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ヤフーの新卒一括採用廃止と、ノーベル賞・大隅教授の寄稿から考える「若者の仕事」

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今週から毎週水曜にTechFactoryで新たに発行するメルマガ「TechFactory通信(設計・製造編)」のコラムを担当することになりました。毎週書くということで、これはつまり「山岡週報」である...!というわけで、毎週気になったニュースやコンテンツを取り上げたコラムをこちらにも流用して定期更新していこうと考えています。

早速ですが、今週のピックアップはこの2つ。

●ヤフー、新卒一括採用を廃止 30歳以下は通年で応募可能に - ITmedia ビジネスオンライン

●「役立つ」研究求める日本の風潮を危惧 ノーベル賞・大隅教授の寄稿に注目集まる - ITmedia ニュース

一見すると関連性は無いようにも見えますが、これはどちらも「若者の仕事」が根底にある話題といえるでしょう。

ヤフーは今年10月から新卒の一括採用を廃止し、経歴や経験にかかわらず30歳以下であれば誰でも通年で応募できるようになります。「従来のように新卒、既卒、第二新卒などの枠にはめず、幅広く人材を募集することで、より優秀な人材、多様な人材を確保できるようにしたい」とのこと。

日本の就職活動では「新卒一括採用」が一般的となっていましたが、この制度にはいくつかの大きなデメリットがあります。ヤフーはそこに切り込みました。

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【新卒一括採用のデメリット】

  • 在学中に就職活動が本格化するため、学生の本分である勉学の時間がとられる
  • 就職活動する際の景気が悪ければ就職できないという不平等があり、新卒時に就職できなかった年齢層はそのまま社会で滞留してしまう
  • 内定を取れない場合、「新卒」で就職するために留年をしなければならない

などなど。就職活動に注力しすぎて単位を落としてしまい、その結果内定も取り消されてしまったという本末転倒な出来事も耳にします。

関モノづくり研究所代表の関伸一さんともこの件についてFacebookで会話していたのですが、

「大学生が4年間めいっぱい勉学に励めるような仕組みにしないと、国力の礎となる「学力」が低下する一方になると考えています。」

「働き方も、就活ももっともっと多様化と柔軟さが必要だと思います。数年前の学生フォーミュラ取材時に「昨年某自動車会社に内定したのですが、学生フォーミュラと学業の両立が厳しくて一単位不足で留年、内定も取り消されました。」という学生さんがいました。もちろん自分自身の力も不足だったのでしょうけど「その自動車会社、一年くらい待ってやれよ!」と思いました。」

というコメントをもらいました。この学生さんに私はお会いしていないので何とも言えませんが、新卒一括採用だと、こういう学生を次年度で優遇するといった対応すらしていないのではないでしょうか。ヤフーの制度では「応募から2年以内に入社することが条件」ということなので、この制度なら上記の学生さんも取り消しになっていなかったかもしれませんね。ちなみに、学生フォーミュラについては関さんによるレポートがMONOistで上がっています。記事タイトルは「サークル活動と甘く見るな! 学生フォーミュラは企業も顔負けのモノづくり対決」ということで、このイベントに挑戦するような意欲の高い学生に対して、いかに勉学や研究に没頭できる環境を提供できるかというところが、今後の日本のモノづくりの底力にも繋がっていくのではないかと思います。

また、景気に左右されるという観点で言えば、東芝が2017年4月入社の新卒採用を中止したというニュースが象徴的でしょう。市場の流れに大きく左右されてしまう「新卒一括採用」という制度の危うさが見えます。

そうしたなか、先日ノーベル医学・生理学賞の授与が決まった東京工業大の大隅良典栄誉教授が昨年寄稿した文章のなかでも、若者の研究活動に対して以下のような危惧をいだかれていました。

「若者がほとんど就職試験での模範回答のごとく、考えもなく"役に立つ研究をしたい"という言葉を口にする。直ぐに企業化できることが役に立つと同義語の様に扱われる風潮があるが、何が将来本当に人類の役に立つかは長い歴史によって初めて検証されるものだという認識が、研究者の側にも求められていると思う」

可能性のある「若者」を「長い目で見る」ことが、個人にとっても企業にとっても今後の成長に欠かせないのかもしれません。

学生の本分である「勉学」「研究」に励みたいという意欲を持つ学生にも一斉に訪れてしまう「新卒一括採用」。すべての会社がヤフーのように新卒一括採用を撤廃すればいいというわけでもないとは思いますが、一律に同じ年齢層の人間を戦力として大量に採用するという日本企業の採用制度へ一石を投じたのは確かです。

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