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3nmで先行するTSCM、競合の受け皿になるSamsung

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最近、半導体不足の影響もあって台湾TSMCを中心とした半導体業界が騒がしいですが、またまた新しい動きが出てきました。IntelがTSMCとの関係を深めようとしているのだそうです。

インテル、2023年にTSMCのトップ3顧客入りを熱望か。3nm製造ライン確保のため

TSMCは言わずと知れた世界最大手の半導体ファウンダリ(受託製造)です。そして、世界最先端の製造技術である「3nm」をいち早く市場に投入しようとしており、Intelはその製造能力を活用すべく、TSMCとの関係強化を急いでいるのだそうです。記事にTSMC顧客の取引高シェアが出ていますが、Appleが26%と、ダントツの1位となっています。2位がMedia Tekで5.8%、3位がAMD(4.4%)です。現在Intelの取引高は0.84%しかありません。これを3位に引き上げるというのですから、相当大変なことです。

computer_ic_syusekikairo.png一般に半導体は線幅が細くなるほど高性能になるとされており、今最先端の5nmの次が3nmと言われています。製造も高価になるため、こういった技術を活用できるのは付加価値の高い最先端のCPUやGPUが中心です。つまり、次世代のCPUの勝者を左右する力を持っているということになります。AppleがA15やM1で世界の最先端を走れているのは、TSMCとの深い関係があってこそ、という側面もあるわけです。

Intel自身も自社の半導体工場を持っており、かつては世界の最先端技術を誇っていましたが、いつの間にかTSMCやファウンダリ世界第2位のSamsungに抜かれてしまいました。今年初めに新しいCEOが就任し、200億ドル(2兆円)をかけて工場を新設すると発表しましたが、これがなんと7nmです。Intelは「Intelの7nmはTSMCの5nmに相当する」と言っていますが、それでも相当遅れていることは否めません。Intelは、CPUで使う最先端の半導体は外注し、自社工場では受託製造も含め、7nmベースの半導体を作ることにしたということでしょう。最先端ではないにせよ、車載や組み込みなど、7nmでも作れる半導体はたくさんあるからです。

ファウンダリ第2位のSamsungも、3nmの計画を発表しました。2022年6月から製造を開始するとのことです。

Appleとインテルを震撼させる「サムスン製3nmチップ」半導体戦争にうごめく裏事情

Samsungの市場シェアは17.3%と、TSMC(52.9%)に比べると小さいですが、技術的には十分対抗できるポジションにいます。TSMCが技術を独占してしまうと競争上よろしくないため、Samsungにも頑張って欲しいところです。こちらの記事では、AMDがSamsungの最初の顧客になるのではないかと報じられています。

IntelはAMDとの競争にも晒されており、AMDが3nmでCPU性能を向上させると、益々苦しい立場に立たされます。記事には、Intelが「TSMCの生産能力を予め食いつぶすことで、AMDのノード進行(プロセス微細化)を阻止するための戦術かもしれない」とも書かれており、製造能力を巡る熾烈な闘いが繰り広げられていることが伺えます。

また、先日AppleのM1チップの競合製品を発表したQualcommも、Samsungの3nmに興味を示しているそうです。AppleにべったりのTSMCを頼っていては競争に負ける、ということなのかも知れません。Qualcomm(高通)はTSMC顧客の4番目に入っています。

競合も一枚岩では無い

しかし、Apple/TSMCの競合企業が一枚岩でSamsungと協力するという単純な構図でも無いようです。

SamsungとAMDが協力してAppleに対抗しようとしているというニュースもあります。

Appleを脅かすサムスン・AMD連合。次世代プロセッサ「Exynos 2200」がねらう下克上

Exynos 2200はArmベースのSoCで、GPUにAMDを採用してグラフィック性能を高め、AppleのAシリーズに対抗しようというものですが、これはAppleの競合であると同時にQualcommのSnapdragonの競合でもあります。しかも、AシリーズはiPhone/iPadと完全に組み合わされますが、SamsungとQualcommは共にAndroid向けと言うことになりますから、市場を食い合うことになります。ここではSamsung/AMDとQualcommは競合となるわけです。

そして、こんな話もあります。いろいろ入り乱れてわからなくなりますね。

GoogleがAMDと連携強化「Pixel 7がiPhoneを凌駕する」という未来の現実味

そしてApple、Samsung、Qualcomm、GoogleなどにCPUのIPを提供しているArmですが、CPUだけでなくGPUのIPも持っています。SamsungがAMDのGPUを採用した、ということでAMDもArmの競合になるわけですね。早速Armも対抗策を打ち出してきました。

ARMの次世代GPUは30%処理性能向上へ【打倒サムスン-AMD連合】

いやはや、さまざまな企業が自社技術を磨いて競合してくれるのは、コンシューマにとっては良いことですが、業界のトレンドを見通すことはさらに難しくなりそうです。

 

【募集開始】次期・ITソリューション塾・第39期(2022年2月9日〜)

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実務・実践のノウハウを活き活きとお伝えするために、現場の最前線で活躍する方に、講師をお願いしています。

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  • 回数 :全10回+特別補講
  • 定員 :120
  • 会場 :オンライン(ライブと録画)
  • 料金 :¥90,000- (税込み¥99,000) 全期間の参加費と資料・教材を含む

詳細なスケジュールは、こちらに掲載しております。

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