オルタナティブ・ブログ > 『ビジネス2.0』の視点 >

ICT、クラウドコンピューティングをビジネスそして日本の力に!

中国ヒューマノイドロボットの商用化が新段階へ、Unitree・AgiBot・UBTECH・Galbotの導入事例から読む競争軸

»

中国のヒューマノイドロボット市場が、「技術を見せる段階」から「実際の仕事で価値を証明する段階」へ進み始めています。TrendForceは2026年8月19日、中国市場が同年に150億元へ達し、量産と用途拡大を背景に2027年も60%以上成長すると予測しました。

自動車、電子機器、航空宇宙、物流、エネルギーなどで導入が進む一方、注文には正式調達だけでなく予約や協業も含まれます。市場規模が伸びても、それだけで事業として成立したとは評価できません。

今回は、何が商用化を後押ししているのか、なぜ再発注が鍵になるのか、量産と利益の関係、導入時に確認したいROIについて、取り上げたいと思います。ChatGPT Image 2026年8月20日 23_08_05.png

中国市場は「できること」より「使われること」を競う段階へ

これまでヒューマノイドロボットは、歩く、走る、跳ぶといった高度な動作が関心を集めてきました。TrendForceによると、Unitreeは2026年のWorld Robot Conference(WRC)に先立ち、新型「Superman」が垂直方向に2メートル跳び、最高秒速12.66メートルで走る動画を公開しています。技術開発は現在も速いペースで続いています。

しかし、市場を見るうえで別の動きが出てきました。2026年のWRCでは、初めて「Procurement Day」が設けられ、企業による調達交渉やサプライチェーンの商談が行われます。展示会で性能を披露するだけでなく、実際に購入する企業と供給企業を結び付ける場が用意された形です。

背景には用途の広がりがあります。TrendForceは、自動車、3Cと呼ばれるコンピューター・通信機器・家電などの電子機器、航空宇宙、物流、エネルギーを導入分野として挙げています。想定される仕事も、資材の搬送、品質検査、物流など具体的になってきました。

ここで市場の評価軸が変わります。「人型ロボットが高度な動作をできるか」という技術評価に加えて、「現場の仕事を任せられるか」という経済性の評価が始まったと捉えることができます。

導入企業は増えているが、「注文」の中身には差がある

商用化が進んでいることを示す事例も増えています。AgiBotは2026年6月までに累計1万5,000台を生産し、3C製造への展開を進めています。UBTECHの製品はAirbusを含む顧客で採用され、GalbotはCATLと協業し、具身AI設備で2億3,600万元の調達案件を獲得したとTrendForceは報告しています。

こうした動きから、中国メーカーが研究施設や展示会の外へ進んでいることは読み取れます。一方、数字を見る際には注意が必要です。

TrendForceが指摘するように、現在の案件には正式な調達、予約注文、購入意向、企業間の協業が混在しています。例えば、予約が1万台あった場合と、1万台が納入され代金が支払われた場合では、事業への影響が異なります。さらに、試験的に数台導入された状態と、工場の複数工程で継続利用される状態にも大きな差があります。

そのため、市場の成長を「受注件数」や「発表された台数」だけで判断するのは早いでしょう。契約、納入、実際の稼働、追加購入という段階を分けて見る必要があります。

商用化の本当の試験は「二度目の注文」にある

TrendForceは、中国のヒューマノイドロボット市場が2026年に150億元へ達し、2027年も60%以上成長すると予測しています。量産が進み、利用できる仕事が増えることが成長の前提です。

では、市場が本格的に成立したかを何で判断すればよいのでしょうか。一つの分かりやすい指標が、導入した顧客からの再発注です。

工場がロボットを初めて購入する理由には、技術検証や将来に向けた実証も含まれます。初回購入だけでは、そのロボットが十分な経済効果を生んだのか判断しにくい面があります。実際に使用した企業が追加購入し、別工程や別工場にも広げれば、現場で一定の価値が認められた可能性は高まります。

その判断を支えるのが投資収益率(ROI)です。ロボット本体の価格だけでなく、保守費用、稼働時間、処理できる作業量、故障や停止の頻度、現場を改修する費用まで考える必要があります。人が行う場合や専用の自動化設備を導入する場合と比較し、総費用に見合う成果を得られるかが調達判断の基準になります。

つまり、ヒューマノイドロボットの商用化は「売れたか」ではなく、「使った顧客がもう一度買ったか」で測る段階へ向かっていると考えられます。

売上が伸びても、メーカーの利益が増えるとは限らない

もう一つ確認したいのが供給側の採算です。市場が急成長していても、ロボットメーカーが継続的に利益を確保できるとは限りません。

提示されたTrendForce資料では、Unitreeの2025年売上高は16億9,900万元で、前年比3倍超となりました。2026年上期も売上高は前年同期比36〜45%増と見積もられる一方、経常的な純利益は6〜22%減少すると予測されています。2026年第1四半期の利益も前年同期比52.55%減だったとされています。

ここから見えるのは、量産には二つの側面があることです。生産台数が増えれば、部品の大量調達や製造工程の効率化によって1台当たりのコストを下げられる可能性があります。一方で、市場形成期には研究開発や生産設備への投資に加え、顧客ごとの設定、導入支援、保守にも費用がかかります。

特に、導入先ごとにロボットの調整や現場改修が必要になれば、販売台数が増えても費用が同じように膨らみます。反対に、搬送や検査など特定の仕事について導入方法を共通化できれば、同じ製品を複数の顧客へ展開しやすくなります。

量産の成否を見るには、出荷台数とともに「1台増えるごとに利益を出しやすくなっているか」を確認する必要があります。

ヒューマノイドだから導入するのではなく、仕事から選ぶ

導入する側にも評価方法の変更が求められます。出発点を「ヒューマノイドロボットを導入したい」と置くより、「どの仕事を、どの方法で自動化すると最も合理的か」と考えるほうが比較しやすくなります。

例えば、搬送であればヒューマノイド以外にも専用ロボットや既存の自動化設備があります。品質検査にもカメラやセンサーを使った専用システムがあります。ヒューマノイドが選ばれるには、こうした既存手段と比較した利点が必要です。

人型であることが価値を持つ可能性の一つは、人間向けに設計された既存環境を利用しやすい点です。大規模な設備変更を抑えながら複数の仕事へ対応できれば、専用設備とは異なる経済性が生まれるでしょう。その一方、特定作業だけを高速かつ安価に処理するなら、専用設備のほうが合理的なケースも想定されます。

したがって、今後の競争はロボットメーカー同士だけで起きるわけではありません。ヒューマノイド、専用ロボット、従来型の自動化設備、人による作業を同じ業務単位で比較し、費用、稼働率、作業品質、柔軟性を評価することが、導入判断の中心になっていくでしょう。

今後の展望

中国のヒューマノイドロボット市場は、台数を増やす競争から、継続利用を生み出す競争へ進むと考えられます。量産によって本体価格や製造コストが下がり、同時に搬送や検査などで導入方法の標準化が進めば、顧客のROIとメーカーの採算がともに改善する可能性があります。その結果として再発注が増えれば、実証目的の需要が通常の設備投資へ移る流れが強まるでしょう。

反対に、顧客ごとの調整や保守に多くの費用がかかれば、市場規模が拡大しても収益化には時間を要すると考えられます。今後見るべき数字は、最高速度や予約台数だけではなく、納入台数、継続稼働、追加発注、そして利益です。中国市場が2026年に150億元へ達するという予測以上に、「導入した顧客が再び購入するか」が商用化の進展を判断する材料になっていくでしょう。

ChatGPT Image 2026年8月20日 23_08_41.png

Comment(0)