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本当は恐ろしいグリム童話より恐ろしかったドヴォルザーク

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ドヴォルザークといえば、有名な交響曲第9番「新世界」など、泣かせどころと、はずさないクライマックスで親しみやすい楽曲が多い。彼は交響詩もいくつか書いているが、これまで全然ノーマーク。今回演奏会で取り上げるので、初めて真剣に向き合ってみた。

今回演奏するのは「金の紡ぎ車」という作品。紡ぎ車というのは、眠り姫(眠れる森の美女)に出てくるアレだ。この辺ですでにグリムなにおいがするが、下敷きになっている物語には、若い王様と美しい娘、そしてその継母、義姉が登場する。もはや、眠れる森のシンデレラ状態だ。

で、どんなに美しい話なんだろうと期待してしまったら大間違い。実際は、魍魎の匣を凌駕するホラーサスペンスだ。

簡単にあらすじ。

昔々あるところに美しく若い王がいました。ある日森で狩をしていると、美しい娘に出会い、一目惚れしてしまいます。王は娘にプロポーズしますが、これを知った継母は、娘を殺して、代わりに義姉を嫁がせます。

魔法使いはバラバラ死体の娘を蘇生しようとしますが、義姉が隠し持っている足がないために成功しない。そこで、金の紡ぎ車と交換で、これを入手する。一方、義姉が紡ぎ車で糸を紡ぐと、紡ぎ車は彼女たちの悪事を歌い上げる。王は急いで森へ行き、蘇生した娘と再会して、めでたしめでたし。

細かいシーンを気にしないと、ハッピーエンドだが、途中の蘇生とか、バラバラ死体とか、尋常でない景色を思い浮かべてしまう。

音楽は、そこまでホラーかというと、そうでもなく、おどろおどろしさはあるものの、あらすじを読んで受ける衝撃ほどのことはない。もっとも、冒頭のオッペケペーな王のファンファーレ(譜例①)や、娘との出会いを暗示する甘美な旋律(譜例②)との対比からすれば、怪しげな雰囲気の箇所は随所にある。ただ、いずれにしても、演奏する側が、相当なホラー感を演出しないと中だるみしてしまう。

譜例①

Dvorak01

譜例②

Dvorak02

この作品、冗長だとか、中だるみするとかで、いまいち評価は高くないのだが、どうもその辺に起因するのではないかと推測している。

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