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企業のデジタル化をリードしているIT部門は約2割、関与していない/わからないIT部門は37% ~ガートナー調査より

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ガートナー ジャパンは12月7日、「日本企業におけるデジタル化へのIT部門の関与の状況に関する調査結果」を発表しました。

ガートナーによると、企業のデジタル化をリードしているIT部門は約2割しか存在しないとの調査結果となっています。

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日本企業におけるデジタル化へのIT部門の関与の状況
出所:ガートナー 2020.12

ガートナーが2020年6月に国内の年商1,000億円以上の企業のCIOやITリーダーを対象に実施した調査において、「自社のデジタル化にIT部門はどのように関与していますか」とという問いに対して

「関与しており、取り組みをリードしている」と回答した割合は23%
「関与しているが、取り組みのリードはしていない」と回答した割合は40%
「関与していない/分からない」と回答した割合は37%

となっています。

つまり、約8割の企業では、IT部門が自社のデジタル化を推進する旗振り役になっていないという結果となっています。

ガートナーでは、従来IT部門が求められてきたものは以下の2点です。

『ビジネス部門の要求どおりにITを構築する』
『コストとリスクにだけ注力することで全体最適を実現する』

IT部門としてのタスクとしては重要とはいえ、経営トップからすれば当たり前な行動といえます。

一方、IT部門の価値をより高めることで以下の点をあげています。

『働き方改革をサポートする』
『ビジネスの効率化や拡張をサポートする』
『デジタル化のサポートをする』、

さらに上流の企業全体のデジタル化をリードしていけば、IT部門の価値をより高めることにつながるとしています。

ガートナーでは、

IT部門が「経営トップにとっての価値」を高めていくためには、ビジネス価値や顧客価値に注力してデジタル化をリードしていくことが求められ、

具体的に以下の6つのポイントを挙げています。

システムを止めない:

従来のIT部門ではシステムを止めないことが目標となっています。一方、価値の高いIT部門は、システムを止めないことは当たり前と考えて行動しています。経営トップにとってシステムは止まらないのが前提です。

「ビジネスからの要求待ち」から「ビジネスに自ら提案」:

従来の「ビジネスからの要求待ち」の姿勢に加えて、自ら提案する姿勢が必要です。IT部門はビジネス・パートナーとして、ビジネスの内容を理解し、業務をより効率化する追加機能を提案することが求められます。特に部門横断のプロセスを最も理解するのはIT部門であることから、この領域での提案は価値を高めます。

「コストとリスクに注力」から「コストとリスクと価値に注力」:

従来はコストとリスクにのみ注力していましたが、今後は、コストとリスクに加え、価値にも注力することが重要です。コスト削減では価値を考えずに削減にフォーカスすることが多いです。コスト最適化では削減したコストをより価値の高い投資に向けていくことを検討します。その上でIT部門には、ビジネス・パートナーの価値を高めることへの注力が求められます。ITで価値を高めるにはビジネス価値ツリーの活用も有効です。ここでは、ITによる効果をさらに高めるためのビジネス施策とセットで考える必要があります。

「リモートワークのサポート」から「働き方改革のリード役」:

新型コロナウイルス感染症 (COVID-19) の影響によって、「リモートワークのサポート」はある程度実現しました。一方、これからは働き方改革をリードすることが重要です。経営トップ、人事、IT部門が働き方改革を進める必要性は高く、日本の企業においては依然として改善の余地がある状況です。IT部門にとっても、行うべきことはたくさんあります。

「失敗をしてはいけない」から「失敗から学ぶ」:

デジタル化には、既存のビジネスを最適化して効率化を進める「デジタルによるビジネス最適化」と、新しい商品やビジネス・モデルを創造する「デジタルによるビジネス変革」の2つの領域があります。従来のIT部門は、「デジタルによるビジネス最適化」において、失敗しないように計画を立て、プロセスどおりに実行するという組織文化でした。一方、「デジタルによるビジネス変革」においては、「失敗から学ぶ」という姿勢が求められます。失敗からヒントを見つけて改善する、失敗を恐れない考え方が必要です。

「プロジェクト中心管理」から「プロダクト中心管理」:

ビジネスの要求を受けてから対応する「プロジェクト中心管理」では、請負契約のように、計画を立て、計画どおりに実行します。ITのKPI (性能、正確性、可用性) に注力し、完成したらチームは解散となります。一方の「プロダクト中心管理」は顧客価値に着目します。ビジネスとITが一体になりプロダクト・チームとして行動します。定義されたプロセスはなく、ビジネス環境や顧客ニーズの変化などの継続的な変化に俊敏に対応します。ITのKPIよりも、顧客価値、ビジネスKPI、金額的成果に注力し、ビジネスとITの混成チームが、プロダクト・チームとして (解散せず) 継続的に改善していくことが求められます。

ガートナーの片山は、次のようにコメントしています。

ガートナーが接するCIOの方々からは、IT部門の活動の価値を経営トップにどのように見せればよいか、という問い合わせを多く受けます。まずは、経営トップにとって当たり前の領域であるにもかかわらず重大インシデントが多かったり可用性が低かったりするならば、できるだけ早くこの領域の改善を進めます。既にこの領域で目標レベルを達成しているならば、次に注力すべきは、顧客価値の増大となります。IT部門がこの顧客価値を高める活動に注力し、それを実現できれば、経営トップにとってのIT部門の価値は一気に高まります。そのためには、こうした活動を経営トップに対してどのような指標を使って分かりやすく見せるか、ということが重要になります

IT部門が顧客価値を高める業務に注力できるか、が大きなポイントとなりそうです。

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