日本では(まだ)使えない消費者向け「Office 365」について
昨日「Office for iPad」の記事を書いたとき、「あぁ、また日本では使えないのか」とがっかりして利用方法についてあまりちゃんと説明しませんでした。
文書の閲覧はMicrosoftアカウントがあればOKだけど、編集もしたければ「Office 365」のサブスクリプションが必要だよ、としか書かなかった。だってどっちにしても日本では使えないんだもん。
でも林信行さんの記事によると、Microsoftの広報が「日本でも年内にOffice 365 for Consumerサブスクリプションが始まる」と言ったそうなんで、遅まきながらここで整理しておきます。
Office 365は2010年10月に、まず企業向けのクラウドサービスとしてスタートしました。ソフトウェアをPC(やMac)にインストールするんじゃなくて、毎月または毎年お金を払って使う、サブスクリプションタイプのサービスです。これは日本でも提供しています。前身は「BPOS」という名前で、「Google Apps」対抗と見なされていました。当時はよく「Googleがどこどこのメーカー獲得」「Microsoftは某国政府機関を獲得」みたいな記事を書いてました。
消費者向けのOffice 365が発表されたのは2012年9月。後の「新しいOffice」になる“次期Microsoft Office”の価格体系を発表したときです。提供地域に日本が含まれていなくてがっかりしたものです。
当時「新しいOffice」ってなんで? 「新しいiPad」のまねっこ? ともやもやした原因の1つは、日本では消費者向けOffice 365が提供されなかったからもあります。パッケージ版は「Office 2013」、サブスクリプション版は「Office 365」、それとは別に無料の「Office Web Apps(現「Office Online」)」というのもあって、全部ひっくるめて「新しいOffice」ということです。
日本では(まだ)使えない消費者向けOffice 365は「Office 365 Home Premium」という名前で、月額9.99ドル(年額99.99ドル)。家族みんなで、5台までのPCかMac、5台までのタブレット(もちろんiPadも含む)で使えるというもの。ファイルはOneDrive(旧SkyDrive)に保存して、どこからでもアクセスできます。
もう1つ、3月になって「Office 365 Personal」というのも発表されました(リリースはまだ)。こちらは独り者対象で、月額6.99ドル(年額69.99ドル)です。1台のPCかMac、1台のタブレットで使えます。Mac1台、PC3台、タブレット5枚持っている人(それは私)には使えないですが、需要はありそうです。
で、話を「Office for iPad」に戻しますが、無料でダウンロードしてしばらく使っているうちに、「やっぱり編集もしたいよな」と思ったら、アプリ内でOffice 365に加入できます。
Appleはアプリ内課金に30%の手数料を課しています。つまり、ユーザーがOffice for iPad内からOffice 365に加入するごとに、Appleに3割がちゃりーんと入ってくるわけです(Appleはこのアプリでも30%徴収することを認めています)。
昨年6月に米国で出たiPhone版Officeが「Office Mobile for Office 365 subscribers」という長~い名前になっていたのも、iPad版Officeがなかなか出なかったのも、この30%手数料をめぐるAppleとMicrosoftの交渉が難航した(Microsoftは値引きを要求していた)からといわれています。結局、Appleは値引きしませんでした。
これはMicrosoftがAppleに負けたとかいうことではなくて、それだけMicrosoftが「マルチプラットフォーム」への方向転換に本腰を入れたということだと思います。
サティア・ナデラさんはCEO就任後、しきりに「mobile-first cloud-first」と言っていて、ブログのタイトルにも「A cloud for everyone, on every device」と書いています。この転換が吉と出るといいなぁ。ユーザーにとっても便利になるから。