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開発ツールビジネスの再生に格闘。マーケティングの視点で解説

外資系日本企業のフィールドマーケティング

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先日の大阪のイベントで、参加された方から、「マーケティングってどんな仕事をしているんですか?」と聞かれました。そのときは、日々の仕事をつらつらと説明しても、なかなか分かりづらいよな、と感じましたが、後で、限られた専門的な市場であり、かつ、アメリカに本社がある外資系の日本でのマーケティングということで、かなり特殊な状況下の仕事なんではないだろうかと思い至りました。

シリーズものではありませんが、ちょっとこの辺の話をときどき取り上げていきたいと思います。

プロダクトマーケ vs フィールドマーケ
はじめに明確にしておかなければならない概念がこれです。パッケージソフトウェア 製品を販売している企業にとっては、製品ありき、というのは言うまでもありません。市場の潜在需要をかぎ分けて、製品をつつがなく世の中へ出し、需要にあ うべく軌道修正を図っていく、こんな姿が連想できるかもしれません。
しかし、実際の外資系企業の各国支社がこうした役割を担っているのはまれで、特に近年、本社への機能集中化、中央集権型が流行していますので、たいてい、各国支社のマーケティングは、フィールドマーケティングという位置付けになります。
フィールドマーケティングとは、いわゆる販促中心のマーケティングで、営業と連携して販売プロモーションをやったり、イベントの企画や、PR活動などに従事します。この場合、元ネタは、本社から落ちてくる、というのが典型的なパターンです。

 

プロダクトマーケティング

フィールドマーケティング

フォーカス

製品

プログラム
(いわゆるキャンペーンやイベント)

メトリックス

製品リリース(でも最終的には売り上げか)

売り上げ直結

仕事のサイクル

製品リリースサイクル

四半期(売り上げ単位)

一緒に仕事をする人

エンジニア、開発チーム

営業

仕事でつきあう社外の人

ユーザー、同業他社、メディア

いわゆる業者さん、広告関係、チャネル

必要とされる知識

製品が対象としているテクノロジー
マーケットの理解

マーケットの理解
マーケティングプログラム

マーケティングの理想と現実
このような事情から、実際のマーケティング活動というのは、交渉と仕込みの日々で、あまり華やかなものではありません。表舞台で目立つのが好き、という人は、裏方の世話人がいないとうまく機能しません。また、裏方の世話人も、本社との交渉も必要です。本社との交渉は、結構な負担ですから、実際には、市場を向いているのか本社を向いているのか分からなくなってしまうようなこともありえるわけです。
しかし、成功している多くの人は、うまく日本市場を向くことができているようです。本社とのコミュニケーション、現場の仕込み、表舞台のいずれかだけ秀でていてもだめなわけで、限られた人数で、これらをうまくこなさなくてはなりません。

CodeGear的フィールドマーケ
では、CodeGearはどのようにしているかですが、まず、製品開発は日本語版の作成も含め、米国本社が中心に行っています。日本の場合、英語版をそのまま売っている他の国と違い、「日本語版」を出荷するた めの、他の国のフィールドマーケティングが行っている以外の仕事も行っています。主な仕事としては、プロダクトマーケティングにかかわる領域である製品そのものの情報のインプット/アウトプット、それから製品出荷にかかわるいろいろな作り物関係(いわゆる工房系の仕事)です。
日本は「日本語版」の売り上げが99%以上を占めるという非常に特殊な国なので、日本語版の製品計画を前提にしないとフィールドマーケも成り立ちません。そのため、プロダクトマーケティング的な仕事が、フィールドマーケの計画立案にも大きくかかわってきます。私は、フィールドマーケみたいに括って分けることにはあんまり賛成していないので、フィールドマーケの立場からも、プロダクトマーケに(必要に迫られて)侵蝕しています。この侵蝕のおかげで、わずかなリソースでも、製品の準備から発表をはじめとする一連の流れを効率よくまわせている気がします。

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