Kindle>iBookstore>越えられない壁>国産電子書籍サービスとなる最大の理由
iTunes Storeが登場したとき、最も先進的だったのは、「DRMのゆるさ」でした。実際はゆるいわけではなくて、利用者がDRMのしばりを感じない程度に設定していたのです。当時のライバルであった(過去形)Windows DRMのデバイス台数しばりが非常にきついものだったので、「購入したコンテンツはPC 5台までは利用可能」「CDにもほぼ自由に焼ける」というのは画期的でした。
しかし、ここでライバルが出てきます。書籍というコンテンツだけとはいえ、AmazonのKindleは、「登録でバイスの制限なし」という戦略。「WindowsでもMacでもKindle(ハードウェアの)でもiPhoneでもiPadでもBlackBerryでもAndroidでも、それぞれ何台でも」同一アカウントで購入したコンテンツを同期できます。しかも、Whispernetという非常にすぐれたクラウドベースの同期テクノロジーで。
そして、iTunes Storeの「5台制限」が現状では非常に厳しいしばりとなってきています。あなたが持っているデバイスの数をカウントしてください。
・iMac
・MacBook
・iPod
・iPhone
・iPad
iPod、iPhone、iPadはカウントされないのですが、iMacとMacBookを同じApple IDで使おうとすると、スロットは2つ消費されます。
うちは5人家族なので、1人1台だけで制限いっぱい。だからMacBookを追加購入することはできないのです。
Amazon Kindleはデバイス数での制限はないので、AppleはAmazonへの対抗上、この制限をゆるめざるを得ないと個人的には考えています。
Appleですらこんな状況なので、日本の電子書籍サービスが台数を1台に制限したり、各プラットフォーム1台とかしばっているのは非常にバカバカしく、それでiBookstoreやKindleに勝とうと思ってるの?と疑問視してしまうのです。複数デバイスを持っている人は同じコンテンツを複数買えというの?(実際はそれすらできない。想定していない)
iTunes Storeに敗れ去って行った無数の国産音楽配信サービスの仕様をいまから思い出してみるといいかもしれません。
追記:これに唯一対抗できるのは、DRMフリーです。ダイヤモンド社の動きにはとりあえず注目しておきます。
・日本の電子書籍を牽引するのはダイヤモンド社だと思う
追記:iTunes Storeの登録デバイスは、PCとMacは母艦としてカウントされるけど、それぞれの母艦の配下にあるデバイス(iPod、iPhone、iPad)は無制限という指摘を受けました。たしかにその通りなので本文を書き直しました。この件は昔エントリーにもしていてわかっていたはずなのに……。
・Apple TVは、「一家に二台」が可能
ここで再び考えてみました。iPadやiPhoneが母艦なしのスタンドアロンで動作するようになったらどのようにカウントされるのか?
iPadが母艦不要になったとすると、iPadは母艦として扱われるのか、母艦の配下デバイスとして扱われるのか。その場合、5台制限がどのように適用されるのか?
単にプレーヤーとして見た場合でも、PCは差別されてるんですよね。というか、iPod、iPhone、iPadがDRM上は優遇されている。だから、Windows 7タブレットが「iPadのようにiTunesが走るデバイスですよ」といっても、母艦として登録されてしまうので、スロットが1つ減ってしまう。
AppleにとってPCの時代は終わってるんですね。
いまのiTunes Storeの母艦5台、配下デバイス無制限は、母艦ありきだから成立するものかもしれません。クラウド母艦を前提とする場合にはどんな仕組みが最適でしょうか? やはりKindleのような仕組みかな、と思うのですが。
追記:はてブのコメントで一部わかってない人がいるらしいので、改めて書いておきますが、このエントリーの趣旨は、「Windows Media DRMでの失敗を繰り返すな」ということです。着うたとの比較はぜんぜん想定してなかったなあ。PC向け音楽配信のつもりだったから。どうねじまげたらそういう発想に至るのか、不思議です……。
追記:国産電子書籍サービスの購入体験をまとめてみました:
・国産電子書籍サービスのデバイス制限、課金システム、購入体験をまとめてみた