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開発ツールビジネスの再生に格闘。マーケティングの視点で解説

月に行ったアメリカ人が注目する「カイゼン」

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日米のはざまで仕事をしていると、アメリカ人のアグレッシブさ、よく言えばチャレンジ精神、悪く言えば綱渡り人生を痛感することがよくあります。彼らの基本的な態度は、「目的に向かって進んでいこう。問題があったら都度解決していこう」です。こうしたアグレッシブさからすれば、石橋を叩いて渡る日本人は、慎重かつ細心ではなく、後ろ向き、建設的でない、と彼らには映るようです。

「アメリカ人」とステレオタイプでものを語るのは危険ですが、アメリカ的文化のよりどころのひとつには、建国以来のフロンティア精神があることには異論はないと思います。こうして成功してきた人たち、あるいは人が、よき教師として、その成功の手法を教えるというのは、しばしば遭遇する文脈です。先日、ニュースでイラク人兵士に「教育」するアメリカ人兵士の映像が流れていましたが、戦場でも「教師」たらんとする「アメリカ的」の典型といってもいいでしょう。

そのため、彼らがいうところのチームワークという言葉は、我々が連想するボトムアップ型のイメージではなく、トップダウン型で、それぞれが与えられた役割を120%こなすという意味になります。チームワークにはリーダーシップが必須なわけです。そんな彼らのチームワークパワーは、不完全と思われるものからでも、成功を導きだします。本当に彼らはそれで月に行ったんですよね。

でも、近年、日本的な成功が、かつて彼らが猿真似と評していたのとはちがう、確かな成功であることが理解されてきています。なんで日本人はうまくいくんだろう、という興味が、「カイゼン」などのキーワードへの興味にもなっているようです。なぜなら、ボトムアップを基本コンセプトとするカイゼンは、アメリカ的なチームワークパワーとは相反するからです。かつては、アメリカ的に押し流されて、きっとこっちのほうがいいのに、と思いながらも日本的を押し殺していたようなシーンでも、「カイゼン」をちらつかせれば、興味を持って聞いてくれるようになっています。

自ら相手に「アメリカ的」のレッテルを貼って拒絶することは簡単ですが、彼らが「日本的」をどう理解し、どう期待しているかを知って、その上でプレイするというのも、国際関係では重要なようです。「カイゼン」に注目しているなら、「後ろ向き」ではない慎重さを持った日本人の質へのこだわりを見せてあげようじゃないか、と考える今日この頃です。

異なる行動規範の人々が集まって、ひとつのものを作るというのは、非常に難しい作業です。でも、お互いを理解しようとする、さらに一歩踏み出して、相手に理解しやすいようにしてやる気遣いがあれば、かなりのことは改善できるんじゃないかと希望を持っています。

CodeGearでも、フィールドテストプログラムという「アメリカ的」な手法に、日本的を融合させる取り組みを開始しました。ここでもカイゼンがうまく機能してくればと期待しています。

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