オバマ次期大統領のICT政策は?
米国のオバマ次期大統領の完了人事も骨格もほぼ決まり、誕生間近のオバマ政権の「変革」が本格的に始動しようとしています。
オバマ政権の誕生により様々な政策の変化が見られるかと思いますが、ICT政策に関しても、この業界にいる人間としては、注目しています。
総務省は、11月20日、「ICTビジョン懇談会ワーキンググループ(第1回)」を開催しました。本ワーキンググループは、『完全デジタル時代」を迎える2011年以降の2015年頃までを展望し、「ユビキタスネット社会」をさらに発展させていくための総合的なICT政策のビジョンについて、専門的観点から検討を行う』ことを目的としています。
これまでu-Japan政策を掲げて2010年に向けて政策を実施してきましたが、今度は2015年に向けてICT政策を検討していくことになります。
第一回のワーキンググループの中では、今後の進め方等が主なテーマになっていますが、ICTビジョンの策定に向けて、オバマ政権のICT政策についても資料として掲載されています。
オバマ次期大統領は、2007年11月14日に発表した「Technology and Innovation」の中で
- オープンなインターネットと多様な媒体を通じ、米国民は完全かつ自由に情報を交換できるようにすること。
- 透明かつ(政府と国民が)結びつけられた民主主義の創生
- 近代的な通信インフラの整備促進
- 医療制度改革、新しいクリーンエネルギー資源の開発、公共セキュリティの改善などの国としての喫緊の課題
の解決への技術・イノベーションの活用 - 米国の競争力の向上
と、かなりインターネットを中心としたICT政策について積極的に展開しようという姿勢が見受けられます。
例えば、ブロードバンド政策については、教育や図書館等の公共機関へのブロードバンド接続の充実等国家的なブロードバンド政策を実施することを掲げています。ブロードバンド化については、日本のほうが先行しており、アメリカの膨大な敷地にブロードバンドを敷設していくことは、大きなテーマの一つとなることでしょう。
アメリカで議論が進められている「ネット中立性」についても原則を強く支持するとしています。ISP側が、ネットの利用頻度によってユーザに対して追加料金を設定等をしてはないとし、自由にアクセスできるオープンなインターネットの環境を維持していくことを目指しています。
また、政府情報のオンラインでの利活用や行政手続きの電子化も推進していくことを明しています。特に医療技術においてICTによる効率化とコスト削減を目指しています。電子政府を推進するため、連邦政府全体のCTO(チーフ・テクノロジー・オフィサー)を設置するとしています。
研究開発においては、基礎研究や教育機関への予算を増やし、科学技術への投資不可欠な投資としています。
デジタル時代へのセキュリティやプライバシー対策についても保護を強化し、個人情報の利用目的の制限やどのように使われたかを証明すr技術的保護手段も導入するとしています。また、日本でも問題となっている子どもを標的としたインターネットを悪用する行為の取り締まりを強化していくとしています。
コンテンツ・メディア規制等については、メディア所有の多様性を確保するための規制を設けるべきだとしています。それにより放送事業者による地域情報提供の拡大を促進するとしています。
この提言がなされたのは、ちょうど1年前です。昨今の金融危機等による景気後退局面により、解決していかなければならない課題は山積しています。ICTがどのような優先順位で検討されていくのでしょうか。
オバマ次期大統領は、ICTにも精通しているように見受けられますが、果たして米国からICTに対してどのような政策のビジョンを掲げていくのか。そして、日本の情報通信政策に対してどのような影響を与えていくのか、オバマ政権誕生後の動きが注目されるところです。