何役もこなしながらこぶしをきかす「死と変容」は攻める姿勢が必要
»
仕事まわりがあわただしくなっているものの、演奏会は待ったなしでやってくる。海外出張やら、前職では長期の地方出張などがありながら、15年ぐらい欠席することなく演奏会に出ているのだから奇跡だ。
たとえ仕事が忙しくても、頭の中が自由な時間はあり、表現に難儀するクセのあるフレーズや、複雑なリズムパターンなど、弾かずに整理しておくことはできる。今回の演目、リヒャルト・シュトラウスの「死と変容」も、そんなパターンの連続である。
冒頭の鼓動のリズム(譜例1)はもちろん、随所に登場する三連符による「ひねり」は、漫然と弾いていたのでは雰囲気が出ない。
譜例1:
中間部の情熱的かつ熱狂的な箇所は、この連続。朗々と歌っていると思ったら、直後に「こぶし」をきかせ、裏方にまわって、また表で朗々と…(譜例2)。
譜例2:
「死と変容」は、守りでは決して演奏できない曲目の典型。攻めに出るには、陣形を理解していること。楽器を持たない空いた時間のシミュレーションが欠かせない。
SpecialPR