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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

新年の抱負なんてない、あるわけない

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 お題が「2013年の抱負を聞かせて!」なので、これに答えるとするなら、「ヤダよ、教えるワケないじゃん」となる。そも抱負とは〝心のなかに抱き持つ計画や決意〟であって、字義通りに解釈すれば、これは秘め事なのである。抱負を誰かに聞かれたからと言って、ホイホイと答えるわけにはいかん。ならん。

もはや1年は1年でない

 歳を取ると、月日の感覚がまったくもってオカシなことになる。自分はボケてんじゃないか? と思えるほどに、実際の時間とズレが生じていることに愕然とする。例えば先日、「9.11のときって、何してた?」と友人に聞かれ、「6年くらい前だから・・・えっと・・・」と口ごもっていると、「9.11は2001年だよ・・・」と、教わる。そんなに昔だったか・・・。

 自分の乗っているクルマはまだ新車、3~4年しか経っていないつもりでいたら、買ったのはもう8年も前のこと。新車でも何でもない。斬新なデザインのクルマを街中で見かけ、「あ、アレ欲しいなあ~」と思うと、それは私のクルマの、すでに2モデル後の最新車種だったり。このように、かなり昔のコトが、つい最近のように感じられてしまう。

 この時間のズレはおおよそ倍であることに、最近気付いた。つまり、自分が2年前と思ったらたいていそれは4年前の出来事であり、5年前と感じたら、もう10年前なのである。

 と考えると、1年という期間がいかに短いことか。

 実際、毎年参加する新年会なんて、いつもつい3か月前のことのように記憶しているし、現に、そのときの服装・話した内容・お店などすべてを鮮明に覚えている。みんなを笑わせようと喋っている最中に、「あ、このネタ、去年も話してたわ・・・」と気付き、急遽、話を盛りに盛りまくって、オチを変更する。これを毎年やるものだから、しまいには、元のネタそのものが何だったのかすら、忘れてしまう始末。

 でも、確かに1年という時間は過ごしており、まさしく光陰矢の如し。年齢を重ねると、もはや1年というスパンで物事を捉えること自体が、意味をなさなくなるのだ。だから毎年、新年の抱負など持たないようにしている。

 コドモとオトナでは、時間に対する感覚が根本的に異なる。幼い頃、小学校生活が異様に長く、月日が永遠に思われたのは、コドモは時間を「加算」する生き物だから。時間は十分にあり余っており、またさしてドラスティックな出来事もないため、同じ日常を、同じように積み重ねていくだけ。明日はまだまだやってくるし、いつでも必ず訪れるし、焦る必要がない。要は、時間は無限なのだ。

 対してオトナは、「減算」で考える生き物。忙しく働いていれば、1日なんてあっという間に終わる。1ヶ月も半年も、それこそ1年もすぐだ。時間がもっとあればな、と常々実感しているから、余計に可処分時間の価値を高めたいと考える。

 私が時間もしくは月日の〝有限性〟に気付いたのは、30歳の誕生日の朝だった。何気なくタバコを吸いながら、ふと想った。「意外と自分の人生って、短いのかもしれないな・・・」と。何となく、人生を折り返した気分は、ちょっとした戦慄。それからというもの、自分が仕事ができるのは残り30年、残り29年と、逆算して考えるようになった。

 とある編集者が言っていた。「ボクは40歳なので、計算すると、自分が手掛けることのできる本はあと60冊しかないんですよ」。

オトナは中長期で考えるべし

 オトナはコドモではない。当然、時間の感覚が違うのだ。コドモなら1年の抱負を立てても良いだろうが、オトナには相応しくないだろうし、現実的とは言い難い。

 ということで、私は30歳くらいから、「3~5年の中長期戦略」を立てるようにしている。3年先にアレをしよう、そして、それを軌道に乗せて5年後はコレをしようといった具合。このくらいのロングスパンで物事や自分を捉えると、今何をすべきか、どんな人脈が必要なのかといったことが具体的・現実的に見えてくる。そもそも、1年で達成できてしまうようなビジネスなど、元から興味がわかないし、3年先の壮大な計画の方がワクワクできる。この辺の話は、私の本『名刺は99枚しか残さない』に書いてある。

 3年先を見据える習慣がつくと、視野がぐっと広まるという効果もある。なぜなら、目先のビジネスチャンスでなく3年先を狙うということは、それだけ人より未来のマーケットを想像し、準備し、感覚を鋭敏にすることに他ならない。他人や世間と数年、時間軸をズラすということは、マーケットや流行を〝鳥の目〟で俯瞰することになる。

 新しい企画やビジネスというものは、「世間の一歩先」では消費者はついてこれない。「半歩先」くらいがちょうどいい。でも、その微妙な感覚を身につけ、自分でコントロールするには、3年先くらいまで見越せていないとならない。

 ちなみに自分の中長期の戦略とは、日々考えるものであり、常に〝ココロに抱き持つ〟ものである。新年だからといって、わざわざ改まって考えるようなことではない。

 ということで、新年の抱負はない。そも、秘め事なので、いつかそれが花開いた時、「あ、そうだったんだ~」という風なビジネスがいい。

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

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