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「自分だけの武器」を持たねば、フリーランスとしては生きていけない。「オリジナルの戦略」を描けなければ、コンサルタントは務まらない。私がこれまで蓄積してきた武器や戦略、ビジネスに対する考え方などを、少しずつお話ししていきます。 ・・・などとマジメなことを言いながら、フザけたこともけっこう書きます。

【ノーギョー業界の常識】 いろいろ不明なコトが多い。それ以上に、書けないコトが多い。

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ビジネスコンサルタントにとって農業は別世界。見ること聞くことすべてが新鮮で、驚きの連続である。「リアルな日本の農業」を見れるチャンスはそうそうない・・・。しかし時に、その現実に虚しさと恐怖を覚えることも度々。私にとって、消費者にとって【想像だにしない事実】が隠されていたからだ・・・。

お米を混ぜて出荷するって、どういうこと?

普段、我々は「コシヒカリ」「ササニシキ」といったブランドを頼りにお米を購入している。こだわってくれば魚沼産が良い、新米が好きといった具合に、産地や時期も重要なポイントになる。昔は米は米屋でが当たり前だったが、今はスーパー、コンビニ、ネットとどこでも自由に買える。購入する場所が違えども、ブランド名や産地といった指標を頼りに選ぶことに変わりはない。そして、何となく思っているはずである。「高いお米が、安全なお米」「高いお米が、美味いお米」と。私もそのひとりであった。"無類の米好き"の私はスーパーより米屋の方がこだわりのお米を扱っているに相違ないと考え、いろいろな米屋を渡り歩いてお気に入りの一品を探し回り、アイガモ農法で無農薬栽培というとあるお米に辿り着いた。米屋はコメの専門家だけに、いろいろと教えてくれるトコロも好きだった。がしかし・・・。

通常、農家は収穫したお米をJAに卸す。本来なら直接消費者やスーパーなどの小売り企業に売った方が農家は儲けが大きいのだが、その手立てを持たないのでJAに卸すのが習わし=農家の常識である。さて、買い取ったJAはお米をどのように扱うのかというと、A農家、B農家、C農家・・・それぞれが持ち込んだお米を「農家ごと」に別々に管理するのではなく、コシヒカリ、ササニシキといった「ブランドごと」に管理する。例えばコシヒカリを例に挙げるなら、この段階でいろんな農家が持ち込んだコシヒカリが混ざることになり、それが市場に出荷される。何か問題?

農薬や化学肥料の使用量が分からないじゃん!

普通の消費者ならこの<混ぜこぜコシヒカリ>に何の疑問も持たないだろう。そう、コシヒカリであることに変わりはない。しかしこの話を聞いた私がまっさきに思ったのが「農薬の使用量が分からない!」ということだった。A農家が仮に100の農薬を使ったとしよう。B農家はその半分の50、C農家は10。200使っている農家もいるかもしれない。化学肥料も同じこと。つまり同じコシヒカリであってもその"中身"はまったく異なるのだが、買い取る立場のJAは"コシヒカリであればよい"というスタンスなので、すべてを混ぜて管理・出荷してしまう。農薬や化学肥料は使って当たり前(JAはこれらを農家に販売する立場でもある)なので、安全性に関する意識が薄い? というか消費ニーズに対するアンテナ感度が鈍いのだ。まあ、大量生産大量消費社会では個別管理は現実的に難しいので、農薬や化学肥料の使用量がまったく分からない"正体不明のコシヒカリ"が世に出ることになる。

米を作るくらいなら、私は家で寝ていたい・・・

農家サイドに視点を戻そう。以前、日本経済新聞の農業の連載に確かこんな一文が載っていた。「米一俵の卸値が13,000円に対して、経費が12,000円」。何? 私は目を疑った。とあるブランドの値段と平均的な経費の一例であろうが、これが米農家のティピカルな事例である。お米一俵=60キロ作っても、儲けがたったの1,000円。んなアホな? これ、どんなビジネスよ。一俵しか作らない農家はいないにしても、まったく儲からないことは自明の理。しかもこの経費に人件費は含まれていないというオチまでつく。5月に田植えし10月に収穫する。およそ半年分の労働の対価が1,000円。そのほかトラクターなどの機械や資材なども多数必要なため借金も抱えており、まったく儲からないのがお米農家。この話を農家から直接聞いた時、私は何とも言えない複雑な心境になった。

農薬や化学肥料に対する<農家の考え方>は千差万別である。一般的にはこれらを使うのがジョーシキ、使わない方がヒジョーシキであり、使った方が楽チンである。私はヒジョーシキな農家の部類に属している。さて、JAがお米をごちゃ混ぜにしてしまうスタイルを採用する上で興味深いのは<持ち込まれるお米に使われた農薬の量は気にしない>ことである。ブランド毎の定価が決められているだけで、農薬の使用量が少ないからといって高値で買い取られるわけではなく、反対に使用量が多いことに対する差別もない。おや? そうなの? ここに市場原理や消費者ニーズ、農家の苦労は反映されない。農家サイドから見れば、じゃあどうするか? 辛い思いをして無農薬やるよりは、農薬を使った方が良いと考える。ただでさえ薄利なのだから、収量アップを目指して農薬を使う。すると農薬を販売するJAはまた儲かる・・・という道理ができる。そもそも農家が安全な米を作りたい! という気持ちが萎えるシステムなのだ。

ブランド米の袋が売っている

ごちゃ混ぜで農薬の使用量が分からなくてもブランド米なら良いじゃない? と思う方もいるだろう。ところがそう簡単にはいかないのがニッポン農業のスゴイところ。驚いたのは、高値が付けられるようないろいろな「ブランド米の袋」が普通に売られているというのだ。とっても疑い深~い私はふと考えてしまう。「お米なんて見た目は一緒だから、安いお米入れてもバレないよな・・・」と。これらの袋は卸しを通さないで直接販売するときなどに使うものらしいが、果たして袋と中身が一致するのだろうか? 基本的には一致すると思うが、そうでない可能性を完全には否定できないというのもまた、業界の常識として根強いものがある。

農家が一番美味いモノを食べている

こちらは多くの人が知るところの話。農家は出荷用とは別に、自分たち家族で食べる分だけは農薬を使わなかったり極端に減らして丁寧に栽培する。俗に言う【農家の自家用米】というものである。家族・親せきで食べるだけなので生産量は非常に少なく、市場に出回ることはまずない。私は15年ほど前、一度だけ知り合いのコンサルタントから、その貴重な自家用米を分けてもらったことがある。わずかお茶碗2杯分。甘い香りとツヤはそれまで見たことのないインパクト、おかずはもはや不要なる白米であった。お味噌汁があれば十分という贅沢な美味さは、今も私の舌が鮮明に覚えている。「生産者が一番美味い物を食べる」・・・それは生産者の特権であるが、その頃の私には何とも納得がいかなかったが、今なら分かる。だって、苦労して作ってるんだもの。

お米だけでなく"農家は野菜も自家用は別に栽培する"という風習があり、自分たちで食べる分はネットを張って丁寧に少量栽培している。多くの畑を見れば、一か所だけネットが張られているからすぐに分かる。私はコンサルタントの経験と人脈を生かし、無農薬・無化学肥料の野菜を<適正な値段>で<直接販売>するMAKUWAURIを主宰している。値段は通常の野菜の3倍程度だが、プレミアムを勘案すれば妥当だと思っている。こちらはいわゆる【農家の自家用野菜】という位置づけであり、労働に対する"正当な利益"が出るよう私が値付けをしているが、多くの農家は自分で値付けができないシステムに組み込まれている。お米同様、驚くような値段で卸している。近隣農家との関係性が深まるにつれて、私はふと考えてしまう。農家がより満足できるような新しい流通システムが出来ないものだろうかと。消費者が、農家から直接購入するのが当たり前という時代が来ないものだろうかと。農家・消費者双方がハッピーになると思うのだが、これには農家の意識改革と同時に、消費者の意識改革も必要になるだろう。現代人、都会人は、これまでの私同様、あまりにも農業について知らないことが多過ぎるのだ。

農家あるいはその周辺業界で働く人にはいろんなポリシーがある。「俺はラーメン屋に行ったら、必ずネギ抜きで頼む」という八百屋がいる。長ネギはもっとも農薬を使っている野菜のひとつ、というのが農業界の常識であるからだ。またある農家は「コンビニのおにぎりは買わない」という。みなそれぞれ生産や流通の現場を知っているだけに、自己防衛しているようだ・・・。

(荒木NEWS CONSULTING 荒木亨二)

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