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開発ツールビジネスの再生に格闘。マーケティングの視点で解説

「最も社会性がなくて成功しているプログラマ(笑)」 - トレタ増井さんのインタビュー(前編)

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iPad向けの予約管理サービス「トレタ」(http://toreta.in/)。その開発を手掛ける増井雄一郎さんにお会いしました。増井さんは、先日のデブサミでも、「エンジニアだからできる自由な生き方」という講演をされるなど、技術者としてのライフスタイルが注目されています。

「飲食店の予約管理にタブレット」が好評

レストランの予約をする。店頭で予約確認をすると、大きなノートが出てきて、「えーと、この時間は大丈夫ですね」と言われる。そんな旧来の予約の管理が、タブレットで簡単にできるのが「トレタ」 です。すでに導入が200店舗を越えるなど、トレタが好評だと聞きました。

美容室などでは、昔から予約管理や会員管理システムがありました。でも、レストランでは、なかなかそういったものがありませんでした。いくつかある既存の製品も、PCベースだったり、Webなどの従来のインターフェイスのものでした。

- なぜ、飲食店でiPadアプリが受けたのでしょう。

スマホがはやるようになって、PCを触ったことがある人より、スマホに慣れている人がはるかに多くなってきています。家にPCがないという人も多くなっています。店舗ではスペースの問題もあり、普段使いなれているスマホを使ってもらったほうが親和性が高いんじゃないだろうかと考えたのです。

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もうひとつ重要なのは、学習コストです。飲食店は全国に40万軒あって、年間4万軒つぶれ、4万軒新しい店ができているんです。ですから、少なくとも、年間4万軒分は新しく覚えなければならない人がでるし、毎週のように人が入れ替わっています。人の入れ替わりが激しいときは、UIの学習コスト、つまり人件費が余計にかかっているわけです。ですから、習得しやすいUIというのは非常に重要だったわけです。

- 開発でも多くの時間をUIに割いたとか。

タブレットの場合、UIに自由度があります。UIを作りこめるという点で、とても向いていました。トレタについては、プロトタイプを何度も作って、UIを作るところにほとんどの時間を割いてきました。そういった部分が評価されているんだと思います。

- 業務アプリケーションの場合、ユーザーインターフェイスは軽視される傾向にあります。操作を習得し、熟練度が上がっていくような長いスパンの人員の場合には、問題にならないような習熟度に関する問題も、業態が異なれば顕著になってくるということですね

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飲食店は、これまで初回の人を大事にしてきました。クーポンを配ったり。でも、経営のことを考えたら、リピーターがつくこともとっても大事です。とはいえ、これまではリピーターを大事にしようにも、お客さまの住所も分からないのでDMを打つわけにもいかない。でも、トレタなら、SMSでリーチできたり、LINEでつながったりできるわけです。

発想の源泉はブラブラ

- トレタのような飲食店向けシステムの開発をするきっかけは何だったんですか?

私は「最も社会性がなくて成功しているプログラマ」と言われており(笑)、普段からブラブラしているんです。まともに仕事しているのが半分ぐらい。会社に遊びにいったり、原稿書いたり、かなり自由にやらせてもらっています。プログラミングも、よく風呂でやっています。40度ぐらいのお湯に半身浴で2時間ぐらいつかって。

- オフィスでPCに向かってひたすらプログラミングをするエンジニアのスタイルとは、かけ離れて見えますね。

でも、そんな自由なブラブラが、結局仕事につながっているのです。「作りたいものリスト」というのを公開していて、そこからいろいろな仕事に展開することもあります。実は、アメリカにいるときに、現地の日本人の友人から、自分(増井さん)の「作りたいものリスト」にあるのと同じようなものを作りたいという人がいるとある人を紹介されたのです。

それが豚肉を中心に扱う飲食店「豚組」 のオーナーの中村でした。中村とはそれが縁で、トレタを一緒にやっています。実のところブラブラしているときにこそ、いろいろな人とつながることが多いので、面白いなあと思っています。

- なるほど、机に向かっていては得られないつながりは、自由な生き方に源泉があったのですね。後半は、その自由な生き方について伺います。

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