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AIインフラの死角、サーバー投資の裏で進むストレージ市場の進化

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米IDCは2025年12月11日、2025年第3四半期の世界エンタープライズ外付型ストレージシステム市場に関する調査結果を発表しました。同市場の売上高は前年同期比2.1%増の80億ドルに達し、底堅い成長を見せています。しかし、この数字の背後には、AI(人工知能)サーバーへの爆発的な投資とは対照的な、ストレージ市場特有の構造変化が潜んでいます。

Worldwide External Enterprise Storage Systems Market Revenue Increased 2.1% During the Third Quarter of 2025, according to IDC

現在、企業のデータセンターでは、AIモデルの学習や推論を支えるため、高速なデータ処理能力が求められています。これにより、従来型のハードディスクからオールフラッシュアレイへの移行が急ピッチで進んでいます。また、地域別に見ると、米国がマイナス成長に沈む一方で、日本市場が二桁成長を記録するという興味深い現象も起きています。

今回は、AI普及がもたらすストレージ技術の転換、市場の価格帯別トレンド、そして地域間やベンダー間の競争環境の変化、そして、今後の展望について取り上げたいと思います。

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AI投資の波及効果と「静かなる」成長

世界的にサーバー市場がAIインフラへの巨額投資により二桁成長を続けるなか、ストレージ市場の成長率は2.1%と、一見すると緩やかな伸びにとどまっています。しかし、これを「停滞」と捉えるのは早計です。サーバーへの先行投資が一巡したあと、そこで生成・処理される膨大なデータを保管・活用するための受け皿として、ストレージ需要が遅れて顕在化してくるタイムラグが存在するからです。

現在の市場は、AIによって生成されるデータの爆発的増加に備えるための準備期間にあるといえます。企業は、AIサーバーの計算能力を最大限に引き出すため、データの読み書き速度をボトルネックにしないインフラ構築を急いでいます。したがって、市場全体の成長率以上に、中身の「質的な転換」に着目することが重要です。

「オールフラッシュ」一強時代の到来

技術的な内訳を見ると、市場の勝者は明らかです。オールフラッシュアレイ(AFA)の売上が前年同期比17.6%増と躍進した一方で、ハイブリッド型やハードディスクドライブ(HDD)型は軒並み減少しました。これは、AIアプリケーションやモデルの企業データセンターへの浸透が、より高速で効率的なストレージシステムを必要としていることの表れです。

AIの学習や推論プロセスでは、大量のデータを瞬時に供給する能力が求められます。従来のHDDではその速度に対応できず、システム全体のパフォーマンスを低下させる要因となりかねません。そのため、コストが高くてもパフォーマンスに優れるフラッシュストレージへの投資は、企業にとって避けられない選択肢となりつつあります。今後、AI活用が本格化するにつれて、この傾向はさらに加速するでしょう。

日本市場の「独り勝ち」とその背景

地域別の動向において、最も注目に値するのは日本のパフォーマンスです。米国市場が9.9%減と大きく落ち込むなか、日本は前年同期比14.4%増という驚異的な二桁成長を記録しました。カナダやEMEA(欧州・中東・アフリカ)も好調ですが、日本の伸び率は際立っています。

この背景には、日本企業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の本格化と、老朽化した基幹システムの更新需要が重なっていることが推測されます。また、円安の影響による調達コストの上昇が売上高を押し上げている側面も否定できません。しかし、それ以上に、AI導入を見据えたインフラ基盤の再構築に対し、日本企業がようやく本腰を入れ始めたことの表れとも捉えられます。米国の一時的な調整局面とは対照的に、日本市場は活況を呈しています。

ミッドレンジへの集中とベンダー勢力図の変化

価格帯別の分析では、2万5,000ドルから25万ドルの「ミッドレンジ」製品が8.1%増と成長し、市場全体の約67.5%を占めるに至りました。一方で、ハイエンドやエントリーモデルは減少傾向にあります。これは、企業が過剰な機能を持つ高額製品や、性能不足の安価な製品を避け、コストパフォーマンスと拡張性のバランスが取れた製品に投資を集中させていることを示唆しています。

ベンダー別では、Dell Technologiesが首位を維持したものの、売上を4.9%落としシェアを縮小させました。対照的に、Pure Storageは15.5%増と躍進し、Huaweiも9.5%の成長を見せました。汎用的な製品ラインナップを持つ巨大企業よりも、フラッシュ技術に特化したベンダーや、特定地域で圧倒的な強みを持つベンダーが勢力を伸ばしています。市場は「規模」から「専門性」へと評価軸を移しつつあります。

今後の展望

ストレージ市場は、単なるデータの保管場所から、AIの演算能力を支える「高速データ供給基盤」へと役割を変えつつあります。今後は、AIワークロードに最適化された高機能なオールフラッシュ製品が市場の標準となり、HDD搭載モデルはバックアップやアーカイブ用途へと限定されていくでしょう。

企業にとっては、AI導入の成功はGPUサーバーの確保だけでなく、足回りのストレージ環境をいかに刷新できるかにかかっています。日本市場の好調は一時的な特需の可能性もありますが、これを機にインフラのモダナイゼーションを一気に進めることが重要です。経営層やIT部門は、現在のストレージ構成がAI時代のデータ処理速度に耐えうるかを再点検し、ボトルネック解消に向けた投資計画を策定することが求められます。

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Google Geminiにて作成

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