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開発ツールビジネスの再生に格闘。マーケティングの視点で解説

アイデラのCEO ランディ・ジェイコプスが来日した

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久々の投稿です。

アイデラのCEO ランディ・ジェイコプスが、先週2回目の来日をした。アイデラ?アイデア?何?と思われるかもしれない。

アイデラ(Idera)は、元々SQL Server向けのデータベースツールベンダーであったが、ここ5~6年で、積極的な買収戦略により拡大しているソフトウェアベンダーだ。エンバカデロも現在ではこのアイデラグループの一員である。

エンバカデロも、元々ER/Studioのようなデータベースツールを提供するツールベンダーであったが、2008年にボーランドの開発ツール部門を買収し、開発ツールとデータベースツールのベンダーに変わった。現在のエンバカデロ日本法人はその時点で設立されたので、今年が設立10周年ということになる。

アイデラグループの一員となったことで、エンバカデロはもっぱら開発ツールのブランドとなり、本来のデータベースツールビジネスは、「Idera(アイデラ)」ブランドに吸収されることになった。現状アイデラは、データベースツール、開発ツール、テストツールの3つの事業部門に分かれ、開発ツールには、エンバカデロのDelphiC++Builderのほかに、SenchaVisual AssistFroalaAssemblaなどが加わっている。テストツール部門では、TestRailのほか日本でも展開しているRanorexなどがある。

前回のランディ来日は、エンバカデロがアイデラ傘下となり、そのトップと初めて顔を合わせるということで、相当緊張したイベントとなった。とはいえ、既存のユーザーコミュニティとの会合や、デベロッパーイベントなどをこなし、エンバカデロビジネスの継続、発展を約束しての帰国となった。

その後のオペレーションは、開発ツール部門のトップであるアタナス・ポポフによってなされ、ランディと直接やり取りすることは多くなかった。そんな中での今回の来日である。

ランディ自身は、経営戦略に関わり、具体的な製品戦略はアタナス、という役割分担がある。とはいえ、今回、最近の買収戦略に見られるひとつのビジョンを共有することができた。

これまでのツール供給は、永続ライセンス、フルセットのソリューションセットという、若干箱売り製品のなごりを引きずった製品構成で提供されてきた。これは、新しく世の中に出てきているツールと大きく異なるところで、現在は、気軽に使い始められて、がっつり使うようになってコストが発生するというモデルのほうが主流だと思う。

現状ソフトウェア開発をとりまく技術の多様化、開発体制やスタイルの多様化が進むなか、従来型のライセンスモデルがフィットしなくなっていることも事実。また、従来型の方法では、より多くのセールスコストがかかる。製品力を高めるための投資にコストをかけるには、こうしたコストのかかる販売モデルを変革していくことが必要との立場だ。

もっとも、現状の製品体系にはそれなりの理由があり、継続的なビジネスをしている我々の立場からすると、新規に立ち上げるビジネスとの違いはある。とはいえ、技術的に解決すべきことを進め、ビジネス的に適応できるところを進め、変革を加えていく、というのは十分可能なことだ。

現時点でDelphiやC++Builderが従来型のライセンスモデルをやめますよ、ということではないことは念を押しておくが、製品機能やライセンス管理の技術要素に、そうしたアイデアが含まれていることは見て取れるかと思う。

ランディは今回、12月6日に行われたデベロッパーキャンプで講演している。そのセッションビデオレポート記事も既に公開されているのだが、若干概念的な彼の説明も、上に説明したような背景を理解した上で聞くと分かりやすいかもしれない。

randy-jacops.jpg

前回の来日はアタナスといっしょだったため、デベロッパーとの交流もどちらかというとアタナスに任せていた感じだったが、今回はかなり密に交流して盛り上がっていた。いろいろな意味でよい刺激となったのではないかと思う。

でもCEO来日はやっぱり疲れるわな。

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