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「スポットライト 世紀のスクープ」、そこじゃないけど考えたこと

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いつも米国のメディアにお世話になっていることもあり、誇り高き新聞社ボストン・グローブが舞台の映画「スポットライト 世紀のスクープ」を見てきました。globe1.jpg

公式サイトのあらすじをさらにかいつまむと、ボストン・グローブで特集記事欄「スポットライト」を手掛ける精鋭チームが2001年夏、新任編集局長の下、タブーとされてきたカトリック神父による性的虐待の実態を暴き、翌年明けに記事を掲載したら大反響で編集部の電話は鳴り止まず、これをきっかけに全米の同様の問題にも光が当たった、という本当にあったお話。

日本人で特定の宗教の信者でもない私でも、教会に歯向かうことがボストンでは絶対的なタブーになっていることがよく分かるように描かれています。

地味な話ではありますが、チームメンバーそれぞれや被害者を守ろうとするはみ出し弁護士(「プラダを着た悪魔」でやさしくておしゃれなゲイの同僚役だったスタンリー・トゥッチ)がみんな魅力的だし、テンポもよくて引き込まれました。(アカデミー賞作品賞&脚本賞獲得作品だし。)

せっかく掴んだ大スクープを競合に抜かれるかもしれないと焦りながらも、もみ消しようがないだけの裏付けをしっかりとるまで記事を掲載しない姿勢もかっこよかったっす(まあそこにいたるまでのいろいろな背景があるのですが)。

その証拠集めがものすごく大変そうで、ほんの15年前の話なのにほとんどの情報がアナログ(新聞の切り抜きとか、紙の年鑑とか)。ボストン大司教区の過去10年分の分厚い神父年鑑のこまかい文字を1行ずつ手分けしてチェックするところなんて、気が遠くなりそうです(関連する実際のボストン・グローブの記事はこちら)。

2002年1月6日に公開された世紀のスクープ記事はこちらで読めます。米紙日曜版の特集記事は今でも長いものですが、この長さの重たい記事を朝からきっちり読んで新聞社に電話する人たちがいるって、それもすごいなぁと改めて思ったり。globe2.jpg

今でも人々は、中身がちゃんとしていれば長い長い記事でも読むのかもしれない。どこかで「がんばって記事を書いてもほとんどの人は誰かのツイート経由でタイトルしか見ないしな」なんて少し思っている自分は、深く反省したのでした。

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