経団連が Web3 について提言 ~国・経済団体の関与は善か悪か?
経団連が「web3推進戦略」を公表しました。『日本が「web3鎖国」を脱し、各国の人材や企業に選ばれる「web3先進国」として地球規模課題の解決、ひいてはSociety 5.0 for SDGsの実現に貢献することを目指すための国家戦略を提言する』としています。
Society 5.0 for SDGsというのは最近経団連がよく使っている言葉で、内閣府が推し進めているSociety 5.0と今年流行のSDGsを組み合わせたもののようです。いろいろ話題になっているものをひとつのキャッチフレーズにまとめた、という感じでしょうか。
いきなり「率直に言って正気でないものを感じました。」と、完全否定です。公開部分しか読んでいませんが、この方の論点はFTX破綻に伴って暗号資産市場が崩壊しかけているのに、NFTを推奨したりしているのは明らかにおかしい、というもののようです。
この記事の中でも取り上げられていますが、経団連は今年6月に元MITメディアラボの伊藤譲一氏を招いて「DX会議」を開いており、そこでもWeb3を取り上げています。記事には「自民党が今年3月末に提言「Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略」を公表した後、岸田文雄内閣総理大臣が関係省庁に対応を指示するなど、政府の動き出しは悪くない。」とも書かれており、経団連が政府の方針に乗ったという側面も見え隠れします。
細かいことですけど、伊藤氏が絡むと「web3」と、wが小文字で表記されます。すべてが統一されていますので、何らかの根拠があるのだろうと思うのですが、通常は「Web3」が一般的で、中には「WEB3」というのもあります。この辺からして、まだまだ過渡的な言葉なのだなあ、と思います。
一方で、当の暗号通貨関連のニュースサイトでは、当然肯定的な(というか中立的な)取り上げ方です。
私自身、伊藤氏の著作も読みましたが、伊藤氏自身が「実際にどうなっていくのかは、人々が何を求めるかによって決まります。」(伊藤 穰一「テクノロジーが予測する未来」SB新書p.49)と書いているように、Web3に現時点で明確な定義があるわけではありません。これから皆で作り上げていくものであり、NFTが駄目なら他の方法を考えれば良いだけ、というのが正しい解釈なのではないでしょうか。
国が関与すると・・
まあ、国が先端技術に絡むとロクな事が無い、という気持ちは私もわかります。どうしても、第5世代コンピュータとか、電子政府とか、大失敗したプロジェクトばかりが思い浮かんでします。しかし、暗号資産やNFTのようなものの取扱いには法改正も必要ですし、国の関与は不可欠です。少なくとも国が前向きに取り組んでくれなければ話が進まない分野も多いですし、あちこちに予算が付けば、現場現場でより良い適用が模索されていくでしょう。無駄もあるとは思いますが、革新とはそういうものではないでしょうか。
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