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AIデータセンターの冷却需要が2035年に約7倍へ拡大 液冷化の進展と運用自動化基盤の選定動向

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米調査会社のABIリサーチは2026年8月、AI処理の拡大に伴い、データセンターの冷却需要が2025年の2880万冷凍トンから2035年には1億9460万冷凍トンへと約7倍に拡大するとの推計を発表しました。年平均成長率は20.1%に達し、施設面積も現在の約20億平方フィートから50億平方フィート超へ拡大すると予測されています。

この需要拡大は、サーバーの高密度化に伴う熱処理の難度上昇と、電力効率の維持という現実的な経営課題を提起しています。単に設備を増強するだけでなく、コストを抑えながら安定稼働を確保する施設設計が求められています。

今回は、AIワークロードに伴う熱負荷の構造、既存施設における改修コストと制約、ソフトウエアによる制御と相互運用性をもとに、データセンター冷却需要急増の背景と今後の実務への影響について、取り上げたいと思います。

ChatGPT Image 2026年9月5日 15_54_16.png

公表データが示す冷却需要の急増と施設面積の拡大

ABIリサーチが2026年8月に公表したデータによると、データセンターにおける熱冷却の需要は、2025年の2880万冷凍トンから2035年には1億9460万冷凍トンに達すると試算されています。年平均成長率は20.1%と算出されており、デジタルインフラを支える熱対策の規模が大きく膨らむ構図が示されました。

同時に、データセンターの建屋面積そのものも拡大を続けると推計されています。2025年時点の約20億平方フィートから、2035年には50億平方フィート以上へと、約2.5倍に達する見込みです。サーバーを収容する空間の物理的な広がりと、1ラックあたりから生じる熱量の増加が同時に進行しており、従来の空調計画をそのまま適用することは難しくなりつつあります。冷却設備は建物の付帯機能という位置づけを超えて、データセンターの稼働継続性と採算性を左右する中核的な投資対象になっています。

AIワークロードとラック高密度化が促す冷却方式の転換

冷却需要が急激に伸びている背景には、生成AIをはじめとする高度な演算処理を行うGPUや専用アクセラレーターの発熱密度の急上昇があります。従来の汎用サーバーを中心とするデータセンターでは、1ラックあたりの電力密度が数キロワットから十数キロワット程度に収まることが多く、冷気を循環させる空冷方式で十分に対応可能でした。

しかし、AIワークロードに特化した高密度ラックでは、消費電力が数十キロワットから100キロワットを超える事例も登場しています。空気による熱移動では排熱が追いつかなくなる物理的な限界が生じており、チップ近傍に直接液体を循環させるダイレクト・ツー・チップ(DLC)や、液冷対応の配管をあらかじめ備えたハイブリッド冷却アーキテクチャへの移行が加速しています。電力消費効率を示すPUE(電力使用効率)を適正水準に保つためにも、空冷から熱伝導率の高い液体冷却への移行は、事業採算を支える基盤技術として不可欠になりつつあります。

高額な刷新費用と稼働停止リスクがもたらす改修の制約

熱対策の強化が急務となる一方で、既存のデータセンターを保有・運用する事業者にとっては、設備の全面的な刷新が容易ではないという現実的な制約が存在します。すでに顧客の基幹業務やクラウドサービスが稼働している施設では、長期間の給排水配管工事や電気設備の入替に伴う運用停止は許容されません。

また、液冷システムの全面導入には、床荷重の補強や冷却水の循環ループ整備、万が一の漏液を防ぐ安全対策など、巨額の資本的支出(CAPEX)が必要となります。AI向けの需要が急速に拡大しているとはいえ、既存の顧客サーバーとAI用高密度ラックが混在する環境では、投資回収期間の長期化が懸念されます。建屋の躯体や受変電設備といった物理的制約を抱える中で、いかに既存資産の寿命を延ばしながら段階的に熱処理能力を高めるかが、現場の実務担当者が直面する判断の分かれ目となっています。

部分改修とソフトウエア制御による現実的な解決策

こうした制約に対し、産業界では既存設備を段階的に近代化する「レトロフィット(後付け改修)」の手法が注目を集めています。無線環境で稼働する温度・圧力センサーや、配管の要所に取り付ける流量制御バルブを追加することで、運用を止めずに局所的な高発熱エリアを冷却するアプローチです。全面改修に比べて工期を短縮でき、初期費用を抑えながら即効性のある熱対策を実現できる点が評価されています。

さらに、冷却設備をハードウエア単体で管理するのではなく、クラウドベースのソフトウエアプラットフォームで統合制御する動きも進んでいます。CoreWeaveやApplied DigitalのようなAI特化型事業者の事例に見られるように、AIアルゴリズムを用いて演算負荷の変動をリアルタイムに把握し、冷却装置の運転を先回りして最適化する仕組みです。設備容量の無駄なマージンを削り、消費電力を抑制しながらサーバーの安全域を保つ手法として、部分改修とソフトウエア制御の組み合わせが現実的な選択肢となっています。

データの標準化と相互運用性が左右する中長期の投資判断

冷却システムの高度化を進める上で、中長期的な成否を左右する基準となるのが、設備データの整備状況と異なるシステム間の相互運用性です。センサーや空調機器、サーバーの管理インターフェースが独自仕様で分断されている場合、収集したデータをリアルタイムの制御に結びつけることが困難になります。

ジョンソンコントロールズやシーメンス、ハネウェルといった大手設備ベンダーがソフトウエア領域の買収やプラットフォーム拡張を進めている背景にも、データモデルを標準化して運用を自動化する狙いがあります。ABIリサーチが指摘するように、今後24か月程度の期間における優劣は、自社の施設全体へ水平展開できる再現性のあるデータ構造を構築できているかどうかにかかっています。特定ベンダーの機器に依存することなく、将来登場する冷却技術や制御AIを円滑に組み込めるオープンなアーキテクチャを選定することが、投資の硬直化を防ぐ要件となります。

今後の展望

データセンターにおける熱管理の高度化は、サーバー製造や設備工事にとどまらず、産業用電力供給や自治体の立地規制、さらには企業の脱炭素情報開示の実務へと影響を広げていくと考えられます。高熱を発するAIインフラの集積によって送電網への負荷が高まる地域では、廃熱の地域利用や水資源の保全基準が立地選定の前提条件となる可能性があります。

この転換の進展を把握するためには、データセンターにおける液冷対応ラックの出荷比率や、冷却に要する電力比率を示すPUEの推移を定点観測することが有効です。また、既存施設における後付けセンサーの普及率や、オープンな設備通信規格への準拠度合いも、運用の高度化を測る先行指標として機能するでしょう。

計算需要の膨張と物理的な冷却能力の限界が交差する局面において、ハードウエアの物理増設に依存したアプローチには限界が生じます。熱対策を単なる設備維持のコストとしてではなく、デジタル競争力を支えるエネルギー効率の最適化プロセスとして捉え直す視点が、中長期的なインフラ投資の持続可能性につながるでしょう。

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