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フォレスターが分析するAI市場の選別 インフラ成長と知識労働サービスの構造変化

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米調査会社のフォレスター・リサーチは2026年8月、人工知能(AI)の進展がテクノロジーおよび関連サービス市場に及ぼす影響を分析した「AIディスラプション・モデル」を公表しました。調査対象となった17のカテゴリー、200以上の市場のうち、明確な拡大が見込まれるのはインフラ、データ基盤、セキュリティの3領域にとどまる一方、人手のスキルに依存してきた受託開発や翻訳などのサービス市場は代替圧力に直面していると指摘されています。

単なる技術検証の段階を終え、業務現場での本格運用や自律型エージェントの活用へ移行するなかで、市場ごとの採算性や競争環境の差異が顕在化しつつあります。技術の進化そのものを追うだけでなく、自社の市場構造がどのように変化するかを把握することが求められています。

今回は、基盤市場への投資集中、知識労働サービスの構造変化、既存ソフトウエアの防御要因をもとに、AI普及に伴うテクノロジー市場の選別と今後の実務への影響について、取り上げたいと思います。

ChatGPT Image 2026年9月5日 15_28_14.png

成長が集中する3つのAI基盤市場

フォレスターの分析によると、AIの本格的な普及によって明確な市場拡大の恩恵を受ける領域は、インフラ、データおよびAI、セキュリティの3分野に集中しています。クラウド基盤やデータセンター、大容量ストレージを提供する企業は、大規模な計算資源を必要とするAIモデルの学習や推論の需要を直接的に取り込んでいます。

あわせて、基盤モデルやAIプラットフォーム、データマネジメント環境を整備するベンダーにも継続的な投資が集まっています。AIを実務に組み込むためには、社内データの統合や品質管理、ガバナンスの確立が不可欠であり、これらを支えるソフトウエア群の価値が高まっているためです。

さらに、ゼロトラストやAIエージェントの挙動を監視・制御するセキュリティ分野も不可欠な存在となっています。自律的な処理が増加するにつれて、不正アクセスや情報漏洩への対策が最重要課題となるため、インフラ、データ、安全確保を担う企業群が市場の成長を牽引する構図となっています。

人手のスキルに依存するサービスが直面する代替圧力

基盤領域が拡大する一方で、高度な知識や技術を持った人員に依存してきた受託サービスは厳しい事業環境を迎えています。業務改革コンサルティング、システム実装、受託ソフトウエア開発、クリエイティブ制作、翻訳、教育研修といった分野では、従来人間が担ってきた作業の多くがAIツールによって肩代わりされ始めています。

特にコード生成や文書作成、外国語へのローカライズなどは自動化が進みやすく、工数に応じた対価を得る「人月モデル」の前提が揺らいでいます。作業効率が向上しても、提供価格がそれ以上に下落すれば、事業者全体の売上規模が縮小する懸念が生じます。

顧客企業の内製化が進むことも、受託型ビジネスにとっては逆風となります。汎用的な開発作業を自社で完結できるようになれば、外部への発注範囲は狭まります。専門的なノウハウそのものがソフトウエアに内包されていくなかで、人手による支援を中心としてきた事業者は提供価値の再定義を迫られています。

既存業務ソフトウエアを保護する構造的な壁

もっとも、既存の業務向けパッケージソフトウエアが直ちに新興のAI専用ツールへ置き換わるわけではありません。ERP(基幹系システム)やCRM(顧客管理)、コンプライアンス管理、マーケティング基盤などの市場は、AIの登場によって淘汰されるのではなく、機能を内包しながら再構築されていく傾向にあります。

既存のソフトウエアが維持されている背景には、複雑に組み込まれた業務プロセスや高いスイッチングコストが存在します。長年にわたり蓄積された取引履歴や顧客データ、法規制への準拠体制を他社のツールへ移行することは、企業にとって多大なリスクと費用を伴います。

既存ベンダー側も自社製品へAIエージェント機能を組み込み、操作性の向上や業務自動化を推進しています。業務データの蓄積基盤としての信頼性と移行に伴う障壁が防御壁となり、業務ソフトウエア市場は破壊的な交代ではなく、機能の高度化による存続を選択するケースが多く見られます。

自律型エージェントの実装に伴う新たなコスト構造

企業が実務へAIを導入するにあたっては、新たな運用コストや制約条件を冷静に評価する必要があります。指示待ちの対話型AIから自律型エージェントへの移行が進むにつれて、処理結果の正確性を担保するための監査コストや監視体制の構築費用が発生します。

エージェントが自律的に社内システムを操作する場合、誤動作や不正な判断を防ぐためのアクセス権限管理が不可欠となります。これに伴い、認証基盤の再構築やルールエンジンの導入といった周辺投資が必要となり、導入前の想定よりも総所有コストが膨らむ傾向があります。

また、社内データの不備がエージェントの出力品質を著しく低下させる問題も指摘されています。データのクレンジングや権限設定といった地道な準備作業に多くのリソースを割く必要があり、組織内での合意形成や運用ルールの整備にかかる調整負担が実装の進捗を左右する要因となっています。

工数連動から成果重視へ向かう事業戦略の選択肢

構造変化に直面するテクノロジー市場において、サービス提供者と導入企業の双方が取引形態の見直しを模索しています。受託企業側では、単なる開発作業の請負から脱却し、導入後の業務効率化や売上向上といった成果に報酬を連動させる価格体系への移行が検討されています。

自社独自の知的財産をソフトウエア資産として保有し、サブスクリプション型で提供することで、労働集約型からの転換を図る動きも広がっています。人手を介する作業を最小化し、独自のアルゴリズムや業界特化型のデータセットを組み合わせたソリューションへの注力が進んでいます。

一方、システムを利用する事業会社側には、自前で開発すべき領域と外部の標準機能を利用すべき領域を明確に切り分ける姿勢が求められます。単に最新のAI機能を導入することを目的に置くのではなく、自社のコア競争力を支えるデータ資産の選定と、それを安全に活用するための体制づくりを優先する判断が重要となります。

今後の展望

AIの活用が業務プロセスに浸透するにつれて、市場の影響はテクノロジー業界から法務、会計、人事などの企業間専門サービス全般へと波及していくと考えられます。高度な専門性を強みとしてきた士業や調査機関においても、定型的な分析や書類作成が自動化され、助言の独自性や個別具体的な意思決定支援に価値が集中するシナリオが想定されます。

こうした変化を測る上では、各業界における「AIエージェントの稼働率」や「人月単価の推移」に加え、IT投資全体に占めるデータ基盤およびセキュリティ投資の比率が先行指標となります。単純な作業時間の削減率にとどまらず、基盤システム移行時のコスト回収期間や、独自データの蓄積速度が企業の競争力を測る指標となっていくでしょう。

産業全体の構造変化は一様ではなく、基盤を握る少数のプラットフォーマーと、強固な業務プロセスに守られた既存市場、そして代替圧力を受ける労働集約市場との間で再編が進むと見られます。過去の成功体験に基づくリソース配分を見直し、自社が依存している収益源の性質を市場の構造変化に照らして検証し続けることが、今後の事業戦略にも影響していくことになるでしょう。

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