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しずかちゃんのヴァイオリンはなぜ下手なのか

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某自動車メーカーのCMで、しずかちゃんが河原でヴァイオリンを弾く。残念ながらその音は美しいとはいえず、のびただちだけでなく、猿も卒倒して木から落ちる。

マスオさんもそうであるように、古くから聞くに堪えないヴァイオリンの音色は、マンガのネタになってきた。しかし、音楽センスのありそうなしずかちゃん。なぜ、そんなにひどい音しか出ないのだろうか。

ヴァイオリンは、弦楽器に分類される。弦楽器は、その名のとおり、張った弦を振動させて音を出す楽器だ。ギターやマンドリンは、指で弦をはじく。ピアノは、鍵盤楽器と区分されそうだが、内部では、鍵盤を押すことによって動作するハンマーが弦を叩く。

ヴァイオリンの場合、弦を弓で擦ることで振動させ、音を出す。弓には、脱色した馬の尻尾の毛が張ってある。これだけでは摩擦がないため、松脂をつける。松脂を塗った毛が弦と擦れ合うことで、振動するわけだ。

しかし、この擦れ合うというのが曲者だ。弓と弦が効果的に擦れ合うには、直角に交わらなければならない。しかし、ヴァイオリン(そしてヴィオラ)は、他の弦楽器と大きく異なり、顎に楽器を挟んで、左腕をひっくり返して弦を押さえ、右腕を長く伸ばして弓を操るという、人間工学からするとありえない態勢で演奏する。

顎に挟んだ楽器が落っこちないというのも驚異的だが、円運動が基本の腕の動きを、弦に対して弓が直角になるように、直線運動に変えるというのも至難の業なのだ。

さて、しずかちゃんの演奏を見てみよう

演奏を注意深く見てみると、右手が弓をまっすぐに持っていこうとしすぎて、かえってぶれてしまっていることが分かる。その結果、弦に対して向かって右側に弓が流れて行ってしまっている。

Vn_bow

これでは、しっかりした音は出ない。

かすれた音に対して、ギシギシいう音は、力の入れすぎが原因だ。弓を弦に押し付けすぎると、弦の振動は失われる。その結果、「ギ、ギ、ギ」という音がするのだ。

しずかちゃんの場合、弓が流れてしまうのに対して、もう少し音がでるようにと、力を入れすぎているのであろう。その結果、かすれた上にギシギシいう事態に至ったと想像できる。

CMでは、左手の指使いまで見ることはできなかった。しかし、想像できる次の問題として、弦を押さえる指の力不足が挙げられる。

ヴァイオリンには、ギターのようにフレットがない。開放弦でない限り、弦の片方の終わりは指が担うことになる。この指の力が音の影響するのは言うまでもないことだ。しっかり押さえない弦は、安定して振動しない。また、音のかわりっぱなも、不安定になる。

ViolinGuitar

ヴァイオリン(左)とギター(右)の指板

しずかちゃんも河原で弾く前に、指の力を鍛えるべく、毎日しっかり練習しておいたほうがよさそうだ。

追記:
音を聴いて気が付いたのだが、もうひとつ、弦に対する仰角の問題もある。ヴァイオリンには弦が4本あり、弓の角度によって、どの弦に触れるかが決まる。それがうまくコントロールされていないと隣の弦も触ってしまうわけだ。

しずかちゃんの演奏の場合、隣の弦の音も鳴っており、それがさらに下手さを演出しているようだ。

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