アスクルの倉庫火災と、太陽光発電システムにおける災害リスク
アスクルの倉庫火災がようやく鎮圧したようです(※2/28に鎮火報告。2/22時点では「鎮圧」でした。お詫びして訂正します)。アスクルにはオフィス用品の通販としてお世話になっている読者も多いのではないでしょうか。私も新人のころに、必要な物品や先輩から頼まれたものを発注した思い出などがあり、なじみ深い企業です。原因究明とともに、早期に復旧されることを祈ります。
埼玉県三芳町の物流センターで先週(2017年2月16日)発生したこの火災ですが、その翌日17日の記事では「鎮火まであと1~2日」と発表されていたものの、2月20日に発表された情報では「鎮火のめどが立っていない」と変更されていました。
予想以上にこの火災が長引いたようで不思議に思っていたのですが、その原因の1つにどうやら「ソーラーパネル」への延焼が関わっていると聞き驚きました。
消火活動が長期化していた理由について、
「消防は、建物の2階と3階には窓がほとんどなく、外からの放水が難しく、屋上にはソーラーパネルがあり、水をかけると、消防隊員が感電する恐れがあるため、直接、放水することができませんでした。さらに建物の中の温度が一時、500℃に達し、熱で壁がゆがむなど倒壊の恐れもあり、慎重に活動する必要があった」
と発表されていました。
「窓が少ないこと」「倒壊の恐れがあること」という要因とともに挙げられているのが「ソーラーパネルへの放水による感電リスク」でした。
実は、災害時における太陽光発電システムの取り扱いについては、これまでも何度か課題として挙がっています。2015年に起きた日本各地の豪雨被害の際には、水没した太陽光発電設備が多く発生し、「接触すると感電する恐れがあるため専門家に任せるように」という告知もされています。
▼水没した太陽光設備は専門家以外さわってはいけない - スマートジャパン
消防研究センターの技術資料では、すでに発生している太陽光発電システムが関わる火災や感電事案などを踏まえて、太陽電池モジュールの特性や、その火災・感電時の事例や実験内容が詳しくまとめられています。
▼消防庁消防大学校 消防研究センター 消防研究技術資料
「太陽光発電システム火災と消防活動における安全対策」
また、産総研の太陽光発電研究センターからも技術資料が公開されています。下記に表を抜粋して紹介します。
▼国立研究開発法人 産業技術総合研究所 太陽光発電研究センター
「太陽光発電火災発生時の消防活動に関する技術情報」
最新の設備・テクノロジーは、便利な半面、こうした災害時に思いもよらない被害が起こってしまうリスクもあります。日経ビジネスオンラインが2016年9月に取材した際の紹介記事では、このアスクルの該当施設がいかに最新の設備を取り入れ、効率化が図られていたかが伺え、その挑戦に対してこうした状況が生まれてしまったのは残念でなりません。製造業においてもこうした設備投資は常に行われていますが、同時に災害へのリスク対策についても、いま一度見直す必要があるのかもしれません。
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