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ヴァイオリンってマラソンみたい...

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演奏会本番から一週間近く経って、シューマンやプロコフィエフのない日常に戻りつつあります。半年に一回これを繰り返して、よく知らなかった曲を好きになったり、ただ好きだった曲の渋みも理解するようになったりと、好きの幅と深さが広がっていきます。

本番中に演奏しながら、「あ、これでこの曲は(ひょっとすると)もう弾く機会がないのかも知れない」と感じることがあります。アマチュアは本番のための練習だけでなく、練習の過程も楽しみのひとつなので、それがこの曲については、もう一度取り上げる機会がなければ、もうその機会もないのだな、とちょっと寂しい気持ちになるわけです。

さて、今回は、ステリハであらためて感じたのですが、とにかく休みの小節が少ない曲目でした。シューマンは確かに厚塗りなのですが、他の曲目も何か常に音符があります。このたびめでたくヴァイオリンデビューを果たした同期のフルート奏者(この転向すごいよね)の感想は、「ヴァイオリンってマラソンみたいね」。

今回は仕事が忙しく、本番数週間前の走りこみとかできなくて、いきなりフルマラソンしたら、終了後に腰に来て、レセプション(いわゆる打ち上げです)ではへこたれてました。もっともやりすぎだという周囲の声も。

それと、うれしいことに、ヴァイオリンのエキストラとして、大学時代の大先輩が応援にかけつけてくれました。レセプションで、「いやぁ、藤井のコラム楽しませてもらったよぉ」。そう、結局プログラムには1ページ穴が空き、入稿30分前に1ページコラムを書いたのでした。

そんなに楽しんでもらえたならもったいないので転載。これフィクションですよ。

●編集後記的なコラム

夏の演奏会 - 体育会系ヴァイオリンの暑さ対策!
このコラムは、レイアウトの都合上もったいないスペースができたときに登場する不定期コラムです。「毎回やって」という声もあるのですが、プログラム作成を担当している立場としては、毎回締め切りに追われる中でノルマをひとつ増やすのはちょっと、というよりかなり気がひける。しかし、今回めでたくスペースができたので、茶飲み話でも。

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夏の演奏会は、暑さ対策が欠かせない。ホールは冷房も効いているからなんて油断していると大間違い。本番では、ライトを浴びてかなり暑くなる。それに、直前まで半袖の涼しい格好をしていて、突然熱吸収のよさそうな黒いスーツに身を包むから余計だ。

生の演奏を見る(聴くのではなく!)楽しみは、やはりその熱気をストレートに感じられること。そういう意味では、クールビズなんかで涼しげに弾かれたのでは金返せになる。演奏する側は、暑さは敵ではなく栄養なのだ。だから、夏の演奏会は、その暑さを見方につけて、演奏に支障をきたさない範囲で、猛烈に燃えてみせるのが、正しい暑さ対策ということになる。

では、どうするのがよいか。演奏する曲目の程度にもよるが、持続的な反復運動は、過度な発汗をもよおします。夏場は冬よりも代謝が良くなっているので、予想以上に汗が吹き出てくるため、連続したフォルテの刻みなんかを狂ったように弾いていると、一気に水浸しになってしまう。だから、一般的にこれは「最後にとっておく」か「修復可能なバッファ」が考えられる場合に完全燃焼させる。例えば、終楽章の最後とか、長い休みで汗をぬぐう時間がある前の盛り上がりとかである。

演奏曲目によっては、休みがほとんどないものもある。こうした場合は、短距離走ではなく、長距離走の発汗対策が必要になる。本当は短パン、ランニングといきたいところだが、残念ながらそうはいかないので、吸水性のよい下着とか、タオル地のハンカチとかが有効だ。汗の弊害だが、楽器がすべるというのがひとつだが、自分のようにめがねをかけていると、めがねに汗がついて見えにくくなったり、ラーメン食ったときみたいに曇ってしまったりする。めがねのレンズを拭くというのも重要な作業のひとつなのであるが、これにも落とし穴があった。以前もコラムに書いたような記憶があるが、めがねがずれるという事態を回避するためにスポーツ用めがねバンドを導入してみたが、これがいかん。めがねバンドをしていると、めがねをはずしてレンズを拭くという操作が難しいのだ。現在では、Qちゃんも古田も愛用しているオークリーのスポーツ用めがねを使用することで、よいパフォーマンスを実現している。

今回の曲目シューマンも、休みがほとんどない楽曲だ。しかし、金子氏の曲目解説にあるように、これらすべてを全力投球してしまうと、厚塗りになってしまうので、メリハリをつけることが要求される。暑さ対策としては、申し分ない。しかし、見せる「熱さ」としては、このメリハリをどう表現するか、それが別の課題として発生した。これは本番当日までの宿題としておこう。

はて、これは音楽についてのコラムでしたよね。 (藤井 等)

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