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2026年のITインフラは「自律型AI」と「継続的オペレーション」へ

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米国ラスベガスにて2025年12月9日から11日にわたり開催された「Gartner IT Infrastructure, Operations & Cloud Strategies Conference 2025」は、ITインフラとオペレーション(I&O)の領域において、かつてのクラウドシフトに匹敵するパラダイムシフトが進行していることを浮き彫りにしました。ガートナーのアナリストたちが提示した核心的なテーマは「エージェンティックAI(自律型AI)」の到来と、それに伴うI&O部門の根本的な役割の再定義です。

Gartner IT Infrastructure, Operations & Cloud Strategies Conference 2025 Las Vegas

Day 1 Highlights
Day 2 Highlights
Day 3 Highlights

多くの企業がコスト削減や効率化を2026年の最重要課題に掲げるなか、AIはその解決策として期待されています。しかし、今回のカンファレンスで明らかになったのは、技術の導入だけでは不十分であるという現実です。I&Oリーダーは、単にリクエストに応じて技術を提供する「自動販売機」のような存在から、ビジネス価値を生み出すカスタムツールや標準化プラットフォームを提供する「テクノロジー工場(Technology Factory)」へと進化することが求められています。

今回は、カンファレンスで議論された主要な論点であるエージェンティックAIの実装、CIOとの連携不全という課題、セキュリティの原点回帰、そしてこれからの人材戦略について、今後の展望と併せて取り上げたいと思います。

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自律型AIと「継続的オペレーション」への挑戦

ガートナーが「かつてのクラウド導入時と同様の衝撃」と表現するエージェンティックAIは、I&Oの現場に新たな運用モデルを迫っています。特筆されるのは、AIが単なるツールから、ある程度の判断を伴うタスクを自律的に遂行するエージェントへと進化している点です。一方、調査によれば53%の企業がエージェンティックAIを検討している一方で、本番環境での運用に至っているのはわずか6%に過ぎません。この乖離は、技術的な複雑さだけでなく、ガバナンスや明確なROI(投資対効果)の欠如が障壁となっていることを示唆しています。

この状況を打開するために提唱されたのが「継続的オペレーション(Continuous Operations)」という概念です。これは、ソフトウェア開発におけるCI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)の原則をインフラ運用に拡張するアプローチです。完全に自動化されたデリバリーパイプラインを構築し、各段階にガードレール(安全策)とテストを組み込むことで、人間はより高度な判断や複雑な領域に注力できるようになります。

I&Oリーダーにとって、これは技術的な挑戦であると同時に、組織文化の変革でもあります。AIエージェントを効果的に活用するためには、既存のツールとの統合やライフサイクル管理が重要であり、今まさにそのための基盤整備が急務となっているのです。

経営層との「共通言語」喪失が招くリスク

技術革新が進む一方で、組織内部の構造的な課題も浮き彫りになりました。I&Oリーダーが直面する最大の課題の一つとして挙げられたのが、CIO(最高情報責任者)との「連携不足」です。技術的な専門用語とビジネスの優先順位の間にある言語の壁が、相互理解を阻害しています。ガートナーの分析によれば、CIOからの強力な支援を得ているI&Oリーダーは、目標達成の可能性が2倍になるとされています。

また、クラウド戦略における誤解も是正が必要です。「クラウドファースト」は多くの組織にとって有効な原則ですが、それは無秩序な導入を意味しません。ビジネス戦略に基づいた明確な指針が必要であり、クラウド戦略書は一度作成して終わりの文書ではなく、定期的に更新される「生きた文書」である必要があります。

CIOとI&O部門が目指す方向性を一致させるためには、I&O側がビジネスの成果にどう貢献しているかを定量的に示し、共通の目標に向かってリソースを最適化する姿勢が不可欠です。技術的な負債の解消やコスト最適化も、単独の活動ではなく、ビジネス戦略全体の一部として位置づける視点が重要となります。

ハイプに惑わされないセキュリティとリスク管理

AI技術への注目が集まる一方で、セキュリティの現場では「基本への回帰」が強く叫ばれています。新たな脅威への対応は重要ですが、多くのセキュリティ侵害は、EDR(エンドポイントでの検知と対応)の未実装やパッチ管理の不備など、基本的なコントロールの欠如や設定ミスに起因しているのが実情です。新しいキラキラした技術(ハイプ)に飛びつく前に、まずは足元の防御を固めることが先決です。

同時に、AI固有のリスクに対する備えも無視できません。プロンプトインジェクションやデータポイズニング、AIエージェント自体が悪用されるリスクなど、従来のセキュリティ枠組みでは捉えきれない脅威が出現しています。ガートナーはこれに対し、AI TRiSM(AIの信頼性、リスク、セキュリティ管理)のフレームワーク統合を推奨しています。

組織は、ビジネスリスクと脅威の露出度に応じてセキュリティコントロールを選択し、エンドポイント管理とセキュリティチームが連携して継続的に最適化を図る体制を構築する必要があります。AIリスクの評価はIT部門だけで完結するものではなく、全社的な取り組みとして進めることが重要です。

2026年を見据えたトレンドと人材戦略

2026年に向けてI&Oに影響を与えるトレンドとして、ハイブリッドコンピューティング、エネルギー効率、そして「ジオパトリエーション(地政学的要因によるデータの自国回帰)」などが挙げられました。これらは相互に関連しており、たとえばAIの普及は電力消費の増大を招くため、サステナビリティの観点からもエネルギー効率の高いインフラが求められます。

こうした変化に対応するための鍵となるのが「人材」です。技術の陳腐化が早い現代において、特定の職務(ジョブ)に基づいた従来の人材管理は限界を迎えています。代わりに提唱されているのが「スキルベース」のアプローチです。必要なタスクとスキルを分解し、柔軟にチームを編成する「オープンタレントエコノミー」の考え方が、組織の俊敏性と生産性を高めます。

生成AIのスキルギャップがビジネスに深刻な影響を与えると懸念されるなか、外部からの採用だけに頼るのではなく、既存チームのスキル再開発や、組織全体のポテンシャルを解放するような人材マネジメントへの転換が急務です。

今後の展望:ビジネス価値の共創者へ

今回のカンファレンス全体を通じて一貫していたメッセージは、I&O部門が「守りの要」から「攻めの起点」へと完全にシフトしたという事実です。エージェンティックAIや継続的オペレーションは、単なる効率化の手段ではなく、ビジネスの競争力を決定づける中核的な資産となります。

CIOとI&Oリーダーが強固なパートナーシップを結び、技術投資をビジネス成果に直結させるガバナンス能力が問われます。また、エネルギー問題や地政学的リスクといった外部要因への対応力も、企業の存続を左右する重要な指標となるでしょう。

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Google Geminiにて作成

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