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スティーブはもうライブをやらない

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 偉大なパフォーマーでコンポーザー、プロデューサーのスティーブ・ジョブズがライブをやめると宣言した。彼が作り上げた不世出のロックバンド「Apple」のステージから降り、これまでバッキングに専念していたティム・クックがフロントマンとなる。

 話は1970年代にさかのぼる。最初は、地元で意気投合したもう一人のスティーブ、ウォズとのフォークデュオ「Two Steves」だった。Two Stevesがガレージで作った手作りの「Apple I」は正規ルートでは流通しなかった。インディーズだったので200枚のみ。スティーリー・ダンっぽい写真が当時の音楽性を物語る。

 その後ヒットするに従ってどんどんバンドメンバーが増えていき、初期ヒットのApple IIは売れ続けた。Apple IIを、トッド・ラングレンがカバーしたこともあった。 Utopia Graphics System。Apple IIをグラフィカルに拡張したようなものだった。トッド・ラングレンはその後もAppleと友好な関係を続け、スティーブ不在の時代にだが、広告に出演したりしてる。ミュージシャンズ・ミュージシャンに愛されたバンド、それがAppleだった。

 だが3枚目のApple IIIは悲惨な結果に終わった。バンドの立て直しを図るためにスティーブは新メンバーを見つけた。イーストコーストで甘ったるい曲を次々とヒットさせていたジョン・スカリーだ。「死ぬまで砂糖水を売り続けるの?あんた」

 ジョン・スカリーはバンドの中核メンバーとして参加し、ウォズに代わってスティーブと組む、新たなツートップとなり、2人は「ダイナミック・デュオ」とも呼ばれた。

 スティーブにはバンドに隠れてこっそりスタートしていたアルバムプロジェクトがあった。パロアルトにあるジャズバンド、ザ・ゼロックスのギタリストであるアラン・ケイが実験中のSmalltalkという曲に、未来を見いだした(よく対バンでいっしょになっていたビル・ゲイツも同じところに目をつけて、Windowsという曲を作り始めるのだが、それは別の話)。

 スティーブが自分の娘の名前をつけたLisa、そしてその続編として予定していたMacintosh。この2つのアルバムは並行して進められていた。スティーブは若いが腕のたつメンバー、アンディ・ハーツフェルドやビル・アトキンソン、スティーブ・キャップスらとともにスタジオにこもり、海賊旗を掲げてレコーディングを続けていた。

 ヴァン・ヘイレンが「Jump」を含む名作アルバムを出した同じ年、「Macintosh」がリリースされた。サンプリングを多用した、これまでとは次元の違う新たなサウンドは音楽業界だけでなく、カルチャー全体に大きな衝撃を与えた。リドリー・スコット監督によるPVも大きな話題を呼んだ。

 有名な映画監督がPVを撮るという点では、ジョン・ランディス監督によるマイケル・ジャクソン「Thriller」に、わずかに先を越されてしまった。

 しかし、派手で利己的な言動が災いして、デビッド・リー・ロスと時を同じくして、スティーブは脱退を余儀なくされる。レーベルと結託してバンドの主導権を握ろうとしたジョン・スカリーに追い出されてしまったのだ。

 スティーブは脱退後、さらに高品質なサウンドを追求するため、しばらく表舞台から去ることになる。

 スティーブが去ったApple。当初はスティーブが残したデモ曲にカラフルな味付けをして改変した「Macintosh II」などで産業ロックを続けてそれなりに売れていった。スティーブに替わるフロントマンとしてフランスから呼んだジャン・ルイ・ガッセーのエスプリがたっぷりはいった、重厚なサウンドだ。

 しかし、ジョン・スカリーにはリーダーとしての不安があった。「昔の曲をやれ」とか「ボーカルはスティーブのほうがうまかった」「ジーンズが似合わない」「砂糖水でも売ってろ」とかいう声が上がる。これに反発するように、ジョンは「Knowledge Navigator」という壮大なコンセプトを打ち出したが実体化はせず、ノマド層を狙った「Newton」をリリースするが、大コケしてしまう。

 レコーディングに金がかかりすぎたり、ツアーに金を使いすぎたりでバンドの資金はだんだん枯渇。昔のメンバーがどんどん抜けていった。最後にはレコーディング用の経費まで回せなくなった。これではまずいというのでレーベルからスティーブに声がかかる。「戻ってバンドを立て直してくれ。君のバンドだろ?」

 スティーブは自らのバックバンドをそのまま引き連れてAppleに復帰。バックバンドの名前はNeXT。カーネギーメロンの学生を中心としたバカテクのプログレバンドだ。ジョン・ルービンシュタイン、アヴィー・テヴァニアン、ほぼそのメンバーのままAppleにバンド名を変えた。そこからが快進撃のスタート。

 セットリストを絞り込み、演奏時間は短いが、すぐれた曲しかやらない。Newtonとかはその後二度と演奏することはなかった。復帰後の最初のヒットがボンダイブルーの半透明ジャケットで話題を呼んだ「iMac」。数年後には1枚のアルバムに1000曲を詰め込むという前代未聞の「iPod」がそれを上回る世界的なヒットとなり、単なるロックバンドを超える存在となった。

 スティーブはiPodから、iTunesという電子楽器を導入した。これ以降のAppleのアルバムのほとんどに使われることになる、彼らにしか使えないオリジナル楽器だ。ある意味、10cc/Godley & CremeのGismoに近いものだ。

 このiTunes用にサウンドを提供したのが、Pixar。以前のバンマスが離婚問題で資金難になっていたところを救ってあげた経緯から、スティーブが新しいバンマスに祀り上げられた、フュージョンバンドだ。テクニックはあるんだが、ぜんぜん売れない。どうしたもんかと思っていたが、これまで実験的な短い曲しか作ってこなかったが高い評価を受けてたコンポーザーのジョン・ラセターにフルアルバムをまかせるというアイデアが生まれた。

 それがToy Story。Disneyレーベルから配給され、世界的なヒットになる。スティーブはあくまでサイドマンとして楽しむ立場だが、iTunesと連動することで、結果的にAppleの音楽性を広げることになった。

 そして、新世代のSgt. Peppersと言われる「iPhone」。これまでコンセプトアルバムはいくつもあったが、3つのコンセプトを1枚にまとめたものはなかった。そしてそれは成功した。これがその同名タイトル曲だ。

 しかし、スティーブは病魔に襲われる。そのあたりからはみなさんもご存知だろう。これはその体験をテーマにした、彼のソロシングル「Stay Hungry, Stay Foolish」だ。教科書にもでてくるから聴いたことあるんじゃないかな。

 Appleのバンドメンバーはどんどん成長していった。ジョナサン・アイヴ、フィル・シラーは当初からリードボーカルをとれてたし、若いスコット・フォーストールもスティーブに似た声質、パフォーマンスで人気を得るようになった。そして、リズムの重鎮、ティム・クックがいる限りバンドに結束が乱れることはない。もう安心だ。彼も歌える。

 だからスティーブがステージにあがらなくなっても、みんなは安心していい。でも、10年後、20年後には再結成ツアーをこじんまりとしたライブハウスでやってほしい。そのときはライバルバンドのボーカルだったビルとジョイントでやるといいよ。前にも一度ジョイントライブやったことあったろう

 そのときはサインしてもらえるように、スティーブ時代の代表的なアルバムを持っていこう。iPhone、iPod、MacBook Airあたりかな。128kとかMacintosh Plusとかはやめたほうがいい。「もう書いてあるだろう?」とスティーブは言うはずだ。

※このストーリーは、Twitter上での下記のやりとりをベースにしています。いろんなアイデアをくださったみなさま、ありがとうございます。
※このエントリーのコメント欄には、スティーブ不在時代にもいい曲があった、という、めのう、アネハ両氏からの情報があります。ぜひお読みください。

追記:
ジョブズ愛好家なので、@steve_1topiというONETOPI「スティーブ・ジョブズ」トピックのキュレーターをやってます。よかったらどうぞ。もうすぐiPhone版アプリも出ますので。

4ページにわたる:スティーブ・ジョブズ名言集(最新版) « WIRED.jp 世界最強の「テクノ」ジャーナリズム http://r.sm3.jp/2BQV #1tp
posted at 13:21:01

著者であるWalter Isaacson氏は定期的にジョブズ氏にインタビューを行い、伝記の最終章に取り組んでいる最中:ジョブズ氏公認の伝記にはCEO辞任に関する内容も追加へ - 気になる、記になる… http://r.sm3.jp/2BPL #1tp
posted at 12:33:01

ロバート・X・クリングリーの翻訳:Long Tail World: ジョブズ辞任には第2幕がある:Cupertino Two-Step - @cringely http://r.sm3.jp/2BPD #1tp
posted at 12:31:02

市場全体も同じくらい下がっており、現在のところジョブズ氏の退任がAppleの株価に与える影響はあまりないものとみられているようです:ジョブズ氏のCEO辞任騒動後もAppleの株価は安定している - 気になる、記になる… http://r.sm3.jp/2BPA #1tp
posted at 12:29:00

イノベーターとしての手腕を賞賛 RT @nitecruise: SJの引退に関するポール・アレンのコメント http://r.sm3.jp/2BPg バルマー&ゲイツはコメントを拒否 #1tp
posted at 12:00:11

ジョブズはロックスターという観点でブログ書きました:スティーブはもうライブをやらない:CloseBox and OpenPod:ITmedia オルタナティブ・ブログ http://r.sm3.jp/2BOK #1tp
posted at 11:31:01

アップルは今後5年間の製品計画を既に立てている。その上、「ジョブズ氏の考え方や、10年後についての彼のビジョンを深く理解している優秀な幹部が多くいる」:CNN.co.jp:米アップル、ジョブズがいなくても大丈夫な理由 http://r.sm3.jp/2BOI #1tp
posted at 11:29:01

これはww:台湾のおばかアニメが今回はSteve Jobsの半生を描く(彼らにしてはおとなしい作品?) http://r.sm3.jp/2BOx #1tp
posted at 11:12:01

鈴木淳也氏の記事 RT @itm_pcuser: スティーブ・ジョブスは“役者”でもあった:プレゼンテーションで振り返る“Apple=ジョブズ” http://r.sm3.jp/2BN9 #1tp
posted at 09:31:01

ジョブズが所有する特許。Mac、iPhone、iPod、NeXTなど、製品化されていないものも含めて:Steve Jobs’s Patents - Interactive Feature - NYTimes.com http://r.sm3.jp/2BN5 #1tp
posted at 09:04:00

「スティーブが築いたものはわれわれのDNAの中にある」:Appleの新CEO、ティム・クック氏が「Appleは変わらない」と強調 - ITmedia ニュース http://r.sm3.jp/2BMm #1tp
posted at 07:56:00

Comment(4)

コメント

【めのう】

ヒット曲「iPhone」はもうすぐアルバム化出来そうな勢いだけど、当初から楽曲のディテイルの端々にはNewtonのそれが使われていたり、アレンジを加えるたびにNewtonのサンプリングが増えるようになってきてるよね、スティーブ。

アネハ

でも、私が一番好きだった曲は、スティーブがいない時代の「QuickTime」でした。当時の「バッキングの人達のパフォーマンスが充実していたライブ」も捨て難いものです。

【めのう】

復帰後第1弾のミリオンヒット「iMac」も実は曲の構成はアメリオ時代に作られたもので、曲のおおまかなアレンジも「baby Mac Concept」と言うコロンとしたCRTディスプレイが本体と言うものが既にあった。但し、ジョブズのアレンジとプロデュースが無ければあそこまでのメガヒットにはならなかったんじゃないかな。そうだろ、スティーブ?

shikou_sensya

こんにちは。ここにコメント書いてもいいのですか?「スティーブはもうライブをやらない」あまりにも例えがうますぎて感動しました。つーか、おいおいどどどどうするよって不安な気持ちがちょっと和らいだ気がします。ありがとうございました。でもやっぱりつらいな…

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