まだまだ落ち着かないArmの行方
先週、ソフトバンクグループ(SBG)の決算発表がありました。
だそうです。一昨年度が4兆9000億円の黒字、その前はまた赤字だったということですから、コロナとロシアのダブルパンチとはいえ、まさにジェットコースターのような業績の変動です。しかしその一方で、ソフトバンク傘下の企業は業績の良いところもあるのです。
期初予想を上回る過去最高益を達成。2022年度は営業利益1兆円へ -ソフトバンク株式会社 2022年3月期 決算説明会レポート
そして、このブログでもずっと追いかけてきたあの会社も、過去最高の売上を上げました。
Armがここ数年さまざまな運命に翻弄されてきたことは、このブログでも追いかけてきました。スマホでの採用No1のトップ企業がソフトバンクに買収され、その後Nvidiaに売却されることとなったものの、世界中の反対に遭って、それが頓挫したのは今年の初めでした。
着実に成果を出すArm
Armを取り巻く環境はめまぐるしく変わっていますが、Arm自身は着実に業績を積み上げてきました。先のNHKニュースの中でも孫さんの以下の様なコメントに触れています。
一方で孫社長は「新たな資金を投下しなくても、持ち駒の中で攻め口を見つけたい」と述べ、世界的な半導体需要の高まりを受けて、子会社でイギリスの半導体開発会社「Arm」を成長させ、利益を拡大させる考えを強調しました。
やはり、SBGはArmを買っていて良かったと言うことでしょうね。SBGの決算発表資料でも、Armを「ソフトバンクの原点」とまで持ち上げています。
SBGはArmの買収時から、ゆくゆくは再上場させると言っていました。高く売れそうだったのでNvidiaへの売却に一度は合意しましたが、それが叶わなくなった今、再度Armの上場へ向けて準備をしています。
本当は、後数年待ってからのほうが良いようにも思えるのですが、SBGの台所事情もあるのでしょうから、上場を急ぐのは仕方ないのかも知れませんね。
しかし、そうは問屋が卸さなかった
これでArmは再上場か、と思っていましたが、そうは簡単にはいかないようです。以下は、ロイターの5月6日の記事です。
そういえば、だいぶまえにこの件で揉めている、という記事があったかも知れません。しかし、解任されているのに「居座る」などということが可能なのだとは思ってもいませんでしたから、そんな問題はそのうち解決されるだろうと思っていました。
ところが、これがまだ尾を引いており、それが上場の障害にまでなりそうになっているとは驚きです。何か法律上の抜け穴とかがあるのでしょうか。
先のロイターの記事(5月12日付)でArmのCEOは
中国の合弁会社で起きた紛争について、前CEOを追放して解決したことを改めて強調
と言っていますが、どうなるのかが注目です。
英政府からも
そして、問題はさらに拡大しているようです。すごいところからの働きかけもあります。
SBGは上場先として米ナスダックを考えているということですが、ジョンソン首相はそれをロンドン市場に変更しろ、と働きかけているというのです。イギリスはEUを脱退していろいろと大変でしょうから、ロンドン市場にArmが欲しいのでしょうね。Armは元々イギリスの会社ですし、以前はロンドンに上場していたと言うことですから、イギリスとしては戻って欲しいのでしょう。しかしだからといって、首相が他国の企業にこんな働きかけをするというのも異例です。
なかなか落ち着きそうに無いArmですが、もはや自分たちの意思だけではどうにもならないような状況になってしまっているようです。人気者は大変、ということですが、ここまで翻弄されるのも迷惑な話なのでは無いでしょうか。
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