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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

有名ラーメン店にて考える【不思議な流儀】

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日本の国民食と呼ばれるラーメンほど、独特で不思議な食べ物はない。何が不思議って・・・その店その店の流儀や作法。有名店ともなれば店の外には長蛇の行列ができるものだが、そんな有名店ほど、店内には独特の雰囲気が漂うものだ。それらに時に困ったり、時に笑ったり・・・。

タンギョウ、タンギョウ・・・

ここ数カ月、私はとあるタンメンの有名店に足繁く通っている。ほのかな海鮮の風味とコクが漂う濃厚スープ、シャキシャキの野菜大盛りトッピング、そして麺はお馴染みの浅草・開花桜の太麺・・・。後味のスパイスもパンチがきいており、病みつきになる至極のタンメンを供する店である。かなりボリュームある一杯にもかかわらず、少食の女性でもするすると完食してしまうほどに、箸が進む、というか、止まらない一品。

さて、ラーメンの有名店につきもの、あるいは名物とも言えるのが「お店の暗黙のルール」なり「独特の流儀」である。こだわりの注文の仕方であったり、入店までのプロセスであったり、初めて訪れる人は戸惑うことも多い。店内はたいてい常連が占めており、一見さんには分かりづらいシステムが、難儀であったり、笑えたりもする。

有名店に存在する独特の流儀・・・初めてお店に入った時に味わうちょっとした緊張感が、私はけっこう好きなのだ。こだわりのラーメンを楽しむだけでなく、独特の空気感みたいなものも一緒に味わうこと、それ自体が"有名店のスパイス"ともなっている。

数ヶ月前、私が初めてそのタンメン屋をたずねたときのことである。十数人の行列の真ん中あたりで並んでいると、店員が注文を取りにやってきた。恐らく入店と同時に食べさせるための配慮、先に聞いておこうという寸法なのだが、ここで私は有名店の最初の洗礼を受けることとなった。みなが聞き慣れぬコトバを発している・・・。

行列の先頭から順々に注文を聞いていくのだが、みな決まったように「タンギョウ」「タンギョウ」と、呪文のようなコトバを繰り返す。タンギョウって何よ? どうやら商品の名前のようだが・・・。私の番になった。こういう場合、きっと常連であろう"先輩方"に従った方がベスト、流れに乗るべきだ。たぶんオススメに違いないと考え、私もタンギョウを頼むことにした。

すると、私の後ろに並ぶオジサンが「タンギョウって何?」と流れを止めた。店員は「タンメンギョウザです」と答えた。ほほお、タンメンにギョウザが入っているのか・・・。さすが有名店は変わったトッピングをするなあと、期待が高まる。オジサンはしばし考えてから「タンカラ」と答えた。またもや聞き慣れぬコトバ。でも、タンカラが何なのかについて、オジサンは質問しなかった。

こういう時の群集心理というのは見事なもので、全員がタンギョウ、タンギョウと、まるで"入店するための儀式"のごとく繰り返すものだから、行列の注文はすべてタンギョウとなってしまった。ただひとり、タンカラのオジサンを除いて。

注文から十数分後、ようやく入店することを許される。待ち遠しい一瞬である。店員が行列を3~4人づつに分け、順に案内していく。順々に着席していくと、さらなる儀式が待ち構えていた。店員がまたもや聞き慣れないコトバを、お客ひとりひとりにかけている・・・。

ショ~イ~カ~、ショ~イ~カ~・・・

ショ~イ~カ~? まったく日本語には聞こえないというか、日本語でない。先ほどのタンギョウは"タンメンギョウザ"の略であり、理由を知れば意味が理解できるが、ショ~イ~カ~に関してはその可能性も見えてこない。私はとっさに逡巡する。ヤバイ! しかし、客はこれまた見事、順々に「ハイ」「ハイ」と答えているではないか。

従順な私は「ショ~イ~カ~」「ハイ」と、平静を装って答える。まったく意味は分からないが、店員のスムースな作業を断ち切らぬよう、務める。ところが、またもやKYな人が現れた。タンギョウって何? と質問していたオジサンが私の隣に座っていたのだが、彼が流れを止めた。

「ショ~イ~カ~」に対して「ん? 何だって?」と、聞き返したのだ。まあ、普通は聞き返すべきところだろう。だって、何を言っているのかさっぱり分からない。私は常連のふりをしているが、オジサンは正直な人なのだ。

「ショウガ、入れますか?」。ええ! ショウガの話だったの? コップの水を飲んでいた私は思わず噴き出しそうになる。「ショウガ」「いかがです」「か?」。その語頭のみにアクセントがつけられた結果、意味不明の問いが誕生したのだ。恐らくショウガを断る客があまりいないのだろう、毎日毎日、流暢にしゃべり続けた店員は、いつの間にか"不思議なコトバ"を駆使するようになっていたのだ。

ほほお、タンメンにギョウザのトッピング。そこにショウガを投入するとは・・・。またもや期待が上昇する。

ギョウザ入ってないんだけど・・・

待ちに待った「タンギョウ」が目の前に差し出された。ショウガの香りがほのかに漂い、食欲をそそる。ハイと答えて正解である。私はさっそく山のように盛られた野菜をかきわけ、お目当てのギョウザを探すことにした。何と言っても、これが名物のタンギョウなのであるから。でも、ない。ない。ギョウザがない! さらに野菜をかきわけ、その下に隠れる麺もひっくり返してみたけれど、どこにもギョウザがない。

おかしい・・・。私のだけギョウザを入れ忘れたのか? 周囲を見回しても、見た目は一緒である。誰もギョウザのトッピングが入っていない。その代わり、どんぶりの横にギョウザの皿が置かれていた。よく見れば、私のところにも皿が・・・。タンメンギョウザって、タンメンのなかにギョウザという意味ではなかったらしい。タンメン、と、ギョウザ。別々。日本語を略しすぎだろう。

みなが黙々と食べ始めている。一方で、隣のタンカラオジサンが挙動不審になっていた。彼の横には「カラアゲの皿」。ははあ、私はそこでようやくタンカラの意を理解した。オジサンはカラアゲをじっと見つめ、首をひねっている。

「カラアゲは頼んでないよ。これ、サービス?」と、オジサンは思わず店員にたずねた。タンギョウの流れに反して自分だけ違うものを食べたいと考え、適当にタンカラを注文してしまったようだ。店員がタンカラですよね? とオジサンに確認し、彼はそうだと答えたが、それで終わった。オジサンは状況が飲みこめないまま、少し嬉しそうにカラアゲを食べ始めた。

食べ終わりはトイレに行くべし!

やっぱり有名店というのは独特だなあ、などと感心しながら、タンギョウを食べる。タンメンももちろんのこと、ギョウザも非常に美味しい。さすがはタンギョウ! みなが頼むだけのことはある。従ってよかった。隣のオジサンは、私のギョウザを羨ましそうにちらりと見ていた。

ところが独特の流儀はこれでは終わらなかった。食べ終わった客は次々と店の奥にあるトイレに向かうではないか・・・。何? まだ"最後の儀式"があるの? どんぶりの底が見えてくるにつれて、私は再び戸惑いはじめる。食べ終わったら、トイレに行くべし・・・。客の最後の行動まで決まりごとがあるのか。

でも、私はこういう不思議な緊張感が好き。たまらない。意味不明なところに、ワクワクを覚えるのだ。多くのラーメン屋に通ってきたが、最後のトイレがマストなんてことは聞いたことない。ああ、有名店、バンザイ・・・。   

私は従順なオトコだ。あまりの美味さにスープまで飲み干し、さあ、仕方ない、必要ないけどトイレでオシッコして帰ろうと立ちあがり、店の奥にあるトイレに向かった。

「ありがとうございます。タンギョウですね? ○○円です。」

ん? ここはお会計するところ? 何でわざわざ店の奥にあるの? 普通、トイレでしょ・・・。食べ終わった客が次々と「ごちそうさん」と、座ったままお札を差し出す。店員が「お会計はあちらでお願いします」と、トイレと思われた店の奥を指差し、客は少し驚いたような表情をみせる。なんだ・・・タンギョウの行列は、みんな初心者だったんじゃん・・・。 

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

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