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CFOが直面する人員削減を伴うコスト最適化の4ステップ

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ガートナーは2025年9月11日、「Gartner CFO & Finance Executive Conference」で、CFOに向けて「人員削減を伴うコスト最適化の4ステップ」を提言しました。

Gartner Says CFOs Should Follow 4 Steps for Workforce Cost Reduction Amidst Increasing Corporate Layoffs

2023年以降、上場企業の約3分の2が複数回にわたりコスト削減を実施してきたにもかかわらず、営業費用の削減が思うように進んでいない現実があります。人員削減は即効性のある施策とみなされがちですが、誤った判断は逆にコスト再発や業務停滞を招くリスクを高めます。

ガートナーは、戦略的に配置を見直し、予算管理者に適切な判断材料を与え、コスト再発を防止し、透明なコミュニケーションを徹底することが重要だと指摘しています。

今回は、この4つのステップを整理し、CFOや経営層が取るべきアプローチを考えます。

戦略目標に基づく削減の必要性

多くの企業では、人員削減の対象を部門横断的に均等配分する「痛みの公平性」を優先する傾向があります。しかし、ガートナーはこれを非効率と指摘し、企業戦略や収益目標に直結する部門の維持を優先すべきと述べています。

たとえば、デジタル変革が急務の業界でIT部門を一律に削減することは、中長期的に競争力を損なう恐れがあります。再採用の難易度、業務の自動化可能性、コスト競争力などを精査した上で、「どの領域を守り、どこを合理化するか」を明確に定義することがCFOに求められています。

予算管理者への適切な判断ツール提供

人員削減の実務は現場の予算管理者に委ねられるケースが多く、そこで「先入れ先出し」や「単純な勤続年数基準」といった短絡的な基準が用いられることがあります。ガートナーは、こうした方法は戦略との整合性を欠き、むしろ組織力を弱める危険があると警鐘を鳴らします。

CFOは、従業員の業務貢献度、将来の事業戦略との整合性、売上や利益への直接的な影響度を可視化するツールを提供する必要があります。これにより、感覚的な判断ではなく、データと戦略に基づいた合理的な選択が可能となります。

コスト再発を防ぐ仕組みづくり

一度人員削減を実施しても、その後に外部委託費や時間外労働の増加、さらには短期間での再雇用といった「コストの再浮上」が発生する例は少なくありません。これを防ぐには、財務部門と人事部門が協働し、削減後の業務プロセスを継続的にモニタリングする仕組みが不可欠となります。

ガートナーは、FP&A(経営企画・分析部門)が過去2年間の削減対象部門を追跡し、コストが再発していないかを確認する体制を提案しています。

透明なコミュニケーションと従業員のエンゲージメント

人員削減は従業員の士気に大きな影響を与えます。十分な説明がなければ、不安や不信感が蔓延し、残された人材の生産性低下や離職につながります。ガートナーは、CFOが人事・広報部門と連携し、削減の理由や期待される効果を明確に伝えることを強調しています。

また、会社に残る従業員、特に優秀な人材に対しては、安心感を与え、モチベーションを維持するためのコミュニケーション施策が欠かせません。短期的なコスト削減の裏で長期的な人材流出を招かないための取り組みが、組織の持続力には重要となります。

今後の展望

今回のガートナーの提言は、人員削減を「コスト削減の即効薬」と捉えるのではなく、「戦略に基づく持続的な最適化」の一環として再設計することを促しています。

今後のCFOには、財務指標だけでなく、事業戦略や従業員エンゲージメント、さらには市場環境の変化を踏まえた総合的な判断力が求められています。AIや自動化技術の活用が進むなか、単純な削減ではなく「新たな業務再編による効率化」が中長期の競争力に直結することになるでしょう。

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