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開発ツールビジネスの再生に格闘。マーケティングの視点で解説

ベータバージョンの共有の仕方 - Delphi for iOSの場合

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変化の激しいソフトウェア業界にあって、新しい技術をいち早く使いたい、そういう要望は多い。しかし、これまで、開発途中の製品、つまり、ベータ版の使用に関しては、次の製品がどんなものか見てみたい、という興味の方が強く、いわゆるパブリックベータを望む声が多かった。

ベータ版をどのように市場に投入するかは、会社によって異なるのだけれど、エンバカデロの場合、深い製品知識でベータバージョンから使い倒すパワーユーザーが世界各国(特にヨーロッパに多いのだけれど)にいて、彼らを中心としたクローズなベータという色彩が強かった。彼らは、クローズのディスカッションフォーラムなどで、活発に議論し、時として製品の方向性に影響を与える。

これに対し、日本では、リリースされたベータバージョンを使ってみる、ということに軸足が置かれ、なかなかフィードバックまでには至らないことが多かった。とはいえ、ここ数年のベータプログラムの取り組みでは、日本からも重要なフィードバックをいただき、開発チームも日本からの声に強く耳を傾けるようになっている。

現在のベータバージョンといえば、DelphiのiOS対応版だ。これは、従来のWindows開発と同じように、(実はすでにMac向けにもできているのだけれど)ドラッグ&ドロップでコンポーネントを配置してというスタイルで、iPhoneやiPadなどのネイティブアプリが作れるというもの。

Delphi_for_ios_320_jp

モバイル向けの開発の需要は増しているとはいうものの、企業向けはまだまだでは?という見方もある。

しかし、DelphiのiOS対応に関しては、かなり状況が違う。これは、ベータバージョンに関しても言える。実際多くのユーザーが、いわゆる評価目的ではなく、実際の開発ターゲットを据えて、ベータプログラムに参加しているのだ。

ただ、iOS開発に関しては、ひとつ課題も見えてきた。実際、DelphiでiOS開発を行うには、Windows環境でできる。しかし、作ったアプリをシミュレータや実機で動かすには、Macが必要になる。完全に開発にコミットして環境を整えている方は、ひたすらベータバージョンを使っていけばよいのだが、実際のところ、「試用→評価→本格導入の準備」という流れの最初に、ハードウェア環境を揃えるのはちょっと重い。

ガンガン先に進んでいるユーザーがいる一方で、Macでの環境セットアップや、試しに動かしてみる、というところで、なかなか先に進めない人もいる、つまり二極化が進んでしまっているということだ。

これまでのベータプログラムでは、基本的にDelphiやC++など開発言語や環境の共通知識があって、その上で新しい機能について探求していくスタイルだった。しかし、iOS向けの開発では、その前提となる共通知識が、これまでの開発経験によって大きく異なるわけだ。

できれば、参加者同士が相互に情報交換して先へ進んでくれればいいのだが、ベータプログラムでは、参加者の顔が見えないため、なかなか情報を共有しにくい。これまでも、オンラインミーティングなどを通じて、情報共有のための試みはしてきたが、やはりライブに勝るものはない。

今回、ベータテスターミーティングというイベントを企画して、評価環境の問題、情報共有の問題などに対処できないか試みてみることにした。過去にもベータ系のミーティングはあったのだけれど、開発途中の製品情報なので、すべて非公開というかたちになってしまった。

それはそれでディープで面白いのだけれど、たまたまその日に来られた限られた参加者のみの情報となってしまう。そこで今回は、限定的な秘密保持という形態をとってみることにした。会そのものは、非公開ではなく、秘密会議でもないので、秘密保持の対象にはならない。ただ、その中で語られるいくつかの事項に関しては、あらかじめお断りして「秘密保持対象」とさせていただく、というものだ。

これならば、広く情報共有ができるけれど、既知の情報しかない、という事態は避けられる。

果たしてこの試みがうまくいくか、開催は3月18日(月)18時半である。

※ Delphi for iOSというのは、開発中のDelphiによるiOS開発機能のことを指しています。製品名ではありませんので、念のため。

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