将来を語ることの難しさ - 新しい対話方法へ
先日のデベロッパーキャンプのジェネラルセッションで、DelphiプロダクトマネージャのNick HodgesがDelphiの将来計画について話しました。その際、非常に正直に将来計画を語るときの制約について述べています(こちらでビデオも公開しています)。
「(免責条項を見せながら)どのような購買の決定をする場合でも、これから話す内容に基づいて決定しないようにしてください。買ってくださいということでこういう話をするに、奇妙なことなんですけど」
そうです。現在わたしたちは、将来計画について語ることに大きな制約を受けています。その遠因は、例のエンロン事件にはじまる不正経理で、非常に厳格な会計基準を導入するようになった結果、例えば、将来への計画の約束によって販売が成立した場合、その売り上げは会計基準に抵触することになります。従って、将来の計画は、計画であって、何も約束できない、言えない、ということになってしまうのです。
ITの世界は常に進化、変化しているので、どこへ向かおうとしているか、というのは、購買を決定する重要な要素であると思います。しかし、厳格な会計基準に自らはまらないよう回避する姿勢をとれば、何も語らずあるものを買ってください、という非常に消極的な姿に映ります。
われわれのような身の丈の会社は、あまり大きな未来図を語るというのではなく、現在の製品の将来像を語るぐらいです。そうすると、なおさら現実の製品の延長線上での話題となり、厳格な会計基準からは嫌がられるようになってしまいます。
先日実施したDelphi Hourは、そのような限定された状況下で、「将来のお約束はできない」ながらも、現在わたしたちが考えている計画を率直にまな板の上に出して、質問を受ける機会を持てました。もちろん、全部をおおやけにすることはできませんけど、問題の共有と、その方向性に対する意見を持っていただくことはできたのではないかと思います。
これまで、例えば、将来についての公式回答を、と要求されると、何も約束できません、というつれない返事しかできませんでした。これは現在も変わりませんが、その代わりに、将来について語る場をつくることで、理解いただくことができるのではないかと思っています。ユーザーの皆さんも、多くを得たいならぜひ参加するというスタンスで考えていただければと思います。
恐らくこのようなスタイルは、これまで経験してきていないものだと思います。あくまでも1ベンダーのソフトウェア開発に関することですが、その結果は、多くの開発者の方に影響を与えることなので、こうしたプロセスは価値あることだと考えます。