上で200台のサーバを立ち上げ1枚当たり1分で処理、26時間後には完成しかかったコストはわずか$144という事例。
それから、Amazon Web Serviceができた社内の歴史も語りました。
「70/30から30/70へ変革」
Amazon.comのEコマース・サイトにおいて、エンジニア・リソースの70%がネットワーク、ストレージ・クラスタなどのインフラ障害対応に費やされていて、本業であるEコマースサイトをどう効率よくするかというシステム開発に時間が割けない状態が続いていました。そこで、ハードウェアは壊れる前提で物事を考え、仮想化や分散処理、SOA技術を屈指した共有サービス・モデルに移行したとのこと。最終的には0%にはならないものの許容範囲であるリソースの30%程度に削減することができ、エンジニアはインフラ管理から解放されることとなりました。これらの経験から、拡張性、コスト効率化、信頼性、セキュリティに強い今の姿のAmazon Web Serviceが完成し、真のInfrastracture as a Service(IaaS)になったとのことでした。
そして、自社のインフラ資産ををCAPEX(資本的支出額)からOPEX(事業運営費用)に転換することができたとのこと。つまり、自社の持つIT資産を武器に利益を生み出すサービスとして事業転換に成功したということですね。
今では本業であるAmazon.comの帯域幅をAmazon Web Serviceを超えているということで、このスライドも印象的でした。
そして最後に、
"Cloud Computing is a reality today, only because of Amazon". "All you need is AWS URL & Credit Card"
と満席の会場から笑いを誘い講演を締めくくりました。
それから数時間後、David Chappell氏の”Introducting Windows Azure”というホワイト・ペーパーが会場で配布され、Yousef Khalidi氏(MicroSoft Distinguished Engineer)によるWindows Azureのアップデートがありました。
Azure Service Platformは、既存のSQLサーバ、NETサーバ、SharePointサーバ製品などの5つのサーバ製品の機能がサービスとして提供されるプラットフォームとのことで、以下3つの特徴を強調していました。
1.拡張性あるホスティング
-仮想化されたコンピューティング環境、仮想ネットワーク、スケールアウト
2.自動化されたサービス管理
-単純なサービスではなく管理されたサービスであることを強調
3. スケーラブル、可用性、耐久性のあるストレージ・サービス
-低価格のコモディティ化されたハードウェアを利用
-レプリケーション、ロードバランス機能の適用
同氏は「今はAmazonに遅れをとっているけれど、より現実味のあるサービスにすべく活動してゆきたい」とのことで、開発者向けCTP(Community Technology Preview)として公開されているWindows Azureのフィードバックを強く求め講演を締めくくりました。
さすが人気のマイクロソフト、時期、価格、適用範囲などベールに包まれている部分も多いためか会場からの質疑応答は10名にも上り、注目の高さを感じました。
カンファレンス当日はIBMからクラウドの標準化を推進する”Open Cloud Manifest”が発表され、AmazonもMicroSoftも調印しないというニュースがあったのですが、両者とも直接的な言及はありませんでした。
標準化をめぐる議論については、パネルディスカッションでも盛り上がっていたので、次回のエントリーで触れていきたいと思います。