今後重要となる「AIを使いこなす力」
相変わらず生成系AIを巡る話題が沸騰しています。AIへの評価や取り組みが「推進派・積極活用」と「批判的・様子見」との間で揺れ動く中、新しく注目を集めているのが「プロンプト・エンジニアリング」です。
プロンプトとは「指示文」のことで、AIへの質問のことです。ChatGPTなどのAIの性能を十分に引き出すためには、どのように問いかければより効果的なのかを考えるのが、プロンプトエンジニアリングです。記事では、「言語モデルを効率的に使用するためのプロンプトを開発し、最適化する比較的新しい学問分野」と紹介しています。少し前に「質問力」という言葉が流行りましたが、それと似たような意味を持つ言葉と言えるでしょう。
例えば、「私は中小企業の経営者です」などと質問の前に自分の立場を明確にしておき、「新卒採用のために大事なことは?」と聞けば、その立場の人に有用な回答を得られやすくなります。さらに、質問の最後に「1,000文字以内で」「箇条書きで」などと書いておけば、無駄に冗長な文章が生成されるのを回避できる、といった具合です。他にもさまざまなアイデアが議論されていますので、是非検索してみてください。
AIに対して批判的な意見の中に「自信たっぷりに嘘をつく」といったものがありますが、そういった精度の問題や限界は推進派ももちろんわかっていて、それをもって「まだ使えない」とするか、「人間のほうが使い方を工夫すれば良い」と考えるかの違いかと思います。AIを使うために人間に新たなスキルが求められる、といのはなんだか本末転倒な気もしますが、これもAIが進化する途上の一過性のものと考えれば、必要なステップなのかもしれません。
AIの進化を恐れず、使いこなすことを考える
それにしても、AIの進化は急激すぎて、いよいよ多くの人の仕事がAIに置き換えられる可能性が出てきました。
「AIに仕事は奪われませんよ」から「今度は本当に奪われますよ」のヤバすぎる逆転...「第4次AIブームは《インターネットの発明》を超えるインパクトになる」と松尾豊さんが断言する理由
実際に事務職の人員をAIに置き換える動きも出ています。
しかし、見方を変えれば、これは「AIに置き換えても差し支えない仕事がAIに置き換えられる」という、ごく当たり前のことです。私も以前こんな記事を書きましたが、
AIのレベルが上がれば、代替できる仕事のレベルが上がり、そのレベルの仕事は置き換えられるということでしょう。生成系AIはそのレベルを一気に押し上げたのです。ただ、その進化があまりに急激すぎ、松尾先生ですら想像できなかったレベルに短時間で達してしまったということでしょう。人間側の対応(リスキリングなど)には時間がかかるため、この急激さは大きな問題になる可能性はあります。なんといっても、一番進化が遅いのは、人間なのです。
しかし、これでAIの進化が止ることは無いでしょうし、AIを使わないようにすることもできません。なんとかしてAIを手なずけ、使いこなさなければならないのです。
AIは人間の能力を拡張するための「道具」です。ChatGPTを「メガネ」にたとえた大学の先生がいらっしゃいました。メガネは「目」を置き換えるものでは無く、人間の能力を補完し拡張するものだ、ということですね。この考え方には賛成です。道具としてのAIも、人間を置き換えるのでは無く、あくまでも人間の能力を補佐するものと考えるべきでしょう。ハサミだって使い方を間違えば怪我をしますし、料理をするのに不可欠な包丁も、人を傷つける凶器にもなります。道具など、使い方次第なのです。
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