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ジョブズからの脱却を徐々に進める Apple ~世代交代の考え方

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ジョナサン・アイブといえば、スティーブ・ジョブズの右腕として長らくAppleの製品デザインを牽引し、ジョブズ亡き後はジョブズの遺志を継ぐ存在としてAppleに貢献してきました。そのアイブは数年前にAppleを退社して独立し、顧問としてデザイン全般にアドバイスをする立場になっていましたが、この度Appleとの提携を解消したと報じられました。

アップル、元デザイン責任者ジョニー・アイブ氏と提携解消か

元々Appleを退社した時点で、行く行くはAppleとの関係を断ち切るという意図はあったのでしょうし、自然な流れとも言えます。しかし、iMacに始まるAppleの復活劇をジョブズと共に支えた(というか、ジョニーがアイデアを出し、それをジョブズが採用したという図式だったとも言われています)ジョニーがAppleへの関与を取りやめるというのは、1つの時代が終ったという感想を持たざるを得ません。

hair_bouzu.pngとはいえ、企業が長く存続するためには、属人性を排除していく必要はあります。ジョニーにせよ現CEOのクックにせよ、いつかは働けなくなります。それを乗り越えてAppleが企業として永続し、これまでどおりのワクワクするような製品を生み出していくためには、人に依存せずに軸のぶれない製品を生み出していける「仕組み」や「体制」が必要となります。これを「企業文化」と呼ぶのかも知れませんが、Appleはジョブズの突然の死を乗り越え、Appleを如何に残していくべきかというチャレンジを続けているのだろうと思います。

ジョニーがAppleを退社した後、CDOは不在のままということですが、元々AppleにはCDOというポジションは無く、ジョニーのために作られたとの話ですので、今後もここは空席のままなのでしょう。むしろ、ジョブズやジョニーのようなカリスマを中心とした体制ではなく、新しい体験を生み出していけるようAppleを変えようとしているのだと思います。

偉大なデザインを踏襲し、破壊し、進化させて行くのは、ある意味で全く新しいものを想像するよりも大変なのかも知れません。ジョニーを引き継いだエバンズ・ハンキー氏(失礼ながらあまりよく聞く名前ではありません)は、この困難な仕事で大きな成果を残してきました。

ジョナサン・アイブを引き継いだデザイン担当者はMacBook Airをどう作り直したか

Macの売上は増加を続けており、開発者の世代交代がうまく言っていることを示唆しています。

古今東西を問わず、後継者問題や事業継承は難しい問題ですが、最近の日本企業では、創業社長がいったん後進に道を譲ったにもかかわらず、すぐに自分が復帰してしまうという例が目に付きました。また、高齢な経営者がなかなか交代しない、といった話もよく聞きます。もともと日本は創業数百年を超える「老舗」が多く残っていたり、世界最古の会社は日本の会社であったりするなど、事業継承において他国には無いノウハウを持っていたのではないでしょうか。そういった伝統を、いまいちど思い出す必要があるのかも知れません。

 

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