イーサリアムが見つめる「Web3の向こう側」
前回、「経団連が Web3 について提言 ~国・経済団体の関与は善か悪か?」という記事を書きましたが、その後いろいろ調べてみて、web3という言葉の持つ幅広さがわかってきました。web3という言葉を生み出したとされるイーサリアム財団の宮口あやさんの記事が面白かったです。
社会の仕組みを変える。そのために、技術の裏にあるマインドセットを広めたい:連載 The Next Innovators(4)イーサリアムファウンデーション 宮口あや
これを読むと、イーサリアムが目指したweb3と、今、巷で騒がれているWeb3(あえてWを大文字にしました:理由は後述)の間には大きな隔たりがあるということです。イーサリアムが目指しているのはお金儲けのツールではなく、社会を変えるためのインフラということなのですね。記事に
ビットコインがもたらしたスムーズで透明性のあるトランザクションというメリットを超えて、お金ではない部分の役割が一気に増える点に、社会を変えられる可能性を感じた
とあるように、イーサリアムはお金ではなく、社会を変えることを目指しており、それができるはずだ、という思いが伝わってきます。
さらにオープンソースでイーサリアムをつくることの難しさは、Web3やクリプトといった技術がものすごくお金に近い点にあります。
とも言っておられることから、むしろweb3がお金に近すぎることを懸念しておられるようです。「お金がない業界や分野のほうが、お金をどれだけもらえるかといったノイズに振り回されずにつくれるでしょう」とも言っておられるように、かなりな「ノイズ」があることは想像に難くありません。
ブロックチェーンはビットコインから生まれた技術ですし、お金に近いのは間違いありませんが、ビットコインがこれだけ投機の対象になってしまっているので、どうしても怪しい方向に引っ張られがちなのでしょうね。記事では以下の様にも書いています。
そもそも分散型の技術を使った世の中を目指しているので、EFもコミュニティもシステムも、どこか1カ所が大きなパワーをもっていてはつじつまが合いません。技術だけでなく、「どうやってみんなで一緒につくりあげるか」が大事なので、自らのパワーをどれだけ"引き算"できるかを能動的にやっていくことを心がけています。
EFはEthereum Foundation(イーサリアム財団)のことですね。イーサリアムが目指しているのはお金儲けのツールを作ることではなく、社会を変えるインフラをつくることだということなのです。
こうしてみると、昨今騒がれている「Web3」との違いが明確です。違いというか、見ている方向は同じでも、視点が違うのでしょう。イーサリアムは、遙か未来を見ていますが、それでは一般の人にはイメージが掴めないため、NFTやDAOなどのわかりやすい実装例を使って方向性を指し示しているのが「Web3」ということになるのかも知れません。
Web3とweb3
ところで、前回の記事で
細かいことですけど、伊藤氏が絡むと「web3」と、wが小文字で表記されます。すべてが統一されていますので、何らかの根拠があるのだろうと思うのですが、通常は「Web3」が一般的で、中には「WEB3」というのもあります。この辺からして、まだまだ過渡的な言葉なのだなあ、と思います。
と書いたのですが、これも、クリプトコミュニティの界隈では「web3」という表記に落ち着きつつあるようです。
やはり web3 には小文字の文化が合っている。小文字のかわいさやまったく偉そうではない感じで、かつ面白そうなノリが正に web3 って感じがする。
この他にも、何故webと3の間にスペースが入らないのか、とか、何故3.0ではないのか、など、さまざまな思いが込められた「web3」なのだそうです。今後は私もweb3と表記することにします。
ITの最新トレンドをわかりやすく解説するセミナー・研修を承ります
時代の変化は速く、特にITの分野での技術革新、環境変化は激しく、時代のトレンドに取り残されることは企業にとって大きなリスクとなります。しかし、一歩引いて様々な技術革新を見ていくと、「まったく未知の技術」など、そうそうありません。ほとんどの技術は過去の技術の延長線上にあり、異分野の技術と組み合わせることで新しい技術となっていることが多いのです。
アプライド・マーケティングでは、ITの技術トレンドを技術間の関係性と歴史の視点から俯瞰し、技術の本質を理解し、これからのトレンドを予測するためのセミナーや研修を行っています。ブログでは少し難しい話も取り上げていますが、初心者様向けにかみ砕いた解説も可能です。もちろんオンラインにも対応できます。詳しくはこちらをご覧下さい。