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千秋「たーらーら、じゃなくて、た~らーら」

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なんのことやら、というタイトルですが、オーケストラの練習で、そこは「たらたた」じゃなくて「たやタタ」なんていうセリフ、結構よく聞きます。部外者にはなんのことやら だと思いますので、ちょっと解説しましょう。

「た~らーら」は、例としてあんまりよくない(というより結局具体的にどの箇所なのか分からない)ので、以前演奏したことのある、ベートヴェンの交響曲第7番のセカンドヴァイオリンのフレーズを取り上げてみます。ベト7の第1楽章は、ゆったりとしたしかし力強い序奏部から、ヴィヴァーチェの躍動感のある主部に入ります。木管が主題を奏でたあと、いよいよヴァイオリンが熱狂的に主旋律を演奏します(譜例1)。

譜例1:

 

ただ、残念ながらセカンドヴァイオリンにスポットライトがあたるのは、爆発の瞬間まで。そのあとの主旋律はファーストヴァイオリンのみで、セカンドはヴィオラとともに裏方にまわります。しかしこの裏方、実は非常に重要で、躍動するビート感の表情を決める役割を担っています。

さて、この部分、楽譜上では、あまり細かい指示はありません。バリバリ弾くのか、すこしスタッカートぎみで弾くのか、好みの分かれるところ。もしビートを効かせて頭にちょっとアクセントをつけ、スタッカートをつけて弾くと、譜例2aのようになります。

譜例2a:

 

なぜ最初の部分が「「ティヤ」なのかというと、そこについているスラーを若干アクセント気味で弾くことを表しているからです。1番目の音と2番目の音をひと弓でつなげて弾く、その表情が「ティヤ」なのです。そのあとの「タ・カ・タ・カ」が、スタッカートです。

でも、この裏方。最初はビートを利かせ、顔を紅潮させてバリバリ弾いても、だんだん主役に対してうるさい存在になってきます。そこで、「出だしを はっきりで出したら、すこしかすんで」なんて指示されます。それを歌って表すと「出だしは、ティヤタカタカ、3小節目ぐらいからすこしかすんでティヤハカ ハカ」みたいな感じ(譜例2b)。

譜例2b:

 

タカタカとハカハカ。何が違うかって、それは声に出してみてください。実際楽器では、「タ」が「ハ」になる分、すこしぬく感じになります。いくぶんゆるめのスタッカートです。逆にもっとはっきりしたスタッカートなら「ティヤティカティカ」とか。

弦楽器は右手のニュアンスが非常に難しい楽器です。しかも、ヴァイオリンの場合、人間工学的に非常に無理な体勢であり、本来円運動である腕を弦と直角に直線運動させ、微妙な強弱や速度差をつける必要があります。ヴァイオリンは子供のころからやってないとだめ、といわれる所以はそこにあり、自分のように学生になってから始めた人間には、なんとも越えられない壁があるような気がします。

とはいえ、こうした声によるイメージは、オーケストラ全体で、目指すべき音の感覚を統一させ、共通した努力目標に近づけるのに役立ちます。そして、オーケストラは、音の集合体なので、向いてる方向がばらばらなのと、そうでないのとでは、大違いです。ベクトルが違うとお互いに打ち消しあって、まとまりのない演奏になってしまいますが、同じ方向を向けば、たとえひとりひとりが完璧でなくても、相補ってひとつの音楽になります。

「たーらーら、じゃなくて、た~らーら」

これは、はやりの「のだめカンタービレ」で、オケの練習中に千秋が団員に指示するセリフなのですが、これには、こんな深い意味があったのでした。

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