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開発ツールビジネスの再生に格闘。マーケティングの視点で解説

山口晃氏のアイデアのあたため方

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昨晩NHKのトップランナーという番組(25日の再放送)で、画家の山口晃氏がゲスト出演していた。山口晃氏といえば、ACの「江戸しぐさ」のマナー広告を覚えている人も多いだろう。日本画と精密画を合わせたような、ダイナミックだが綿密な独特の世界を描く画家だ。

山口氏の創作の秘密を聞くくだりで、彼が面白いことを言っていた。おもいついたことは、おぼろげな輪郭で描くのだそうだ。頭の中にあるイメージを絵にしてしまうと、そのイメージが失われてしまう。お母さんの顔は頭の中に思い描けても、それを絵にしようとしたとたん全然別のものになってしまう。描くことで忘れてしまうのだ。

漠然としたイメージを絵にしてしまうことは、広大な創造性を切り取って、その多くを捨ててしまうことに他ならない。獏としたイメージは、獏としたままメモとして残し、結構長いことあたためておくそうだ。

先日、永井さんのエントリで 「まず技術は考えるな」小林製薬の新製品開発 という興味深い記事があったが、最終的に技術によって、獏としたイメージをそぎ落としていく作業が必要であるにしても、新しいものを創造していくときに、最初から固定観念でありきたりのものに落とし込んでしまわない考え方には、通じるものがあると思った。

イメージが具体化しないときは、獏としたままであたためておく。そんな取り組み方が重要だなと感じた番組であった。

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