Arm はどうなる? ソフトバンクとサムスンの協議の行方
実は先週いっぱいちょっとソワソワしていました。その理由はこれです。
これは9月の記事ですが、先月下旬頃から、ソフトバンクの孫さんが韓国を訪問してアArmに関する戦略的提携についてサムスン電子と協議する、というニュースがあちこちに載るようになっていました。(一般紙である朝日が取り上げるくらいですから、その注目度が伺えます)
その後、孫さんが10月1日に実際に訪韓したというニュースが流れ、どのような協議が行われるのかが注目されていました。
交渉がうまくいけば、先週中になんらかの発表があるのかも知れないと思っていましたが、今のところ特に大きなニュースはありません。9日付けのエコノミストの記事でも「韓国サムスン電子とソフトバンクグループ(SBG)との戦略的取引の可能性が濃厚となりつつある」としか書かれておらず、まだ何ら具体的な話は出ていないようです。
朝日新聞もエコノミストも、経済的(株式取引的)な観点からこの動きを捉えていますが、このブログでも追いかけてきたとおり、Armはただの投機対象ではなく、それが持つ技術の行方によっては世界中のIT企業に大きな影響を与える可能性があります。
サムスンがArmを買収することはない?
孫さん訪韓の動きが伝えられた後、当然のことながら「サムスンがArmを買収するのではないか」という観測が広がりました。何しろソフトバンクは業績の急速な悪化に伴い、早期に資金を手当てする必要があり、時価総額の高いArmは売却に絶好だからです。しかし、ソフトバンクはArmをNvidiaに売却しようとして失敗したばかりです。その失敗の理由は、条件が折り合わないといったビジネス上の理由では無く、各国のITベンダーや審査当局が難色を示したためでした。Armの技術がNvidiaに取り込まれるのを皆が恐れたためです。
それを考えると、サムスンがArmを買収するというのも、世界中から警戒感を持たれかねません。そのため、一部のメディアは「サムスンがArmを買収することはないのではないか」と書いていました。
こちらの記事では、孫さんが1日に訪韓し、4日にサムスン電子と面談したとあります。
そこから漏れてきたのは、投資では無く、長期的な提携に関する提案だったと言うことです。
孫会長は李副会長との会合でARMの株式売却やプレIPO投資(上場前株式投資)ではなく、サムスンとの長期的で包括的な協力を提案したという
こういった生々しい話は、やはり現地メディアが強いですね。
優良企業なのに・・ 売るに売れないソフトバンク
記事中にも「当初孫会長がビジョンファンドの損失でARM株の売却に出るだろうという予想が出ていたが、価格が最大80兆~100兆ウォンまで議論される上に主要国で反独占問題が提起されサムスンによる買収の可能性は小さい見通しだ。」とあるように、売却のハードルは高そうです。ソフトバンクも、良い買い物をしたはずが、重要すぎて売るに売れなくなってしまっているというのは、なんとも皮肉な話です。
こちらの記事では、
独占禁止法の観点からSamsungの単独買収が無理とされるなら、世界中のArmの有力顧客がコンソーシアムを結成して共同買収する案も取りざたされている。
などというウルトラCも紹介されています。「すでにこのコンソーシアム案はSK Hynixなどが提案しており、Qualcommなど複数の有力半導体企業からの賛意を得ているとされる。」とありますが、それこそ「船頭多くして・・」ということになりかねません。Armの苦難はまだまだ続きそうです。
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