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開発ツールビジネスの再生に格闘。マーケティングの視点で解説

外資系マーケティングの翻訳対処法

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ちょうど今期の翻訳ものの残りをどうしようかと、新しいマーケ担当と話をしていたところ、「IT分野の翻訳は難しい?」と、タイムリーな話題が飛び込んできました。

外資系IT企業のマーケティングにとって、翻訳は常にアタマの痛い問題です。ほとんどの製品は、本社から供給されてくるため、その製品コンセプトやメッセージ、詳細スペックなども、常に英語のドキュメントを通じて理解することになるからです。

日本市場に適切なメッセージを発信し、日本市場に即した情報を提供するには、単純な右から左へ翻訳、では済まないことは容易に想像できます。しかし、すべての情報を吟味し、詳細なローカライズを行っていたのでは、本社が提供する膨大なドキュメントのほんの一部しか日本市場に提供することができません。単純に言ってしまえば、量と質の狭間で悩むことになるのです。

この種の仕事に完璧はなく、いかに次第点を継続するかが重要です。そのような視点でマーケティングの翻訳を考えていくと、トランスレーションとローカライズのバランスを取ることがひとつポイントになってくるようです。

まず、すべてのドキュメントを翻訳作業のまな板に乗せることはやめましょう。

製品メッセージや基本的なコンセプトの日本語化は、翻訳会社の仕事ではなく、マーケティングの仕事です。特に新しい概念やテクノロジーは、既製の訳語でよいのか、専門家による吟味が必要でしょう。もちろん、ここでいう専門家とは、翻訳者ではありません。

これは、結構つらい仕事ですが、実際問題、日本でどう売るか、といったことをちゃんと議論しないで、メッセージを翻訳まかせ、というのがよろしくないわけで、正しいアプローチをすれば、自然と基本メッセージの訳語がひねり出されてくるものです。ここで作成した、基本的な言い回しは、製品説明文などでも使用するため、自然と25 words、50 wordsなどの製品説明文の日本語版が出来上がります。これらは、カタログやWebなどでも再利用します。

一方、ハウツーものや既存製品の技術資料など、直感力よりも、情報の内容そのものにフォーカスがあるものについては、細かいメッセージにこだわるより、技術的な正確性に重点を置くべきです。製品のローカライズを請け負っている翻訳業者がいれば、こうした技術情報の翻訳も依頼してみるのも手です。製品内で使っている用語は統一され、製品ドキュメントと同等レベルの品質を期待できます。おそらく、エンジニアによるレビューだけで済むはずです。

前者と後者の中間にある、コンセプトっぽい文書、ホワイトペーパーのたぐいが、一番翻訳に苦労する領域だと思います。ただ、これも、翻訳文書なのか、原文を活用した日本語文書なのか、最初に立ち位置を決めれば、それほど困難ではないと思います。原文が思いっきりぶっ飛んでいて、翻訳版を配布しても「?」を増殖するだけなら、思い切って超訳してしまうとか、コンセプトだけいただいてオリジナルで書き起こすとかの選択もありです。

いずれにしても、翻訳してから考えましょう、だと、どうにも時間とお金がかかってしまうので、先に仕分けておくこと、それから使うシーンをちゃんと考えておくことが重要かと思います。

ちなみに自分がマーケティングを担当していたときは、

  • Webコンテンツやカタログのテキストなどは、基本超訳で外部の翻訳業者は使わない
  • カタログの裏面やなが~い機能一覧などは、なるべく過去の資産を再利用しつつ、そのときのお財布具合に応じて外部に出したり出さなかったり
  • 技術文書は、翻訳業者か社内スタッフ
  • 社内スタッフも嫌がる長文は、休日返上で自分(これは避けたいですけどね)

という風に振り分けていました。本社のプレスリリースの抄訳などは、ドラフト翻訳だけすばやくやってもらって、あとは社内で吟味して訳文を作るというようなプロセスを導入していたこともあります。1日ぐらいで翻訳してくれると業者さんとあらかじめ契約しておくと、本社で発表したときには、もう訳文が用意されている、なんてことも可能になります。もちろん、これも予算次第ですが。

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