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これから、クラウドビジネスでどう戦っていくのか

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先日、

2019までに、パブリッククラウドIaaS事業者の90%が、AWSとMicrosoftの市場独占によって市場から撤退を余儀なくされる

というブログを投稿しましたが、やはり、多くの反響がありました。

自分自身の立場上、いろんな方々から

AWSやAzureなどの海外勢が市場を大きくリードする中、御社は今後どのようにクラウド事業を展開する戦略ですか?

という問いを頻繁にいただくようになっています。

今後、AWSやAzureに追随するクラウド事業者はクラウドビジネスでどう戦っていくのか、個人的な意見として、少しまとめてみたいと思います。

サービスポートフォリの再構築

IaaSレイヤのクラウドサービスは、AWSに代表されるように、規模の経済(スケールメリット)をいかし、事業を拡大しています。AWSなどの海外勢にはサービスの豊富さ価格競争では、非常に厳しい状況です。おそらく、IaaSを事業の柱にしている事業者は、市場淘汰の波に飲まれていくことになるでしょう。

このように、IaaS自体はコモディティ化しており、AWSやAzureなどのパブリッククラウドサービスも加え、ユーザー企業のニーズにあわせたサービスポートフォリを構築し、提供していくことが重要となっています。

たとえば、マネージドサービス、セキュリティサービス、ネットワークサービス、コロケーション、ERPなどのエンタープライズアプリケーションなどをサービスポートフォリに加えて、クラウドだけではなく、トータルかつハイブリッドなICT環境を導入することによる全体最適化のアプローチです。

クラウドの導入のフェーズは、イノベーター理論で整理すると、「イノベーター(Innovators:革新者)」や「アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者)」のフェーズを超える、いわゆるキャズムを超えた段階にきており、次のターゲットは、「アーリーマジョリティ(Early Majority:前期追随者)」および、「レイトマジョリティ(Late Majority:後期追随者)」の段階になっています。

「イノベーター」はユーザ自身が、自社でノウハウを蓄積し、迅速に導入することができますが、「アーリーマジョリティ」のユーザ企業の場合は、提供する側にとっては、時間をかけて、段階的にクラウドへの導入を推進するアプローチが重要になります。「アーリーマジョリティ」の場合は、個々のIaaSを導入するというよりは、クラウドへ移行することによるコスト削減に加えて、全体最適化やガバナンスの向上やセキュリティの強化、デジタル化など攻めの経営にシフトするという視点が重要となり、これらをできるだけワンストップで提供できる事業者のニーズが高まっていくでしょう。

ポストオンプレミスシステムへの提案力

今後、ユーザー企業は、オンプレミスシステムからの更改を機に、さまざまな選択肢が入ります。たとえば、そのままオンプレミスに残す場合はありますが、今後は、オンプレミスでもハイパーコンバージドインフラを選択肢にいれるユーザー企業が増加していくでしょう。ハイパーコンバージドインフラをコロケーション経由で提供するというアプローチも出ています。また、パブリッククラウドから、より専用型でクラウド環境を構築できるホステッドプライベートクラウドの選択肢もあります。市場予測のデータなどでは、パブリッククラウドよりもプライベートクラウドのほうが市場が大きく、成長率も高いという予測もあります。AWSなどが大きく市場をリードするパブリッククラウドよりも、むしろ、価格競争に陥らず一定の収益が確保できるホステッドプライベートクラウドの提供を強化する事業者も増えていくでしょう。

クラウドを中止とした運用効率化、ガバナンス強化のためのサービスやソリューションの提供

クラウドサービスの導入が進むにつれて、AWSやAzureなども含めた複数のクラウドサービスの効率的な運用管理に関するニーズは高まっています。マネージドクラウドサービスやクラウドマネジメントプラットフォームなどを含めた自社でトータルソリューション的に提供できるクラウド事業者や、AWSやAzureなどのクラウドサービスをベースとしてソリューションを提供するクラウドインテグレータという位置づけが益々重要となっていくでしょう。

パートナーアライアンスモデルが鍵に

ユーザ企業は、企業の基幹系のシステム基盤から、IoTやビッグデータに代表されるデジタルサービスの基盤まで、クラウドの活用は多岐に渡っています。パートナーセールス中心のエコシステムから、サービスやソリューションの連携性を高め、共同投資や共同開発も枠組みにいれたパートナーアライアンスの構築が重要となっていくでしょう。クラウドビジネスは、戦国時代に例えれば、戦国武将による勢力(陣地)争いになりますので、どれだけ有力武将を組んで、陣地を拡大できるかが重要なポイントになります。特に、国産のクラウド事業者は国内市場を中心としたアライアンスが多くの比率を占めているため、グローバルファーストのアライアンスモデルの構築を進めていくことが、日本市場がこの先縮小し、規模の経済が左右する世界のグローバルクラウド市場における、生き残りの大きな鍵となるでしょう。

どこまでイノベーターを取り込むか?

サーバレスコンピューティングやコンテナなどをはじめとした先進的な技術は常に進化を遂げています。海外のクラウド事業者は、イノベーターに位置付けられる先進的な利用ユーザを取り込んでいくため、これまで想像しなかったようなサービスも展開しています。イノベーターを取り込むためのサービス展開は、市場を大きくリードするための大きな武器にはなりますが、この流れにキャッチアップし、リードしていくためには相当の投資と労力が必要となります。どこまで、イノベーターを取り込み、収益の柱に育てていくかは、意見が別れるところでしょう。

クラウド市場は今後も成長するが、多くの事業者にとっては難しい局面に

クラウドの市場は、パブリッククラウドとプライベートクラウドともに成長し、デジタル化の進展とともに成長率はさらに伸びていくという予測もあります。しかしながら、市場の寡占化が進み、事業の撤退を余儀なくされる事業者も、これまで以上に出てくる可能性は否定できません。多くのクラウド事業者はこれからどのように生き残りをかけて事業を展開していくのか、撤退を選択するのか、サービス強化などを図っていくのか、大きな踊り場にきているといえるでしょう。

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